05

 



「あ、ゼロ君」
『お?カヅサさん!』



珍しくクリスタリウムに来たとき、丁度実験室から出てきたカヅサさんに声を掛けられる。初めて会ったときから思ってたけどすごいよねこの人。ゼロもクラサメ隊長の為ならランデブーする部屋とか作っちゃうよ、気合いで!



「最近クラサメ君とはどう?」
『相変わらずクールで冷たいけどカッコイイです!!』
「あーうん、クラサメ君がカッコイイのは分かってるけど」
『愛し合ってるんですぅ!』
「いや、あのね…」



もうね、何度かお部屋に遊びに行っちゃってるの!そう言えばちょっと研究室で話そうか、と首根っこを掴まれて引き摺り込まれた。



「確か紅茶飲めなかったよね。コーヒーでいいかい?」
『勿論ですよぅ!甘〜くしてください!』
「了解」



ゼロは適当にその辺に座って出されたコーヒーを飲む。カヅサさんの淹れるコーヒー美味しいんだよね。なんかみんなは飲んじゃいけないとか言うけどさ。



「で、クラサメ君とはどこまで行ったの?」
『それを聞いちゃいます?』
「強制はしないよ?キミたちのプライベートだし。ただクラサメ君が部屋に誰かを上げることが珍しくてね」



ふぅん、とゼロはもう一口コーヒーを啜る。甘いけどちょっと後味が苦いのが美味しいよね。ん?ゼロだけ?



『特に何もないですよぅ。クラサメ隊長はいつも本読んでるし、ゼロはべりたんと遊んでます』
「クラサメ君らしいなぁ」



カヅサさんは苦笑いをしながら言った。確かにクラサメ隊長は落ち着いてるし、本が似合うって言うかなんとゆーか。



「寂しくないの?」
『ゼロは隊長の傍にいられるだけで幸せですよぅ。これ以上何も望まないですって〜』
「ゼロ君…」



あ、でも、とゼロはカップの中のコーヒーをじっと見つめる。



『クラサメ隊長を、守れれば、いいなって……思って、…ます……あ、れ…?』



ふ、と視界がぼやけて来てゼロは目を擦る。何だか眠くなってきた。持っていたカップを置くと同時にゼロは意識を飛ばした。



「全く…クラサメ君に怒られても知らないよ、エース君」
「……すまない」








次に目が覚めたのは自分の部屋だった。あれ、何があったっけ、と記憶を遡ってみる。確かカヅサさんに研究室に引き摺り込まれて、それからコーヒーを飲んで眠くなって…――



『眠くなって…?』
「あ、起きたのか」



ふと声を掛けられてゼロは身体を起こす。そこにはエースがいて、心配そうにゼロを見ていた。なんでエースがいるんだろうと首を傾げる。



「倒れたらしく、カヅサさんに運ばれてるのを見付けてな。代わりに運んで来たんだ」
『エースが?そっかそっか!ありがとね!!』



でも何で倒れたんだろう。そんなことを考えてるとエースがゼロの手をキュッと握った。



『エース?』
「ゼロ」



ゼロの名を呼ぶエースの声。なんだかいつもと違くて、ゼロはエースに向き直った。



『エース、どしたの?』
「何でゼロは変わったんだ」



え、とゼロの声にならない息が口から零れる。



「あいつと会ってからゼロは変わった……。そんなにあいつがいいのか?」
『エ、エース…?』
「何で、ゼロ…っ」
『え、ちょっ』



急にぎゅうと抱き締められてゼロは目を見開く。こんなことをエースにされたのは初めてでどうしたらいいかわからなくて。



「ゼロ…」
『あの、えと……良く、現状が分からないんだけど……エースは、今のゼロが、嫌いなの?』
「違う!僕はゼロが好きなんだ。ずっと昔から、ゼロだけが…っ」



思いもよらない告白にゼロは戸惑う。そんな素振りは無かったのに…あれか、好きな人は苛めたくなるというやつか。なんかゼロ、いつもエースに苛められてたし。



「…ゼロが初めて笑顔を見せてくれたのは僕だった。ここに来てからはずっと笑顔で…まるでゼロを取られたように感じて…」
『……エースってば可愛いなぁ』
「からかうなよ!」



バッと身体を離してゼロと目を合わすエース。エースは至って真剣だ。馬鹿なゼロでもそれくらいはわかる。でも――



『ごめんね…エースの気持ちはすっごく嬉しいよ。だけど…それでもゼロの気持ちは変わらないよ』
「っ、なんで………っ」
『エー、ス…』



もう一度エースがゼロを抱き締める。確かにその手が震えているのが分かった。ゼロには謝ることしか出来ないや。その時、COMが鳴り響いた。見ればクラサメ隊長からの連絡で、出ようとしたらエースに取り上げられる。



