(やばい…遅れる…っ)


いやもう遅れてるけどな!自分に自分でつまらないツッコミを入れながら、南棟3階の廊下を、たくさんの資料の入ったファイルを抱えながら走る。今日は生徒会の集まりなのに。みんなに迷惑かけちゃう…!!
そんな私の様子を見て、避けてくれる人なんてほとんどいない。みんな廊下の真ん中でお喋りに夢中で、私のことなんて気付きやしない。

ああ、もう!帰りのSHRがあんなに長引くなんて思って無かった!あれもうLHR並みの長さだった!終わった時点でもう生徒会始まってる時間だったし。


目指すは東棟2階。南棟と東棟は3階の渡り廊下で繋がっているのでそこまで大変では無い。
だからってもう、20分タイムオーバーしてるし。どうしよう、生徒会長は優しいけれど風紀委員長怖いな。その前に遅れたっていう、なんかこう…罪悪感が酷い。


「おわっ、と!」
「んぶっ」


渡り廊下に入るために角を曲がろうとしたら、誰かとぶつかる。飛ばされて尻餅をついた私は、慌てて立ち上がると、ぶつかった人に短く謝罪をしてまた走り出す。立ち上がった時にちょっと地面をみたら爆弾らしき物が見えたような気がしたけどあれは幻覚だ。幻。
ああでもホントごめんなさい!恨むなら私の担任を恨んで下さい。
何か今後ろでドッカン、て音聞こえた。マジで…?でも今は生徒会優先!ごめんね!だってあれはきっと幻聴だもの。

渡り廊下を渡り終え、すぐ近くの階段を凄い勢いで下る。途中から転げ落ちてたし。
打った背中と脛の痛みに堪えながら立ち上がり、すぐ近くの生徒会室に転がり込む。中では既に話し合いが始まっていて。
いきなり開いた扉に、みんなの視線が私へと注がれる。


「遅れ、ました…っ!すみ、ませ…」

ずっと走っていたからか、もともと体力の無い私は息切れ気味。

「あ…ああ、図書委員長の八代さん、だよね?」
「…は、い」
「君のクラスHRが長引いたらしいね、そこ、座って」
「すみません…」


やっと呼吸が整って、生徒会長に言われた通り、いつもの席に着く。


全員が揃って、私のためだけにさっきまで話していた事をもう一度説明してくれた。うう、本当に申し訳ない…。今度からHR真っ最中でも集まりのある時は抜けさせて貰おう。

あとは各委員会の状況や問題点、活動報告を行って確認用紙の提出、そのまま解散した。私のせいで長引いちゃったな、ふぅ。

さっさと帰ろう、と教室に帰る。HRが終わってすぐに必要な物だけを持って飛び出して来てしまったので、明日提出の課題やら何やらのためにも戻らなくちゃ。鍵掛かってないと良いなぁ。1階の職員室まで行ってまた3階まで上るなんてめんどくさいし。

さっきとは違ってゆっくりダラダラと廊下を歩いていた。人が全然いないや。寂しい。グラウンドの方で運動部の掛け声が聞こえるけれどつまらない。何か無いのか。

やっと教室の前まで辿り着く。スライド式の扉はガララッ、と音を立てて開いた。良かった、まだ鍵開いてたんだ。私以外にも文芸部の人って部活中結構教室に荷物置いてくからかな。
教室に入ると、人影が目に入る。誰だろう。
…銀髪だ。向こうを向いていて顔は見えないけれど、このクラスの銀髪なんて1人しかいないから誰なのかはすぐに分かった。あ、でもこのクラスの人じゃ無いって可能性もある。


「…よぉ」


その人が振り向いた。やっぱり思った通りの人だ。帰国子女、教師も黙る不良の獄寺。ああ嫌だな。関わりたくない。金巻き上げられるかも。
…ってか今、よぉ、って私に言った、のか、な……?


「遅かったじゃねーか」
「え、あの、」


何か話し掛けられた、どうしよう。恐い。殴られるかも。私運動音痴だからな…。え、待って本当にどうしよう。喧嘩なんて近所のおばちゃんと口喧嘩する程度だし…。


「ケッ、無反応かよ」


反応してるだろ。私不良相手だと口籠っちゃうだけなのに。今日は嫌な1日。さっさと準備して帰ろう。もしそれで獄寺君の機嫌損ねちゃったら私はどうなるんだろう…。まあいっか、今が大事だよね。


「………」
「………」

お互い何も言わず、私は帰りの支度をして、獄寺君はただジッと私を見ていた…気がする。ちょっと振り向いたら目が合ってビックリしたもん。

帰り支度も終わり、スクバを肩にかけて教室から出ようとしたら、獄寺君も付いてきた。超怖い。何なの何なの、私何かしたっけ?


「お前、」

不意に獄寺君の声が耳に入ってビックリする。斜め後ろにいる獄寺君の方をそぉっと向くと、またまた目が合った。


「おい、てめーだよ」

何かめっちゃ睨んできた!ていうか私に話しかけてたのね、知らなかった。


「えっと、す、すすすみませ…」
「何で走ってたんだ?」

走ってた。生徒会室に向かってる時の事かな。え、ていうか、え、


「みみみ見てた、ん、ですっ、かっ!?」
「……?」

慌てたせいでどもってつっかえながらも静かな廊下に響くくらいの大声を上げた私に、獄寺君はハァ?とでも言いたげな表情を向けて来た。めちゃくちゃ怖い。


「だってお前…ぶつかっただろ」

ぶつかった?ぶ、つ…?私がさっき走っててぶつかったのなんて1回だけだ。渡り廊下の。て、え、つまり。


「ああああれごごごきゅ…獄寺君だったんですか!?」
「……ああ、」

怖くて顔とかちゃんと見れなかったけど、よく見たら。髪の毛、焦げてる。


「だ、大丈夫、でしたか…?」
「慣れてるからな」

爆弾に。慣れてる。ああなんか、そういうのを聞くとムズムズしてくる。だって、私だって中2ながらの図書委員長!そういう…裏社会に関する本だってたくさん読んできたのだから。もし違ったら失礼なことこの上無いけれど、もしかしたら獄寺君も裏社会の住人だったりするかもしれないのだ。
実際に話とか聞いてみたいなぁ。すっごい気になる。

でもやっぱり、不良って怖いよね。



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ぶっちゃけ最初の方どうでも良いですね。

(130406)

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