花飾り

付喪ゆえ、主である審神者に「綺麗だ」とか「美しい」という言葉をもらうのは嫌いではない。
今よりももっと使ってもらえるよう、もっと好かれるようにこんな姿をしているのだ、むしろそういった言葉は嬉しい。審神者からなら浴びる程欲しいくらいだ。
「髭切様の方がよく似合いそうです。髭切様は女性のように美しいから」
しかし、髪飾りを贈った審神者にそんなことを言われてしまい、髭切は驚いたように目を見開いた。
「綺麗な髪飾りです……。地味な私にはもったいない」
髭切が贈った髪飾りを両手に、審神者が何処か遠くの景色を眺めるように言った。手渡した時は嬉しいと言ったくせに、その場で付けてくれる様子がちっともない審神者に贈ったのは、遠征先で見掛けた小さな髪飾りだ。
「こんな私より、髭切様が付けられた方がこの子もきっと……」
せっかく贈った髪飾りを前につまらない事ばかり言う審神者に、髭切は贈った髪飾りを奪った。
「ひげき……」
そして奪った手で審神者の腰に手をまわし、睫毛と睫毛が触れ合うほど近く、審神者を抱き寄せた。
「……僕は、君にそんなことを言わせるためにそれを贈ったわけじゃないよ」
突然抱き寄せられて固まってしまった審神者の小さな手を取り、細い指の隙間に自分の指を差し入れて指と指を絡めた。
「ねえ、よく見て。本当に君より僕の方が似合うと思う? 僕の手は君よりずっと長いし、大きい。体だって大きいし、君と違って筋肉があって硬い。それでも君は、男の僕にこの髪飾りが似合うっていうの?」
華奢で、柔らかくて、何もかも自分より小さいのが可愛くて。
そんな審神者に似合うと思って選んだ髪飾りを、髭切は細く長い髪に挿した。赤い耳の傍で咲いた花の髪飾りに、髭切はやっぱりと満足そうに目を細める。
「うん、よく似合う。僕よりずっと、可愛い君によく似合っているよ」

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