天然脅威の人たらし






「この間カムイに会ってね」
「ふうん。李依ってカムイ姉さんと仲良いよね」
「ん?ああ、会ったのはお兄さんの方だよ」
「!? カ、カムイ兄さんと!?」
「そんなに驚く?話が弾んでさ、今度部屋で」
「だっ……駄目だ!カムイ兄さんは……カムイ兄さんと二人きりになるのだけは駄目だ!」
「……タクミくんも誘って三人でお茶会しよう、って話になったん、だけど……」
「……」
「……」
「三人?」
「三人。……タクミくん、実の兄をなんだと思ってるの。そんな見境無い人じゃないでしょ」
「いや、李依は兄さんを知らないからそう言えるんだ。……兄さんと二人で過ごした人たちはみんな、部屋から出てくると兄さんを少し好きになってる」
「(それは別に良いことなんじゃ)」
「だから……カムイ兄さんと二人きりになるのだけはやめてくれ……」
「わ、わかったよ……。そんなに必死になることかな」



──


(そのときの会話)



「……まだタクミに警戒されてる気がするんだ。仲良くなるにはどうすればいいのかな」
「うーん……一緒に鍛練するとか、ご飯に誘うとか?
一番いいのはやっぱり話し合うことじゃないかな。お互いのことを知らないと、仲良くなれないと思う」
「それが、二人だと上手く話が続かなくて……」
「タクミくん、カムイ相手だと“あんたと話すことなんかない”みたいにすぐに話を切り上げちゃうもんね……」
「もしよかったら、今度タクミと話すときは李依も一緒に居てくれないかな?」
「私も?兄弟の間に居ていいのかな」
「李依なら大歓迎だよ。君はタクミと仲が良いしね、きっとタクミもリラックスできると思う」
「買いかぶりすぎだよ。でも、私でよければ付き合うね」



後日。一緒にカムイと話すのはまだ敵対意識が出てしまうのでとっとと帰りたいが、ここで自分が出ていくとカムイと李依が二人きりになってしまうというジレンマに苦しむタクミがいたとかいなかったとか。