はて。







「戦争なら倒すしかないだろ」

会話の流れで何気なく言い放った言葉。李依が「そうだね」と同意する直前、僅かに目を瞠ったのを見た。違う生死観の中で生きてきたのだと理解してしまう。
「でも、なるべく戦わずに済むといいよね」言い添えられた言葉は、数拍の距離を置いて呟かれた。「それが出来たら苦労しないよ」僕だって好きで戦うわけじゃない。「そうだよねえ」間延びした返事をした李依は、それ以上はこの話題を求めないとばかりに視線をすいと空に移す。

どうやら僕がどれだけ武功を立てたとしても彼女が僕を認める理由のひとつにはならないらしい。いつもみたいに破顔して「すごいね」と称賛してはくれない。それは想像していなくて、弓の握りを持つ手に力が篭もる。戦果を上げることは、僕が認められるためには一番分かりやすい道だ。でも李依には通用しない。

箸、書道、正座が通じる、白夜に似た文化を持つ国。魔道はなく機械技術が発達した文明。――エクラと同じ、戦いとは無縁の生活。
怯えたかな。軽蔑したかもしれない。……僕は、どうして怖がっているんだ?