マーガレットの涙 | ナノ




目が覚めたら、そこは見覚えのある天井。私の部屋だ。

カーテンの隙間から入ってくる日差しは柔らかい。まだ日が昇り始めた程度だ。まわりの子たちはまだ寝てる。

何で私はここにいるんだろう。考えながら寝返りを打ったら布団の横、枕元に小瓶が置いてあるのが見えた。
ああ、そうだ。全て思い出した。

昨日、霧野君とぶつかった昼休み。昼食を取ろうと中庭に向かっていたその時は体育の後だったからペンダントはスカートのポケットに入れてあったんだ。

ぶつかった拍子に勢い良く床に叩きつけられたペンダントは割れて、霧野君に踏まれて砕けた。
その後水鳥ちゃんと茜ちゃんが心配して来てくれて…。そのまま早退になったんだっけ。玲名さんが迎えに来てくれて。私、そのまま眠っちゃったんだ。

枕元の小瓶に手を伸ばす。中に入っていたのは光に当たってキラキラと輝く透明な欠片たち。割れたペンダントだ。水鳥ちゃんか茜ちゃんが拾ってくれたのかな。もしかしたら二人かもしれない。

大事なペンダント。小瓶に入ったそれを見たらまた涙が出てきた。泣いちゃいけない、なんて分かってる。でも良いじゃない、もうこれで、私とあの人は本当にお別れだ。
溢れ出てくる涙を止める術なんて、私知らない。泣かないでなんて言うあの人の声が脳に木霊して、更に目頭が熱くなった。
泣かないで、なんて言うなら、私のこの涙をあなたが止めてよ、会いに来て。もう顔も思い出せないの。少しだけで良いから、笑顔を見せて。



(130519)