『あっちょ!』
「ダメ。でさせない」



ピッ、と切られた。ヤバい、後できっとどやされる。ってかまた意地悪ですか。



『クラサメ隊長に怒られちゃうよぅ』
「怒られろよ。あとちょっとだけ…ちょっとだけだからさ」



酷いなぁ、なんて言いながらゼロは漸くエースの背に手を回した。そういえば昔はずっとゼロが傍にいたなぁ。いつの間にか背ェ越されちゃったし、足も早くなったし。でも今は何だかエースがちっちゃく見えた。昔に戻れた気がしたんだ。








「おい」
『あれ?隊長?』



何故かエースと入れ違うように隊長が部屋に入ってきた。ってかマスク外してるとかなんですかゼロを萌え殺す気ですか隊長。しかし直ぐにCOMをブチったことを思い出して顔を真っ青にする。



『ひぃいいいい!!隊長COM出なくてごめんなさいぃいいい!!あれには訳があっ――』
「ほぅ?どんな訳だ」



ドサリ、とベッドに押し倒されてゼロは目を点にする。ちょ、何でだ。何でこうなってるんだ。



『たっ隊長?』
「言ってみろ」



あの、ちょっと、隊長の顔が近いよ。……って、あ、れ?怒ってる?怒ってるの…?いつもより少しばかりつり上がった眉と眉間の皺の深さを見てゼロはそう思う。



『え、と、あの、エ、エース、がね……?っうひゃあ!』



恐る恐る話し始めれば首筋に顔を埋められて変な声が出た。



『たたたた隊長!!そんなそんなゼロはまだ心の準備が〜っ!!』



とか言って見るものの、正直マジ天パってます。多分これまでにないってくらい顔が真っ赤なんだろうな、うん。



「ゼロ」
『は、はぃ…んぅっ!?』



顔を上げたと思ったらいきなりキスされてますます天パるゼロ。幸せな気持ちとどうしてという気持ちが頭の中をぐるぐるしてどうにかなっちゃいそうです。



『!? んは、ぁ、はぁ…っ』



いつもと違ってそのキスが段々深いものになっていく。するりと舌が滑り込んで来て器用にゼロの舌と絡ませる。このまま溶けてしまいそう。軈て息が苦しくなってきた頃に唇が離れた。



『は、ったい、ちょ…っ』
「…」



涙目で見上げれば、クラサメ隊長はぐいっとゼロを起こして優しく抱き締めた。



『隊長ー…これ以上クラサメ隊長に何かされるとゼロ、蕩けちゃいそうですよぅ』
「では蕩けてしまえ」
『蕩けちゃったら大好きな隊長に抱きつけないから嫌ですー!!』



そう言いながら、ぎゅー、と抱き締め返す。抱きつかなくても分かる確りした隊長の身体。大好きな香水の香り。この時が一番幸せ。



「…さっき、エースがお前の部屋から出てきたのを見た」
『あれは…倒れたゼロを運んでくれただけで………って、隊長、もしかして嫉妬、ですか?』
「……」



おおふ…図星見たいです。なんて言うか、その…嫉妬してくれたことが凄く凄く嬉しくて。初めはゼロの一方的な恋だったのにそんな風に感じてくれることにゼロは感激した。



『たーいちょー』
「…なんだ」
『隊長ってやっぱり照れ屋だったんですねぇ』



ふふ、と笑えば急に視界が一変する。あーうん、もしかして地雷踏んじゃったかなぁ。ちょっと顔が怖いです。



『素直じゃないですよぅ』
「うるさい……ゼロ」
『はぁい、なんですか〜?』
「お前は私から離れるな」
『……なんですかーそれー』
「いや、なんでもない」



言いながらクラサメ隊長はゼロの首筋にキスした。どうしてだろう。ちょっとだけ悲しそうな表情に見えたんだ。もうそんな表情はさせたくないよ。ゼロが…あたしが隊長を守りたい。クラサメ隊長の為なら、あたしは――







(あの〜そろそろ…隊長…っ)
(私では不服か)
(あばばばば!!全然オッケーです寧ろクラサメ隊長がいいです!)
(なら何故目を反らす)
(こっ心の準備がっ!!)
(今やれ)
(ひぎぃ!!あなたは鬼ですか!!)
(冗談だ)
(お、おふ……)


(べりたん……クラサメ隊長変わったよね?)
(…)
(うへへ、でも嬉しいなぁ)
(…)
(あっ勿論べりたんも好きだよ!!)
(…♪)


[ back to top ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -