研修が終了したフロアは、そこから出る審神者と迎えにいく刀剣男士で溢れ返っていた。
すれ違いざまに別本丸の自分達を見掛けるくらいの人の多さだというのに、スーツ姿の審神者も刀剣男士も、きちんと自分の主と刀剣を見付けられている。
「……主、来ないねえ」
「中で知り合いの審神者とでも話し込んでいるのだろうか」
そしてこの髭切と膝丸も、二振にしか嗅ぎ取れない審神者の匂いをたどって彼女の戻りを待っているのだが、なかなか見当たらない。
「だとしても、あの子なら一言告げに戻ってくるくらいはしそうだけど」
「それもそうだな……」
壁際で大人しく待っているよりもこちらから探しに行った方が早いだろうかと、もう一度フロア内を見渡した時だ。
遠くから芳しい花のような香りがし、そちらへと顔を向ける。
爽やかでありつつも、誘うような甘さを忘れない香りに二振は審神者を見付ける。他の男や刀剣男士では嗅ぐことができない、二振だけの甘い香りに髭切と膝丸は表情を和らげ、審神者へと歩を進めた。
しかし、見付けた審神者の表情に一瞬だけ足を止める。フロアから出てきた審神者は、何かを振り切るようにして足早に歩いており、いつもならすぐこちらに気付いてくれるはずだというのに、二振に目もくれずこの場から離れようとしていた。
何やら様子がおかしい、と髭切と膝丸は目を合わせては審神者を追い掛ける。人混みをすり抜け、研修資料を抱え込むようにして歩く審神者へ、二振は手を伸ばした。
「――主」
小さな肩と、小さな手を取って、二振は両脇から審神者を呼び止めようとした。だが、次の瞬間、二振の手は強く弾かれてしまう。
「っ!」
互いに息を飲んだような声が出たが、審神者の方は「嫌だ」とか「触らないで」とでも聞こえてきそうな顔だった。思わず目を丸くする三人だが、ふと、振り払われた際に香った審神者の匂いに髭切と膝丸は僅かに眉を寄せる。
「あっ、ふ、二人か……。びっくりした……。いきなり肩と手を掴まれるんだもん」
数秒、気まずい空気が流れるも、すぐに審神者が無理矢理笑って誤魔化した。その笑みは随分とぎこちなく、いつも見る可愛らしい笑みとは程遠い、緊張したものだった。
探らなくともわかる。二振が離れている間に、審神者に何かあったのだろうと察した髭切、膝丸は審神者へと体を寄せた。次は怖がらせる真似はせず、髭切は審神者の手を取り、膝丸は審神者の腰へと腕をまわす。
「ふ、ふたり、とも……!?」
突然、身を寄せてきた二振に審神者は狼狽える。慌てて周囲を見渡すも、フロアは既に人もまばらで三人を注視するものなどいなかった。それをいいことに髭切は審神者の手を自分の頬に触れさせ、膝丸は審神者の頭へと鼻先を埋めた。
「……嫌な匂いがするね」
「ああ、君の香りに違うものが混ざっている」
「え、えぇっ……!?」
「急いで出てきて、何かあったの?」
「君が恐れるものがあるのなら、我ら兄弟が切り刻んでやろう」
「おそれるって……」
そんなつもりで出てきてないとでも言うつもりだったのだろうか。しかし二振に掴まった時の審神者の怯えた表情を見れば、何かから逃げ出してきたのは一目瞭然だ。何が審神者をあそこまで脅かしたのか。そう二振が詰め寄ると、審神者は体を小さくさせては視線を落とした。
「あの、そ、そんなたいしたことじゃ、なくて……」
「たいしたことかどうかは僕達が決めるよ」
「ああ、君に判断の基準は任せられない」
付着した審神者以外の匂いを取るかのように、二振が審神者の体に触れる。
離れる様子のない二振の手に、言いださねばずっとこのままだと気付いた審神者が諦めたように息を吐いては、言いづらそうに口を開いた。
「あの……、ここ最近、妙にからかってくる男の人が、いて」
審神者の言葉に、梔子色の目がすうと細くなる。
