「あんたたちのせいじゃないよ」

高所から落ちたことによる衝撃。打撲だけで済んだのは相当運が良かったと医師は語ったらしい。
病院に呼ばれた洋子さんは固い顔をしていたのだが、命に別状がないと分かってからは私や権現坂君、話を聞いて駆け付けた遊勝塾の面々のフォローをしてくれた。
きっと誰よりも遊矢君が心配だったはずなのに。

「遊矢はこんなことでやられたりしないって分かってたからね」

迷い無い口調でそう言いきるのはきっと、誰よりも遊矢君を信頼しているからだ。
権現坂君は自分の不甲斐なさと自責の念に男泣きをし、その後どこかに修行しに行ってしまった。起きてしまった事を悔やみ、責任を感じて自分を鍛え直す。それもまた、権現坂君の強さだと思う。

一方で私は、どうしたらこの事態を防げたのか、私がいたせいで遊矢君の気が散ってしまったんじゃないか、大人しく観客席で見ているべきだったんじゃないか、床に叩き付けられた人形のように跳ねる身体をただ茫然と見ていただけで、生死の確認すら権現坂君に任せてしまって、何が歳上だ。無駄に月齢だけ重ねて、大事なときになにもできなかったじゃないか……そんな風に後ろばかりを振り返って、先に立たない後悔を巡らせている。

――一人の少年の人生を、壊していたかもしれない。

そう考えるだけで恐ろしくてたまらない。

私の肩を叩く洋子さんは知らない。アクションデュエルをすることになったのも、遊矢君がここ一番の時に集中を欠いたのも、私のせいなんです。私が原因なんです。
洋子さんに詳細を語る勇気もなくただ俯いているだけで、慰めを甘受する私はとんでもない卑怯者だ。


- 2 -