02

 



『たっいちょー!!!だいs』
「うるさい」



今日も毎日のようにクラサメ隊長に愛を捧ぐ、前に一喝されました。それでもめげないのがゼロのポリシー!教室に着く前に隊長と会って、ゼロは腕に絡みつく。見た目は細いのに掴むとかなり確りしてる腕。



『もうやばいですクラサメ隊長』
「おい涎を垂らすな」



ハッとしてゼロは我に帰ると、思い出したようにクラサメ隊長の前に立つ。



『隊長隊長!もう直ぐゼロの誕生日なんです!!』
「…だからなんだ」
『おおふ…クールすぎます隊長…ゼロになんか下さいってことです!!』
「自分の誕生日プレゼントを全くの他人にねだる奴は初めて見たな」
『他人じゃないですよぅ!可愛いゼロの為じゃないですかっ』
「誰が可愛いだ。いいからさっさと離れろ」



教室だぞ、と頭を押しやられる。仕方なく腕を離して自分の定位置に着いた。授業中は常にクラサメ隊長を目で追ってる。やっぱりみんなには飽きられてるけど、気にしない気にしない。



「ゼロ、この問題を答えろ」
『はいっ隊長好きです!!!』
「廊下に立つか?」
『ごめんなさい』



あんまり調子に乗ったら本当に廊下に立たされそうで怖いです。へらりと笑って聞いていた問題を答えると、ゼロは席に着いた。



「ゼロってちゃんとあいつの話聞いてんのか、コラ」



何日もこう言うことが続いたある日、食事時にそう聞かれる。



『聞いてるよぅ?だって隊長の話だもん!』
「その割に頭弱いよな」



ちょ、マキナ、それは酷くない?泣いちゃうよ?泣いちゃうよゼロ。別に悪いわけじゃないし!そう言えばマキナに笑われた。やっぱ酷いよね、うん。



「なんというか、出会った頃からこんなだよね、ゼロって」
『こんなって!こんなって何!!レムまで酷いっ!』
「あの隊長に出会うまでは普通だったんだ、ゼロは」
『エース…そんなにゼロをいじるの面白い?』
「ああ」



エースこの野郎。って言うかエースだってこんな子じゃなかったじゃん。もっと優しくて紳士的だったじゃん。あれ、こうなったのいつからだっけ?



「でもまさか、ゼロさんが恋をするなんて思ってませんでしたね」
「ああ、そうだな。だいたいゼロが俺たち以外に懐くこと自体が可笑しい」
『…そう、だったような…?』



それに続いて、そもそもの発端は〜、とトレイが話し出す。ゼロがクラサメ隊長に一目惚れしたのは首都開放作戦の約二週間後の事。いつもの通り、つまらない、と窓の外を見ていた。



「一応、初めてとなるな」



そんな中、0組の教室にクラサメ隊長はやって来た。彼を見て気に入らないと思ったナインが突っ掛かって行ったが返り討ちにされ、その後にケイトとエースが応戦するも、クラサメ隊長に呆気なく大人しくさせられた。それを見たゼロは、ガタッ、と席から立ち上がる。



『かっこ、いい…』
「へ?」
『クラサメ、隊長…vV』



そう呟けば近くにいたシンクがゼロを振り向く。ゼロは胸の前で手を組んでクラサメ隊長を見詰めていた。それからゼロの猛アタックが始まったのだ。



「も〜ビックリしたよ〜。ゼロから聞き慣れない言葉が出てきたしさ〜」
「ま、いいんじゃねぇの?何にも興味示さないゼロよりかはマシだって」
『あれ?ちょっと前のゼロ否定されてる?』



サイスの言葉に項垂れるゼロ。確かにみんなやマザー以外には全くと言って興味なかったけどさ。



「わたくしは今のゼロ、生き生きしてて好きですよ?」
「どっちかっつーと、こっちのゼロの方が合ってんじゃねぇか?」
「…言われれば、な」



つまり…どういうこと?



「みんな応援してるってさ!」
『! ま、マジでか!!』



悩んでると、レムが代わりにそう言ってくれた。みんなも仕方なさ気に苦笑いをしている。……いやいや、なんで仕方なさ気なんですか。でもまぁいいや!



