マーガレットの涙 | ナノ
最近、クラスに軽く不登校の女子がいる。そこまで親しい訳では、というか話した事すら無いけれど、クラスの仲間ではあるので、やはり心配ではある。
「…今日も来てないな」
朝のSHRが終わってみんなが授業準備をしている時、斜め前の席に目を向けて溜め息を吐く。話をしていた神童も、ああ、と小さく頷く。
「いきなりどうしたんだろうな」 「さあ…」
ただのクラスメートである俺は彼女の何を知っている訳でも無い。けれど休み時間などにはいつもクラスの友達や隣のクラスの瀬戸や山菜と楽しそうに話していた。
瀬戸と山菜も心配しているのか、部活中、よく彼女の話をしているのが聞こえて来る。
放課後、神童とサッカー棟に行くと、山菜が携帯電話で誰かと会話しているのが見えた。
「…今日、数学でプリントの課題出たみたいだから、園に行く予定」
もうすぐ部活が始まる時間だ。声をかけるべきか悩んでいると、神童が先に口を開いた。
「おい、山菜、もうすぐ部活が始まるぞ」
神童の声に山菜は一瞬驚いたように身を強ばらせ、こちらに目を向けてから時計を確認し、「ごめん、そろそろ部活だから」と電話の相手に一言断りを入れると携帯を耳から離した。
「すみません、」
山菜は神童に軽く一礼してから一瞬、俺の方をちらりと見ると、カメラを構えて外へ出て行った。ドリンクの用意は毎度の事ながらしないんだな、というか、一瞬、
山菜が俺を見た、のか? いや別に、山菜とは同じ部活の仲間だし、撮って貰った写真(山菜が勝手に撮っただけだが)を見せて貰ったり、神童の話をしたりと、普通に顔を合わせるが、神童が隣にいる時に山菜がこちらを見る事は今まで無かった。一度も。あいつには神童しか見えていない。 俺何か山菜にしたっけ?と考えてみるが、何も思い付かない。 昨日も今日も、神童の話をして、写真を見せてもらって…。
「どうした霧野、着替えないのか」 「あ、悪い」
神童に声を掛けられて我に返り、慌ててロッカールームに向かう。 というか考えてみたら山菜って本当神童しか見えて無いな。まあ友達は普通にいるけど。
ーーーーーーーーーーーー ※霧野君はホモではありません、普通にサッカープレイの話です。
(130608)
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