エイプリルフール
「アキラ君!」
「はい。」
「私!アキラ君のこと大嫌い!」
「奇遇ですね。僕もなまえさんの事が死ぬほど大嫌いです。」
「!!」
よっし今日はエイプリルフールだね!よっしじゃぁいつも子供らしからぬ大人っぽいアキラ君をずぎゃーんっと驚かそうと思って私は朝早くからアキラ君の部屋の扉を開けて、アキラ君のもとに行って、冒頭のセリフを言えば何てこともないようににっこり返されてしまった!
「き、きらっ…!アキラ君っ、わ、わたしのこと、しぬほど、きら…!!」
ど、どうしよう!驚かそうと思ったら驚返されてしまった…!し、しかも死ぬほど大嫌いって…!死ぬほど大嫌いって笑顔で!すっごい笑顔で言われた!!そうだったのか…!アキラ君、私のこと死ぬほど…、しかもそんないい笑顔で言っちゃうくらい私のこと大嫌いだったんだ…!どうしよう悲しくて死ねる…!今の今までそんなこと感じたことなかったのに!アキラ君の笑顔に私ががたがたぷるぷる震えていると、アキラ君は我慢できないとばかりにふき出した。ぷ、あははっ、って。あ、あれ、ふ、ふき出…?
「エイプリルフール、ですよね。なまえさん。」
「あ、は、はい…そうです…そうですよ…。」
「僕もエイプリルフールですよ、なまえさん。」
口元に手をあてて、ちょっと小首を傾げるようにして笑ってるアキラ君が大変可愛らしい。キミは本当に男の子かね。あ、いや、ちょっとその前に…。エイプリル、フールって言った?アキラ君エイプリルフールって今私に言った?ってことは?つまり、さっきのは…。
「嘘か!」
「嘘だよ。」
「ひどい!」
「ひどくないよ。だってなまえさんだって僕に嘘つきましたよね。」
「エイプリルフールだからね!」
「なら、僕もエイプリルフールです。」
くすくす笑うアキラ君に、も、もう…私またアキラ君に一本取られた…。アキラ君が私のこと死ぬほど大嫌いなんて言うから、すっごいびっくりしたよ…。
「なまえさん、自分で嘘言ったのに、僕の嘘は真に受けるなんて…ふふ。」
「だ、だって、アキラ君…エイプリルフール知らないかと…。進藤君と囲碁以外のことなんて興味ないじゃん…。」
「そんなことありませんよ。進藤と囲碁以外に興味あるものだってありますし。」
「え、そうなの?」
アキラ君、進藤君と囲碁以外に興味あるものあるの!?それは初耳だよお姉さん!ぱちくり、アキラ君を見ればアキラ君はまたにっこり笑ってて、だ、駄目だよ!またにっこり笑って誤魔化すの無しだよ!
「なに?何に興味あるのアキラ君!」
「秘密です。」
「だ、駄目!アキラ君また秘密とか駄目!隠し事いくないよ!」
キミはいつからそんなちょっと捻くれボーイになったんだい?昔はあんなに素直に私の後ろをついてきて、それはもう、二人の間に秘密なんてないくらいに仲良しだったのに!
最近のアキラ君は、なんだか私に対して秘密を持ってる。しかも、その秘密を楽しんでるみたいで、私には絶対教えてくれないんだ。私はアキラ君の両腕を取って揺するように言うけど、アキラ君のにこにこは崩れない。むしろもっと嬉しそうに笑ってて。
「…む…、アキラ君…。また私をからかって楽しんでるでしょ。」
「そんなことないよ。なまえさんは可愛いなって。」
「そういうとこがからかってるっていうんだよ!エイプリルフールだ!!」
「ひどいなぁ、本当のことなのに。」
でも、私をその秘密でからかっている時のアキラ君は本当に楽しそうで、それはきっと私に対しての悪い秘密ではないので、私は強く聞き出さない。それに、私をからかっているアキラ君の表情は、本当に楽しそうで、なんだかんだ、私はそれに流されてしまっている。だって、アキラ君があまりにも私をからかうのを幸せそうな表情でするから。
「アキラ君、性格悪くなったよね…」
「悪くなったのなら、間違いなくそれはなまえさんのせいだよ。」
「うそ…!」
「本当。」
だから私は、いつも大事なことをアキラ君に聞きそびれてしまう。
こんなにわかりやすく言ってるのに気付かないなんて。
本当、なまえさんは可愛いんだから。