▼  種を蒔き、陽の差すこころ





もう少し長居していけばいいのにという名残惜しそうなルーバートの言葉は引き留めるには至らず、アイスナー親子はタロムを発つという。
傭兵を生業にする彼らは早速山を越える荷馬車の護衛を請け負い、出立は明後日となった。


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ベレトが朝の身支度を終えてぼんやりしていると、低い位置で小さく二回のノックが鳴らされた。

「ベレト、起きてる?」

彼の父であるジェラルトはまだいびきをかいて寝ている。代わりに返事をすれば、ドアから顔を覗かせたのは家主の娘だった。

「おはよう、ベレト。 良ければ朝の散歩にでも行かない?今の時間は朝市がやっているから、朝ごはんも兼ねて」