これが僕の親友です



僕、カーヴィス・カーデルトは極めて一般的な騎士である。

預言を信じているし、騎士団に入った理由は収入が良さげだからだし、食堂の好きなメニューはカレーだし。一般的だ。預言を信じているからとはいえ、神託の盾騎士団に入りたい!モース様万歳!とはならないのが、俺たちチーム今時の青年の思考だ。別に預言は信じるがその預言をする人間自体はどうでも良かったりする。そんなものだよ。

そして神託の盾騎士団の第一師団に所属しており、まあつまりはラルゴ団長の部下だ。といっても、騎士団に入団してからなんやかやで第一師団に入れられたので、別にだからといってどうということもないのだが。

…いや、1つ問題があったか。

以前ある人に無理やり部下にされかけだのだ。まあつまり第一師団ではなく第二師団への移動を無理やりさせられそうになった訳だね。それがあまりにも私的な理由からだったので、あっさり却下されたそうだけど。当たり前だね、困った人だね、大変だったねー。

「まあ、僕としては移動でも良かったのだけれど。」

「…あれ?カーヴィスじゃーん。」

言い遅れたが、ここは神託の盾騎士団の食堂だ。ラフな格好をした者から鎧の頭を脱いだだけの者まで、ザッカザカと飯をかきこんでいる。もちろん女性もいるが、やはり騎士団。男が大多数なのだから、行儀が悪くても仕方がない。

「ああ、アニスさん。」

「なにー?今日はディスト一緒じゃないわけ?」

「ディストさんも一応六陣将だからね、いつも一緒にいられるほど暇じゃないんだよ。」

第一、僕はディストさんといつも一緒にいるわけではないのだが。正直な話、同期のメンバーといるときが圧倒的だ。

「ふーん?…ま、ディストがいないんならいいやー。」

キョロキョロと辺りを見回したかと思えば、アニスさんは大分失礼なことを呟きながら僕の手前の席についた。そして湯気を立てながらテーブルに置かれたのは、僕が食べているものと同じカレーだ。具は多少違うみたいだけど。

「ディストさんが聞いたら叫びそうだね、しかもずいぶんと失礼だ。」

「だってディストがいたら面倒なんだもん。」

アニスさんは導師護衛役という役職に就いている。僕みたいな一般騎士よりもずっと上の地位にいるって訳だ。僕より一回り近く下の歳なのに、まあ凄いことだ。

「てゆーか、カーヴィスもよくディストと親友なんかでいられるねー。」

ほんっと謎だわ。

そう言いながらカレーを掬い上げるアニスさんは、やっぱりディストさんのことは好きではないようだ。と言っても、ディストさんが好きだと言う人の方が少数派なのだから、何かを言い返す気もないんだけれど。

「まあ、ディストさんだからね。」

ということで、適当に濁しておく。

「アニスさんもディストさんと話してみれば?」

「話したことならあるよー。隅っこで一人可哀想だったから話しかけてあげたの!」

「へぇ。…で?その結果は?」

「…うーん。」

チラリと傍らの人形"トクナガ"を見やったかと思えば、ため息混じりに肩をすくめてみせる。

「アイツさ、別に悪いやつじゃないんだよね。良いやつでもないだけで。ま、取り敢えず関わりたくはないよね〜。」

「うん、それが世間一般の意見だよね。」

サラリ。

言ってみせると、アニスさんは呆れたような表情に。

「…アンタさ、やっぱディストに勝手に親友宣言されてるだけ?」

「おや。」

今まで幾度となく多数の同僚上司に訊かれてきたその問いに、僕はやはり幾度となく多数の同僚上司に返してきた答えを、いつもの通り口にする。




「僕は、ディストさんの親友だよ。」




にこりと笑みを浮かべ、ごちそうさまと言いながら席から立つと眼前から一言。

「…悪趣味〜。」

だろうね。





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