先輩の項


ほぼ無意識。というか完全無意識。
部活終わりの部日誌をつけてる先輩のうなじにキスをした。


「ひゃぅっ!」


部活中は常髪をまとめてる先輩。中学ん頃は先輩よくポニーテールしてて可愛かったなぁ。先輩が動くたびさらさらの髪もふよふよ揺れて、最初はあの揺れるポニーテールが気になって先輩の後くっついてたかもしれない。そんなことを思いながら先輩の無防備なうなじを見ていたら、そこがすごく魅惑的に映った。お世辞にも白いとはいえないけど(そこはテニス部だから仕方ない)細い首は先輩をすごく女に魅せて(いや女の子だけどさ)(『もっと』って意味)無自覚に俺を誘ってた。俺は誘われるがまま先輩の首に軽く吸いついたんだけどさ、ねぇ、ちょっと、今の声なに。


「え、先輩、何いまの声。超可愛かった。もう一回言って。」

「な…、な、な…!何言ってんの馬鹿!ていうか何してんのよ!」

「いや、だって先輩の首美味しそうだったから。」


噛み付かなかっただけでも褒めて欲しいくらい。だって先輩ずっと俺そっちのけで日誌つけてるし、首は無防備だし、日誌書いてる先輩待つの嫌いじゃないし、たまに耳に髪かける仕草とか結構気に入ってるし、でもやっぱ構って欲しいし。
キスしたうなじを先輩は手で抑え、椅子に座ったまま俺を睨みあげる。ちょっと、待って先輩。やめて、待って。先輩が俺睨んでもせいぜい可愛いだけだから!


「あとちょっとで終わるから、大人しく待ってて。」


まるで犬に「stay」とでも言うようにまた俺に背を向けた先輩。
…終わったら大人しくしなくてもいいのかな。…いや、違うか。でもそう聞こえたんですケド。
俺そっちのけで日誌をがりがり書く先輩の背中は昔に比べて線が細くて小さくて、肩とか体の線が丸い。先輩こんなに小さかったっけ。こんなに柔らかそうだったっけ。違う、俺が成長してるんだ。先輩が『女』に成長してるんだ。
俺がでかくなって、先輩が更に大人っぽくなって、『先輩に触れたい』という欲求はますます膨らむばかり。感じたい。もっと感じたい。俺と先輩の違い、俺と先輩の体。


「リョーマ…?んっ、ちょ、」


先輩の背中に覆いかぶさるよう、机に手をついた。俺の影に振り向いた先輩が早かったか、俺が再びうなじに顔を埋めたのが早かったかわからないけど、俺は先輩の首にまた口付けた。無防備な後ろ姿。これが俺じゃなかったらどうするつもり?


「や、りょーま、離れなさい…!」

「ヤダね。」


うなじを辿って先輩の頬にキス。唇にもしたいんだけど、先輩が顔をそらしてる。ったく、恥ずかしがり屋め。ま、そんなとこも好きなんだけど。


「ねぇ、先輩。」


先輩の耳に触れるか触れないかの距離で囁くように言えば、先輩は体を固くして大人しくなる。それをいいことに、俺は先輩の腰を抱いて、柔らかい先輩の体を全身で楽しむ。椅子の背もたれがちょっと邪魔だけど、先輩の体が柔らかいのはよくわかる。


「ポニーテール、もうしないの?」


冷たい耳朶を甘噛めば、先輩はぴくりと肩を揺らした。


「し、しない…!誰かさんが、新聞部に、あんなこと、いう、から!」

「新聞部…?あぁ……」


そう言えば、確かに(テニス部取材にきてた)新聞部にアレが乗ってから先輩はポニテをしなくなった。俺はその記事を見て、先輩はもう俺のものだなーってにやにやしたんだけど、次の日先輩髪切ってきたんだっけ。あれ結構ショックだったんだけど。(まぁショートの先輩も可愛かったけど)


「『好きなタイプは、ポニーテールの似合う子』。覚えてくれてたんだ?」

「ち、ちが…!」


違わないクセに。
ああ可愛い。先輩ほんと可愛い。
確かにあの時、髪を切った先輩を見てショックはショックだったんだけど、今よくよく考えたら、なんか俺を意識してるみたいで先輩超可愛くない?あの記事見てどう思ったんだろう、どんな表情したんだろう、どんな気持ちで髪切ったんだろう。ああやばい。先輩好きすぎるんだけど。


「んんっ」


先輩の顎を取って、今度こそ唇に口付けた。先輩の体はどこもかしこも柔らかいけど、唇は特別だよね。何度も口付けることによって、微かに緩んだ口元から舌を伸ばし先輩の口内へ。逃げまどう先輩の舌を掴まえ、舌を絡め唾液の糸を紡ぐ。言葉ではどんなに俺のこと否定しても、なんだかんだ思いっきり拒まない先輩は甘いよね。実はこういう事されるの、本当は嫌いじゃないんでしょ?


「なまえ先輩、好きだよ。」

「や、リョーマ、どこに、手…ぁ!」


キスを終えた後の先輩のとろりとした目に気分を良くした俺は調子こいて先輩の足の付け根を撫でた。そして迷いなく先輩の下肢の中心へと指を這わす。熱い。今日もここは俺好みに柔らかくて気持ち良さそうだ。


「りょー、ま!お、となし、く…!」

「ねぇ、先輩。俺が先輩の言うこと大人しく聞いたことなんてあった?」


ちゅ、とうなじに口付ける。
可愛いかわいい俺のなまえ先輩。さっき俺に大人しく「stay」って言ったけど、俺、犬じゃないし、前、先輩が言った通り多分わけるとしたら猫なんだよね。だから俺は俺のしたいこと、やりたいことを、したいだけやりたいだけやらしてもらうね。いくら先輩が俺に背を向けようが髪を切ろうが、俺は先輩に触れたいだけ触れる。だって先輩は俺のものだし、俺は先輩のもの。
なんで気付かないかなぁ。先輩が俺に冷たくすればする程、俺は先輩を好きになるんだよ。ふらふら揺れてるポニーテールをさ、こう、追い掛けたくなるの。先輩がそれに気付けば、先輩自身もっとラクになれるだろうに。ほんとなまえ先輩って。


「まだまだだね。」



先輩、ねぇ、先輩。




翌日、同じ猫科であろう菊丸先輩に指さされて笑った。


「おチビほっぺに紅葉ー!」

「俺もうチビでもなんでもないんすケド。」

「にゃはははは!紅葉!紅葉!!」


…いつかサーカスに売り飛ばしてやろうと思った。

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