アフトクラトルの人3 ※太刀川迅ヒュースを一緒にいさせるためにヒュースのその後を捏造してます 太刀川と迅が追う。 トリガーを持たないヒュースだけなら太刀川で十分だっただろうが、ヒュースとともにいるのは黒トリガーの使い手だ。今回は太刀川一人で追わない方がいいと判断した迅は、太刀川とともにその背を追う。 まさか本当にヒュースの奪還を行うとは。 黒トリガー使いにとってヒュースは余程可愛い存在なのか。少し嫉妬するなと、太刀川は苦笑いを浮かべた。 「ヒュース、下がりなさい」 「はい」 追いつきそうになったところで、向こうが走るのをやめる。 太刀川と迅も警戒して足を止めた。 黒トリガー使いが口を開く。 「アヴェク・トワ」 その名に聞き覚えのある太刀川はその場からさらに下がる。 向こうの黒トリガー、アヴェク・トワは以前の大規模侵攻の際に少し目にしたが、未だ未知の存在だった。 靄が人型を包みだす。 「太刀川さん!左!」 「っぶね」 迅の言葉に瞬時にその場から飛びのく。 左から現れた刃が地面をえぐる。 斬撃系のトリガーなのだろうか。しかしだとすれば靄は一体。 正体不明な存在が気がかりだが、考えている暇はない。 「あーくっそ!」 まどろっこしい。 前みたいに斬りあいになれればいいのに、恐らくヒュースがいるからそうしないのだろう。 太刀川は迅の後ろに隠れようとするが、さっと迅に避けられた。 「迅、お前逃げんなよ!」 「太刀川さんこそ俺を盾にしないでよ!」 未知のトリガー相手ならば迅の方が対処が楽だろうに、迅は嫌がった。 それだけタチが悪いということだろうか。 迅が「あれ」と指をさす。 靄に触れた家屋の塀が、ぼろっと崩れた。 その光景に太刀川は顔を引きつかせる。 「チートだろ…!」 触れるだけで壊した、いや、トリオンの粒子に変えたのかもしれない。 靄に触れないとなると靄をはらうか、靄の外から攻撃するしかない。 旋空弧月で斬るしかないかと刀を構えたところで、空間がぽっかり穴が開いた。 「逃げられる!」 「タイムアップか…!」 その穴にヒュースがはいり、そして黒トリガー使いも靄を消して中に入ってしまう。 閉まりゆくその穴に太刀川は叫ぶ。 「しとど!今度はもっと遊ばせろよ!」 「……」 前も同じようなやり取りをした覚えがあるが、しとどは覚えているだろうか。 少し不安に思ったが、不要な心配だったようでしとども微かに頷いた。 同じ思いを抱いている。太刀川はにやりと笑った。 しかし穴が閉まるほんの一瞬、見えてしまった。 一切変わらないはずのしとどの表情が、少し切なそうに歪んでいた。 しとどがヒュースを迎えに来てたことで、アフトクラトルの神は、どうなってしまうのだろうか。 太刀川としとどは再び、本当に会えるのだろうか。 その事が太刀川の胸をざわつかせた。 |