「あのっ!」


帰りのHRが終わった放課後、若干緊張の張った声音で、女子が話し掛けて来た。今日来た転校生だ。クラスの女子たちの会話から、イタリアからの帰国子女だということは知っている。顔は結構可愛らしい。


「えぇっと…なに?」


何でこんな可愛い子に素っ気ない返事しか出来ないんだよ俺!内心頭を抱える。もしかしたら言動にも出ているかもしれないが、荻野さんは気にしていない様子で言葉を続けた。


「えと、あの、沢田綱吉さんで間違いない、ですよね…?」


心配そうに、こちらの表情を伺う彼女に、肯定の意で首を縦に振る。
よかった…、と安堵の表情がなんとも可愛らしいが、自分には京子ちゃんという相手がいる。


「それで、えっと、…なんで?」
「女の子たちに聞いてはいたんですけど、やっぱり本人に確かめる方が確実だと思って」


笑顔のまま続ける彼女に、今やってきた獄寺君が不審そうな表情を向け、ダイナマイトを取り出す。慌ててそれを宥めて、落ち着いたところで彼女に向き直る。


「それで、君は…誰?」


まず思った疑問を口にすると、彼女は目を見開き、すぐにバッと深く頭を下げた。


「ご、ごめんなさい!自分から名乗らずに相手を尋ねるなんて…私…っ!」
「え、えぇっ!?」


その場に崩れ落ち、ボロボロと涙を溢し始めた彼女を宥めようと頑張る。周りにクラスメイトが何人か集まったりしてそりゃもう大変だった。


「その…大丈夫、全然気にしてないから!」
「でも、私、沢田さんになんてこと…」
(うぇーい、沢田が転校生泣かしてやんのー)
(なんだてめぇ!果たすぞ!)
(す、すみませんでしたぁーっ!)
「で、でも…泣かれる方が困るっていうか…っ!」


獄寺君が野次馬たちを追い払っている中、しどろもどろに紡ぐ言葉に彼女はハッと顔を上げ、それから立ち上がってまた深くお辞儀した。


「はじめまして、ボンゴレ10代目。私は門外顧問の荻野彩香という者です」


そう言って頭を上げた彼女の言葉に耳を疑う。門外顧問って聞こえたような気が、……しなくもない。


「……って、えぇ!?門外顧問って、父さんやバジル君のいる!?」
「はい!沢田さんのことは、親方様やバジルからいつも聞いておりまして、いつかお会いしたいと思っておりました!」


無邪気で嬉しそうな笑顔に、心臓がドキン、と跳ねる。いやいや駄目だ、俺には京子ちゃんという天使が…。


「しばらくこっちに滞在することになったので、よろしくお願いしたします!」


それから獄寺君に向き、


「あなたは獄寺隼人ですね、ボンゴレ10代目ファミリー嵐の守護者」
「…あぁ」
「よろしくお願いします」


さっきとは変わり、無表情で軽く頭を下げた荻野さんに獄寺君の舌打ち。
………なんか仲悪そうだ。



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ヒロインの性格が安定しない、たぶん内弁慶


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