「適当に相槌打って濁してたんだけど、今日、後ろから、その、抱きつかれて……」
ふと、審神者の体がかたかたと震え出し、二振は審神者へと寄り添った。可哀想に、と審神者の手や頭を撫でながらも、二振の胸の内はどす黒い何かに満ちていく。
「びっくりして、やめてくださいって言ったんだけど、その人、私が照れて言ってるって勘違いしてて……、すぐ、二人の元に戻りたかったんだけど、しつこくついてきて、だから、その」
二振の元へ戻るのが遅れてしまったのだ、と最後は言葉を詰まらせた審神者へ髭切が宥めるように小さな手をそっと包んだ。
「……そのまま連れてくればよかったんだよ」
「ああ、すぐにでもその腕切り落としてくれる」
髭切の言葉に膝丸も頷き、審神者の頭に頬を擦り寄せるようにした。
「あの、でも、もう、大丈夫だから……」
切り落とすなどと、軽い冗談のように口にされたそれは、おそらく二振にとって冗談ではない。彼等なら本当にやりかねないと思ったから撒いてきたのだ、と審神者は喉元まで出かかったが何とか飲み込み、笑みを浮かべては平静を装う。
しかし、そんな弱々しい笑みなど二振の前では通用せず、兄弟はよく似た顔を揃って顰めた。
「ねえ、今の話は全然大丈夫じゃないよ?」
「まったくだ。それにその男、以前も君に付きまとっていた審神者ではないか?」
なんだか覚えがある、と言った膝丸に、審神者はぎこちなく頷いた。
そう、抱きつかれたのは今日が初めてなのだが、今までにも何回かちょっかいを出されている。審神者同士横のつながりもあるゆえ、はっきり嫌がることもできず、愛想笑いで切り抜けていたら今日のようになってしまった。
今までそうなる前に二振が審神者を引き戻してくれていたのだが、今日は研修ゆえ近侍を側に置いておくことが叶わなかった。
「次会ったら僕達が片付けておくよ」
「ああ。だから、そんなに怯えるな」
「い、いや、片付けるとか、こ、怖いこと言わないで……?」
困った男審神者に灸を据えてくれるのは助かるのだが、二振が言うと物理的に消されてしまいそうで怖い。いや、多分、間違いなく消されてしまう。
変な行動を取らせないよう気を付けねば……、と審神者が口を引き結ぶと、黙った審神者へ、髭切が顔を寄せた。
「大丈夫? まだ、怖い?」
「あ、え、えっと……」
「それとも、俺達も怖いか?」
「そ、そうじゃくて……」
そうでないような、あるような。答えに困った審神者は二振の目から逃げるように俯いた。すると、俯いた審神者から、審神者の甘い香りと、それ以外の匂いがして、膝丸が渋そうに鼻を鳴らした。
「嫌な匂いだ」
「ほんとう、君から君以外の匂いがするなんて、すごく嫌だ」
不純物が入ったその匂いに髭切も同調し、二振は審神者の手を引いた。
「あっ、あの……、二人とも!?」
「あのね、主。君は君が思っている以上に僕達のものなんだよ。だから僕達が知らないところで知らない匂いをもらってきては駄目。その甘い匂いに別の匂いを混ぜるなんてもっと駄目」
「例え不可抗力だとしても、俺達はそれを許す心を持ち合わせていない。もっと自分が俺達のものだという自覚を持って行動し、自衛するか、俺達に頼るかどちらかにするんだ。まあ、頼るしかないだろうが」
「ま、待って……!」
足の長い二振に両手を取られ、足がもつれそうになる。今日は研修だったゆえ、タイトスカートを履いているから尚更だ。
なんとか二振の歩幅に追い付こうと足を忙しく動かしていると、三人はいつの間にかフロア内の空き部屋へとやってきた。膝丸が誰も居ないのを確認すると、その中に審神者を入れ、髭切が続き、その戸を閉めた。
瞬間、入ったこの部屋が急に閉ざされた空間へと変わり、審神者は二振がここに結界を張ったことに気付く。
「ねえ、二人とも……?」
