愛が重たい

『昔』からお前は愛が重たいとか、兵長に言われていました。失礼な、兵長。兵長は確かに兵長で俺のなまえさんに対して好きなことたくさん言えますけどね(まぁ許す許さないの限度はありますが)、兵長は兵長であってなまえさんの上司。ただそれだけなんですよ。俺はというと昔からなまえさんの恋人で、なまえさんが健やかに今日も一日生きていればそれでいいんです。で、ついでに「エレン、大好き」とか「エレンしかいらない」とか「エレンとずっといたい」「エレンのものになりたい」って言ってくれればそれはそれで嬉しいんです(ああ想像するだけでたまりません、なまえさん)。だからね、なまえさん。


「俺以外の人と話してはいけません。」

「へ…?」


生まれ変わってもなまえさんと出会えたこの現世を今日も大事に生きている。前世の記憶を持ちながら、いつなまえさんとまた出会えるんだろうと一日一日なまえさんのことを思っていた俺は、晴れて高校に入学してなまえさんと再会した。再会したなまえさんは色々と狡かった。昔よりは縮まったけどやっぱり一個上の先輩だし、ミニスカートだし、可愛いし、「エレン」って呼んでくれる声はもうのたうちまわりたいくらい愛しいし。記憶は、最初は覚えてなかったみたい。でも俺と接している内に(毎日なまえさんに声掛けた、しつこいくらいに。)だんだんと思い出してきて、はっきり思い出してくれたあの日、なまえさんがぽろぽろ泣きながら俺に抱き着いてきて「エレン待たせてごめんね、ごめんね、だいすき、だいすきだよ、会いに来てくれてありがとう、だいすき」って言われたあの時は正直死んでもいいと思った。いや、死んだら駄目だけど、それくらいの勢いだってことだ。


「特にリヴァイ兵長。あの人は油断なりません。昔からなまえさんを見る目がヤラシイと思ってましたが、今もそれは健在です。むしろ今この時代に生きているからか前よりもタチ悪いと感じます。」

「へいちょうが…?でも、リヴァイ先輩いつも優しいよ?勉強教えてくれるし、頭撫でてくれるし、お菓子くれるし。」

「それです!」


それが危ないんですなまえさん!前世の貴女もそうやってリヴァイ兵長に餌付けされていたことに気付いていなかったけど現世でもそうだった!また!俺は!リヴァイ兵長にやきもきするのか!


「だいたいリヴァイ先輩って呼ばせてるのが本当に油断なりません。手が早すぎです。早いのは立体起動だけでいいです。」

「でも今の時代に兵長なんて呼んだらおかしいってこの間リヴァイ先輩に言われたんだよ…?」

「安心してください、あの学校半分が調査兵団の集まりです。」


とにかく。
兵長には気を付けてください。あとなまえさんにお花まき散らしながら「先輩」なんて上目で言われたら大抵の男は死にます。だからそんな簡単に言わないでください。
そう言ったら「エレンは先輩呼びが羨ましいの?呼んであげよっか?エレンせんぱい?」なんて言われて、その破壊力に後ろ仰け反ったらベッドの角に頭ぶつけて悶絶した。どっちに?なまえさんに!!!!!


「エレンの心配しすぎだよ…。ペトラやクリスタが先輩って言ってくれるなら、こう、ぎゅうううって抱き締めたくなるけど、私が言ってもただの先輩だよ。」


いえ、言われたら抱き締めたいです。


「エレンは昔から、心配性だよね。」


くすくすと笑うなまえさんはわかってない。本当にわかってない。俺は自分で言うのもなんだけど全然心配性じゃない。猪突猛進だと思ってる。でもどうしても心配したくなるのはなまえさんの前だけ。いつもふわふわ笑っててにこにこ可愛くてエレンエレンって呼んでくれて、もう全部が全部俺が護ってあげなくちゃって思うような、ああなまえさん可愛いです大好きです結婚しよ。(早く18歳になりたいです)


「よしよし。私は昔も今も、エレン一筋ですよ。」


痛いの痛いの飛んでけー、ってぶつけた頭を撫でてくれるなまえさんに、今までよくなまえさんは男に唾つけられずに生きてきたなって思った。いや付けられてたら全力でその男駆逐してやって全力でなまえさんの消毒作業に移るけどな。


「なまえさん」

「はい、なんでしょうか」

「…抱き締めてもらって、いいですか?」


相変わらず優しいなまえさんにきゅんとした俺がそう言えば、なまえさんはにっこり笑って座ってる俺を膝立ちで抱き締めてくれた。あの頃みたいに今は体を鍛える必要が無くなったなまえさんの腕は細くて柔らかい。あの頃も細くて柔らかかったけど、今はもっと。普通のおんなのこって感じがして、今のこの時代にすごく安心した。柔らかい胸に顔を埋めれば、不思議だ、昔と変わらないなまえさんの匂いに包まれる。


「なまえさん、好きです。」

「うん。私も大好きだよ。」

「俺以外の男と話しないでください。俺が悲しいです。」

「そ、そうなの?エレン悲しいの…?」

「はい。すごく胸がぎゅうって苦しくなります。」

「そ、そうなんだ…!き、気を付けるね!」

「はい。特に兵長には近づかないでください。」

「え…!?あ、う、うん…?」


『昔』からお前は愛が重たいとか、兵長に言われていました。でもそれは仕方のないことだと思うんですよ、兵長。だって俺のなまえさんはなまえさんでなまえさんだから俺のなまえさんなんですよ。愛が重たいとかそういうのじゃなくて、ただ純粋になまえさんの全ては俺のものだって思うんです。護らなくちゃ、髪の毛一本も誰にも触らせたくない。本来なら見せたくもないんですよ。兵長が俺にそうしたように、牢屋に入れて鎖でつないでずっと地下に閉じ込めたい(ああでもあれは気が滅入るから、ちゃんと人形とか本とかお花とか用意してあげる、なまえさんにそうするなら)。でもやっぱりなまえさんはお日様の下でふわふわ笑ってエレンって呼んでくれるのが一番可愛いので外に出してあげているだけであって、他の誰でもない、俺のためなんですよ。だから愛が重たいっていうのは少し違って、俺がそうだったら嬉しいっていうのをなまえさんにぶつけてるだけなんです。で、その俺が嬉しいってことが、なまえさんの笑顔に繋がってて、だから、あれ、もしかしてこれが既に重たいのか。


「なまえさん」

「なぁに?」


なまえさんの胸から顔をあげて、頭裏を引き寄せて唇を重ねた。
押し開いた先にある小さな舌は、今日も俺を拒まずに俺を待っていた。

兵長。
兵長、すみません。俺がなまえさんを愛すことで愛が重たいと言われるのなら、俺はやっぱり、それはそれでいいです、兵長。だってなまえさんは俺とのキスでこんなに蕩けてくれるんだから。


愛が重たい


エレン、私ね、私はエレンを幸せにするために生まれたんだよ。きっと。

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