いとまみれ

さらさらと降る雨音で目が覚めた。
外の砂利が小さな雨粒を弾き、音を奏でる。
膝丸は静かに身を起こし、雨の音をしばらく聞いた。――囁くような雨だ。
これはしばらく続きそうだな、と鬱陶しそうに目を細めては、横で雨粒よりも小さな寝息をたてて寝ている審神者を見下ろし、微笑みを浮かべる。
頬にかかった細い髪をそっと指先で払い、柔らかな頬に口付けを落とす。
一つ、また一つ。
音をたてずに唇を寄せたそれは染み入る雨のようで、膝丸は審神者に少しずつ自身の色を分けるように口付けを繰り返す。
白に近い薄緑の髪が審神者の頬に張り付いていく。審神者という無色透明な色に、滲み渡らせるように、自分の色をまぜていく。


(まだ。まだ起きるな)


白緑の糸が、雨音に紛れて一人の娘を絡めていく音を聞いた。
ひたひた、ひたひたと。

いとまみれ

厨の様子をみてくる、と離れた膝丸と入れ替わるように、膝丸の兄、髭切が朝の挨拶と共に審神者へと歩み寄った。


「おはよう、主。……おお、今日は一段とすごいね」


苦しくないかい? と審神者の頭や肩、腕を軽く叩く素振り見せた髭切に審神者は何のことだろうかと小首を傾げる。
そんな審神者に髭切は何度か瞬きを繰り返しては、呆れたよう溜め息と共に肩を落とした。


「……よく言って聞かせておくよ」

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