liar me!

 



『クーラサーメたーいちょー!!ゼロですよー!!』
「ふん!!」
『おぶっ!?』



投げ飛ばされました。打ったお尻を押さえながら、やだもう隊長の照れ屋さんっ、なんてハートを撒き散らせば今度は剣を突き付けられた。おおふ、彼女になっても相変わらず容赦ないな全く。



「ゼロ、見たわよー。またクラサメ隊長に投げ飛ばされてたわね」
『おぶぶっ!!』



リフレで寛いでるとケイトがそう話しかけて来た。ゼロは飲んでいたジュースを思わず吹き出してしまい、慌てて袖口で拭う。



「またうざがられたんでしょ」
『違うもーん!あれはクラサメ隊長の愛情表現だもん!!』
「あんたの脳みその中ほんとに幸せよね」



はぁ、とケイトは深いため息を吐く。そこにクラサメ隊長が現れて、ケイト声を無視してゼロは真っ先に隊長に直進した。呆気なく止められたのは言うまでもない。あれ?これデジャブ?



『やん隊長!!今日も素敵です!抱き着いていいですか!?』
「いいわけないだろう」
『寧ろ抱き着かせてください!抱き着きます!!』
「人の話を聞け」



勢いのまま抱き着けば顔面を掴まれて引き離された。痛いです地味に痛いです。



「それよりゼロ、放課後の演習を忘れてないか」
『……あ』



この間の演習の時にクラサメ隊長に見惚れてて演習ぽいこと一つも出来なかったから補習になったのだ。勿論すぐに首根っこを掴まれて闘技場に連れていかれた。あう、ほんと容赦ないよぅ。



「では掛かってこい」
『へっ!?隊長が相手ですか!?』
「不服か」



いやいや不服と言う前に隊長に斬りかかるとか無理です。隊長だってそのことを分かってる癖に。克服でもしろってか!



「私を一歩でもここから動かせたら、一つだけゼロの言うことを聞いてやろう」
『おっしゃぁ!行きますよー!!』



別に条件に心を動かされたなんてそんなことはないからね。



「動かせなかったらその逆だ」
『動かせて見せますよぅ!!』



シュン、と太刀を取り出して構えと一気に空気が変わった。冷たくて、張り詰めた空気。こめかみから冷や汗が垂れた。皇国軍や蒼竜とかと戦う時より、何倍、何十倍もピリピリしている。



『…はっ!!』



強く地面を蹴ってクラサメ隊長に斬りかかっていく。しかし隊長に届く前に魔法で行く手を阻まれる。魔法にぶつかる寸前にゼロは飛び上がってそれを避けて、凪ぎ払うように刀を横に振る。



『ぐっ!!』



それを呆気なく避けた隊長は拳をゼロに向かって突き出す。ゼロは片方の腕で防いで距離を取り、今度は得意な炎系の魔法を撃つ。隊長は氷だから行ける!なんて甘いことを考えてたらクラサメ隊長の魔法で炎を掻き消された。



『うわ……っ魔力が劣ってきてるなんて絶対嘘でしょ…』
「さぁな」
『むぅ!じゃあもう手段なんて選びませんからねー!!』



改めて隊長に向かって行く。少し前の自分を思い出してゼロは刀を振り上げ、素早く降り下ろす。雰囲気が変わったのが分かったのか、クラサメ隊長も剣を取り出してゼロの攻撃を受け止めた。



『悔しいなぁ』
「本気でもないだろう」
『む!これでも本気ですよ〜っ!でも…やっぱり隊長に刃を向けるのは嫌です…』



ゼロは太刀を仕舞って隊長を見やる。例えただの演習だとしてもゼロには無理だ。



「ゼロ」
『ゼロの負けです!何でも隊長の言うこと聞きますよ〜!』



へらりと笑ったゼロをクラサメ隊長が引き寄せて強く抱き締める。突然のことにゼロは動揺して目を泳がす。



『た、隊長〜?ゼロ、心臓破裂しそうなんですけど』
「……ゼロ」
『はぁい?』



何ですか?と聞き返せば、カチャリ、とクラサメ隊長がマスクを外す音が聞こえた。首筋に隊長の息が当たって、微かにくすぐったい。



「ずっと私の傍にいろ」
『へ?』
「君を離しはしない」
『……ゼロには隊長がいない世界なんて考えられません。絶対ゼロを離さないでくださいね』



ぎゅぅ、とゼロはクラサメ隊長を抱き締め返す。



「ゼロは離れろと言っても離れないだろう」
『……そうですね!』



もしあの夢が現実になろうとしてるなら、あの場面に直面したらあたしはどうするだろうか。迷ってるからこそあたしは、絶対離れない、と言えなかった。何でも言うことを聞くなんて、あたしは嘘つきだ。



『隊長、キスしていいですか?』
「……そう言うものは男性から言うものだ」



そう言うなり隊長はゼロと目を合わせ、唇に優しく口付けた。







(ん、たい、ちょ…っ)
(っ、悪い…)
(どーしたんですか?隊長らしくないですけど…)
(何でもない。戻るぞ)
(あっちょ、待ってくださーい!!)
(ゼロ…)
(もう終わりですかー?)
(……)
(嘘ですすみません)


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