あーあ、依月ったら目が笑ってないよ。

遊矢が退院して四日目。ココの塾生じゃない依月は前まで気紛れに来ては冷やかしてただけだったのに、ここ最近は毎日塾に来て遊矢にデュエルのルールを教えてとねだっている。

たぶん、遊矢にアクションデュエルさせないために。

「この効果ってどういう風に使うのかなって……」
「ねー遊矢ー。僕、たまには遊矢ともデュエルしたいなー」
「え、でも……依月に教えないと」
「そんなの塾長に教えてもらえばいいじゃん!ぼーくーとーデューエールー」
「そういえば素良君も、デュエルするんだっけ?」

いつも通りの依月を取り繕おうとして、押さえきれてない不安そうな声。部屋のフンイキが変わる。爆発寸前の爆弾みたいな不穏なフンイキ。依月が僕を見た。光がない真っ暗な目。
あ、この目ヤバイかも。ちょっと普通じゃないよ。

「そっか、素良君も。そうだよね。ここ、塾だもんね。
みんなデュエルするんだよね。柚子ちゃんも……アユちゃんもタツヤ君も、みんな小さいのに。みんな。」
「依月もまだ間に合うって。デュエルしたいんだろ?ほら、あっちで説明するよ」

依月が言いたいのはそういう事じゃないと思うんだけど。
気付かない遊矢は依月の手を掴んでテーブルの方に連れて行ってしまう。

「ちぇー、遊矢兄ちゃん、今日もデュエル無しかー」
「しょうがないよ、依月お姉ちゃんがデュエル始めるんだもん。今からたのしみ!」
「どんなデッキを使うんだろうね?やっぱり遊矢兄ちゃんと同じEMかな。素良はどう思う?」
「んー……わかんない」

部屋を出る直前ちらっと目を向ければ、テーブルを挟んでデッキを見ながら熱心に話し合う二人。
依月が僕達を心配しようとした途端、僕の話をとっとと切り上げた遊矢。
依月の目を僕達に向けさせたくないみたいだった……なんて、考えすぎかなあ?



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