紆余曲折あって元の身体に戻ったよ






階段から落ちる李依を抱き止める。それなりの衝撃のあと、その身体が男の僕より柔らかくて頼りないことに気付く。

「いっ……たぁ〜……!」

くぐもって聞こえる声は先程までより高い。身長も、僕の首元におさまるくらいの低さ。

「……ん、あれ?」

もぞもぞと動いた李依は僕の胸元に手を置いて僕を見上げる。その顔は紛れもない"彼女"だった。

「……あの、タクミくん?私、これ身体戻った……んだよね?
おーい。タクミくん、タクミくーん?……は、放してくれると嬉しいな?」

離れた身体をもう一度、今度は強く抱き締める。李依が固まった。分かりやすくて笑いを漏らせば、耳元でくすぐったかったのか「ひゃ」と身をよじる。あえてこの体勢のまま続ける。

「もう、男のままでも良いとか言うなよ」
「はっ、はい」
「僕は今の李依が好きだ」
「……ひ」

思っていたよりずっと"彼女"の姿に飢えていた事に気付く。
向こうはふざける余裕も無いらしい。いつもの仕返しだ。
僕と同じ気持ちを、あんたも味わえばいい。