口吸い
ちゅ、ちゅ、と甘く吸い付かれ、普段の態度からは想像もできない優しい唇に名前はくらくらとしていた。しかしその甘い目眩は背中と腰にしっかりと回された腕により、力強く抱き支えられていた。
「ふっ……、ま、待って、大、倶利伽羅」
「待たない。」
そしてそれがまた名前の目眩へと繋がる。息を求めて唇が離れた一瞬の隙に顔をそらすも、すぐ大倶利伽羅の唇が追い掛けてくる。どんなに逃げ回っても、あの腕で抱き締められている時点で逃げ場などない。
「……ん、……ん、くり、か、らぁ」
逃げれば逃げるほど角度を変えて深まっていく口付けは、誉の褒美に何でもすると言っただろう、逃げるな、と言わんばかりだった。熱くとろけそうな舌は大胆に名前の口内に入ってきたと思えば甘く優しく名前の小さな舌を可愛がる。
「ん、く、」
息が足りていないせいで潤む瞳で、何故こんなことをするのだと大倶利伽羅を見れば、彼もまた名前を見詰めていた。まさか口付け中にあちらもこちらを見ていたなんて思わなかった名前はそのせいもあり、大倶利伽羅の舌先が彼女の上顎を撫でた瞬間、びくんっと小さく震えてしまった。
彼と目が合ったこともあるが、思いの外彼の口付けが気持ちよくて、まるで感じてしまったかのように震えた体に頬が一気に赤くなる。
「あっ、い、いや、あの、い、いまのは……っ」
と弁解しようにも、名前をじっと見下ろす大倶利伽羅は名前の赤くなる顔をみて僅かに目を細めた。
「気持ち良かったんだな。」
なんて言われれば名前の頬は更に赤くなるだけで、更に更に大倶利伽羅が「……俺もだ。」なんて小さく呟いたのを聞けば拒む腕の力も弱まるというものだ。