『やっ…たぁ!!ゼロ頑張っちゃう〜!』
「あんまりはしゃぐなよ。嫌われても知らないからな。ああ、もう鬱陶しがられてるし時間の問題か」
『ヒィ!?エースはSですか!?そうなんですか!?って、エースは応援してくんないの!?』



頬を膨らませて言えば、さあな、とエースは立ち上がってリフレから出ていった。分けが分からずみんなを見回せば、何故かみんな目を合わせてくれない。え、何この空気。なんでみんなやっちゃったって顔してるんすか。



『…ゼロが悪い感じ?』
「いや、ゼロは何も悪くないから気にするな」
『? そう?キングが言うなら気にしなくていいよね〜!あ、クラサメ隊長〜!!』



良かった〜、と笑っていると、珍しくリフレに来たクラサメ隊長を発見したゼロ。勿論いつもの如く全速力で隊長に向かって行った。



「エースもエースだよね〜」
「ま、ゼロがいきなりああなれば戸惑うでしょ」



たっいちょー!!と思いっきりタックルして抱き着けば、今度は脳天に肘を落とされた。ぐふ…相変わらず容赦ないです隊長。周りの目が痛くても気にしないのがゼロ。



『隊長もお昼ですか!?一緒に食べて良いですか!?ってか食べましょう!!』
「お前は少し落ち着けゼロ」



再び抱き着こうとするゼロを押し退けて、クラサメ隊長はひとつため息を吐いた。



「ゼロ」
『はい?』
「再提出の報告書が出されていない。お前だけだぞ」



クラサメ隊長に言われてゼロは思い出す。報告書と言う名のラブレターを書いて突き返され、そのまま忘れていたのだ。あはは、と愛想笑いをすれば頭を一発叩かれてそのままズルズルと連れていかれた。



『隊長と二人っきりですか!?なら頑張ります!!』
「残念だったな。私はこれから会議がある。一人でやっておけ」
『うぇえ!?隊長のケチ!ゼロがこんなに大好きって言ってるのに隊長冷たすぎますってー!!』
「いいからさっさと仕上げてこい」



ぽい、と教室に放り込まれるゼロ。打ったお尻を擦りながら、酷いですよー、とクラサメ隊長を見やる。



「はぁ…お前はいつもそうなのか?」
『? 何がです?』
「好きな奴に対して、だ」



その言葉を聞いてゼロは首を捻る。暫くして、ああ、と手を叩く。



『違いますよぅ!だって少し前のゼロはほんとに寂しい人間でしたし。変わったのはクラサメ隊長に恋してからですよ。隊長は――ゼロの初恋ですからっ』



両頬に手を当てて、キャッ言っちゃった、と首を左右に振る。その時、隊長の目が見開いていたが、一瞬だったので多分気のせいだと思う。



「……そうか」



それだけ言って隊長は踵を返す。刹那、ふわり、と微かにいい香りが漂う。不思議に思って隊長を見ていると、コト、と机に何かが置かれた。



『クラサメ隊長〜?』
「ちゃんと報告書が書けたらこれを持っていけ」
『へ?』



体を少しずらして見れば、そこには小瓶と乱雑に置かれた二つのピンが置かれていた。



『た、隊長!!もしかしてもしかしてもしかして!?』



この間の話を覚えててくれたのかとゼロは立ち上がって目を輝かす。



「少しは女性らしくしろ」



クラサメ隊長はゼロを一瞥してから教室を出て行った。



『ふ、ふぉおおおおおおっ!!!!隊長大好きですぅううううう!!』



隊長から誕生日プレゼントを貰えた嬉しさに負けそうになったが、なんとか我慢してまず報告書を仕上げた。そしてやっと報告書が完成し、直ぐ様さっきのプレゼントを手に取る。



『何だろな〜♪』



先ずは深い青のふたつのピン止め。ゼロの空色の髪と合っていて凄くいい。もうひとつ、その綺麗な小瓶には液体が入っていて、僅かにいい香りがする。



『香水…?』



さっきクラサメ隊長から香ったものと一緒だ。この香り、どこかで嗅いだことがある。なんだっけな…。そう思ってたら丁度みんながリフレから帰ってきた。



『おっ帰り〜!あ、デュースデュース!!この香り、何か知ってる!?』



帰ってきたデュースに一目散に駆け寄り、手に持っていた香水を自分に振り掛けてそう聞いた。



「これ…ライラック、ですよ」
『ライラック?』
「はい。春に咲く花で、ハートの花びらを付けるんです。花言葉は、初恋、ですね」
『初、恋…』



あ、と少し前の事を思い出す。ゼロにしては珍しく、花の本を読んでいたのだ。その本はある部分を擦れば、花の香りも楽しめるものだった。一番に目にしたのがライラックと言う花で、香りも、花言葉も凄く気に入って、隊長に見せびらかしていたことがあった、気がする。そんな些細なことだったのに覚えていてくれたことがとても嬉しかった。



『えへへ、隊長好きです〜っ』



くるくる、と踊るように回ってから、香水とピンをぎゅっと握り締めて、ゼロは満面の笑みを浮かべた。







(それ、どうしたんだ?)
(セブンー!聞いてくれる!?)
(…隊長からか)
(Σ何故分かったし!?)
(ゼロの表情を見ればわかる)
(おぶっ!?そんなにゼロは分かりやすいか!?)
(分かりやすすぎるな)


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