06

 



今日がわたしにとっても、0組(クラスゼロ)にとっても初めてのミッション。マクタイの奪還作戦だ。わたしもその作戦に参加するつもりだったのだが――



「キョウコ、作戦不参加になってるけど…」
『うん、少し前にあった頭痛を訴えたら休めって言われて』
「そっか。ならちゃんと寝ておけよ」
『分かってる、ありがと』



話は聞こえなかったが、エースと話すキョウコは幸せそうで、思わず笑みが零れる。って言うかどうしたんだろう。キョウコ、と口を開こうとしたら、振り向いた彼女は唇に人差し指を当てがう。その姿があまりにも綺麗で見とれてしまった。やっぱキョウコはわたしとは違うなぁ。



『行きましょ、ツキコ』
『え?わたし?えっ?』



それからキョウコに連れられてわたしも寮に戻ってきた。どうしたの、と聞く前に彼女はミッションの準備をし始めた。その為に戻ってきたんだろうか。



『じゃ、出ましょうか』
『あ、うん』



そう言ったキョウコに軽く頷いてわたしはその後をついていった。やがてマクタイに着き、街の裏から回って敵の掃討を完了した時、わたしは生き残っていた皇国兵に捕まってしまう。



『あ…ははは…捕まっちゃった』
『ばーか』
「っお前ら状況分かってんのか!?」



耳元で叫ばれてかなり煩い。はぁ、とキョウコは息を吐いてさっきまで使っていた武器を仕舞い込んだ。



『状況?分かるも何も、さっきと何一つ変わってないわ。私たちの勝利に、何の介入も許さない』
「は!?意味分かってんのかって言ってんだよ!退かねぇとこいつを殺すっつってんだ!!」



チャッ、と蟀谷に銃口を突き付けられて怖いと身体を震えさせつつも、妙に心は落ち着いていた。だってわたしはキョウコを信じてるから。



『撃って、その後どうするのかしら?』
「な…っ」
『その子を撃ってから私を殺す?ハッ、無駄な足掻きね。さっきの戦闘を見ていたでしょう?あなたじゃ私に片膝を着かすことすら叶わない。それに――』



不意にキョウコと目が合った。それはわたしを試してるかのような眼差し。怖い、怖いけどわたしは大丈夫だよ。キョウコを信じてるから。そんな思いを込めて、彼女を真っ直ぐに見やる。するとキョウコは小さく笑って皇国兵に視線を戻した。



『あなたがその引金を引こうとした瞬間、先にあなたの命が事切れることになるわよ』



その一言が決め手だった。まだキョウコの能力は全部見たことない。だけどわたしには分かる。彼女の言葉は嘘じゃないし、この皇国兵が引金を引く前にキョウコは確実に彼を殺してしまうだろう。それくらいの実力の差がある。



「く…そっ」



ゴト、と皇国兵は銃を落とし、わたしを解放した。もう戦意はないだろうが、念のためだと彼を拘束するキョウコ。その間、腰を抜かせていたが、こちらを振り向いた彼女を見た瞬間、気付いたらキョウコに飛び付いていた。



『キョウコーーーーー!!』
『きゃあ!?』



勢いがありすぎて地面に倒れ込んでしまったが、そのまま強くキョウコに抱きついた。



『やだもう怖かったぁあああ!!』
『…ったく……泣き虫』



一気に恐怖が襲ってきて、わたしはキョウコに泣き縋る。ああもう、あやすように頭を撫でてくれる彼女が大好きです。そんな中――



『ぶっ!!』

急に頭を押さえ付けられてキョウコの胸にダイブする。



『っぶな…』
『…キョウコ…胸…おっきい』
『おいこら何言ってんだ』



バシッとキョウコに頭を叩かれた。めちゃ俺得です。いや、鏡に映った自分は見たことあったけどこんな感じだったんだなぁ、なんて変態紛いなことを考えていると、ゾクリと背筋が凍った。振り向けばそこにはめちゃ良い笑顔のエースの姿。ヒクッ。キョウコの口角が引き攣ったように見えた。



「キョウコ」
『あは…』
「君は今日、ツキコと寮で留守番してるって話だよね?」



え?何の話?と問い掛けるも、キョウコに答える余裕は無いようだ。目の前の真っ黒いオーラの彼の対応にいっぱいいっぱいみたい。



『いや、私たちだけ行かないのもあれだと思って、ね…』
「ちゃんと目を見て言おうか」
『…頑張って!』
『ツキコー!!』



あははー、と笑いながら彼女の上から退いて離れる。キョウコには悪いけど今のエースに勝てる自身がありません。てかこの時点でレーザー撃てるとか二週目疑惑ですよ。



『キョウコごめんねー…』
「謝るくらいなら助けてやればいい」
『あっキング!そうしたいのは山々なんだけど……キングなら助ける?』
「…いや、難しいな」



引き摺られるようにマクタイを出ていく二人を見ていたキングはそう呟く。ああいう場面も仲良いなぁと感じる。でもほんとにお互いのことが好きなんだね。真っ黒い笑みの後に僅かに心配そうな表情が見えたし、キョウコも申し訳なさそうな眉を下げていたし。



『想い合ってるんだなぁ』
「何の話だ?」
『んーん、こっちの話!』



何でもないよっ、とキングを振り返ってわたしは笑う。正直ね、わたしも憧れてるんだ。ゲームの中にしか興味はなかったけど、エースとキョウコを見て何か良いな、なんて思い始めた。まあちょっとだけなんだけどね。



『よし、わたしたちも帰ろっか!』
「…そうだな」



でもわたしはキョウコとは違って、異世界からのイレギュラーだから…ダメ、だよね。



「? どうした?」
『いやいやっ』



ふとキングに目線を向ければ、バチッと目が合ったが、わたしは首を振ってキョウコたちの後を追った。






(あれ?キョウコは?)
(エースの部屋ですよ。おかげで私は帰れなくなりました)
(そっか、エースたちも部屋が空いてないから二人一組で部屋使ってるんだったよね。トレイは同室だっけ)
(ええ。全く、少しは迷惑を考えてもらいたいものですね)
(まぁまぁ…ってかキョウコ大丈夫かなぁ…)


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