入った場所は自習室か何かのようで、白を基調とした部屋に、壁を作った机が何個か置いてあった。審神者は少し広めに作られた机の上へと座らされ、その前に髭切と膝丸が並んだ。
何だか不穏な空気を纏う二振に、審神者は後ろに手をつき後退ろうとするも、その手に二振の手が重なる。
「逃げないで。その変な匂いを取るだけだから」
「ああ、怖いことなどない」
既にこの状況は怖いのだが、それはどうすればいいのだろうか。二振を見比べては困惑した顔をする審神者へ、膝丸は頬を寄せる。
「怖がるな。俺達は君へと突然飛びついたりしない」
「そう。きちんと躾けられた毛並みのいい犬だよ」
「……っ、犬だ、なんて……っ」
変なことを言わないで欲しい、と審神者が返そうとするも、その口を膝丸が吸い付いて塞いだ。
「君だけの忠実な犬だ。安心してくれ」
「んっ……、い、犬じゃ、ない……っ」
「ふふ、じゃあなぁに? 何にしてくれるの?」
「んーっ、ふ、ぁ」
膝丸と入れ替わるようにして口付けてきた髭切が審神者の胸を撫でる。唇を重ねつつ、柔らかな胸にそっと触れてはブラウスの釦を一つ一つ取っていく。開いた場所から髭切の手が滑り込み、温かな膨らみへと優しく指を埋めた。
「やわらかい」
気持ちいいとばかりに呟かれた言葉に審神者は頬を染め、身を捩るも、今度は膝丸が足を撫でた。
「ああ、君はどこもかしこも触り心地がいい。そして、いい匂いだ」
「あっ、や……っ」
審神者の足を取った膝丸が華奢なパンプスを床に落とし、膝をついては審神者の脛に唇を押し当てる。慣れないパンプスを履き続け、少し疲れた脹脛を膝丸の唇がつうとなぞる。
「う、あ……っ」
「あぁ、足が少し緊張しているな。ほぐしてやろう」
「んっ……」
「じゃあ、僕はこっち」
審神者の胸の下着を少しだけずらし、指先でぴんと立った乳首を髭切の指が擽る。敏感な場所を擽られ、白い喉をさらした審神者へと髭切は舌先を伸ばした。そして白い喉から顎裏をじっくりと舐め上げる。
「あ、あぁ……っ」
「そうそう。この香りだよ」
「まったく。君の香りを穢そうなど、百年早い」
はくり、と膝丸が審神者の爪先を口に含んだ。ストッキングで包まれた足先に膝丸の温かい口内を感じて審神者は驚いて足を引っ込めるも、踵と脹脛をしっかりと支えられていた。
「ふふ、百年も早いよ。ずっと、一生、この香りは僕達のものだもの」
「ああ、それもそうだ」
じゅ……、と足先と、乳首が吸われる。
「あっ、いやぁ……っ!」
いつの間にか胸に頬を寄せた髭切が審神者の乳首を口に含み、舌で愛撫していた。後ろに付いていた手で肩を押しやろうとしたが、その手に気付いた髭切がにやりと笑って審神者の乳首に歯を立てた。
「やんっ」
「可愛い。乳首、こうやって苛められるの、好きだよね?」
「兄者、主は足も弱い」
「ひ……、あぁっ」
まるで対抗するかのように膝丸が審神者の足裏を舐めた。ぞくりとするような舌使いに足がひくつくも、膝丸はその動きを把握していたかのように内腿に唇を滑らせ、審神者の両脚を割る。開いた内腿からは膝丸の雄をざわつかせる濃厚の香りが漂ってきた。
「……堪らんな」
恍惚と呟いた膝丸に髭切も内腿を撫でながらくすりと笑う。
「足に弱いのはお前の方じゃないか」
「む、そのようなつもりはないが……、主だからというのなら悪くない」
「ほら」
やっぱり、と笑った髭切が審神者の足を開く。煽るように審神者の腿に指先を埋めると、膝丸は熱い溜息を短く吐き出してその中心へと顔を埋めた。
「あ、あぁっ!」
ストッキングを履いているのにも関わらず、構わずそこへと顔を埋めた膝丸はうっとりと呟く。
「やはり、ここが一番香りが強い」
「や、やめて……っ」
すう、と強く吸われる音に審神者は膝丸の頭を退けようとするも、その手は横に腰掛けた髭切の手により封じられる。
「だぁめ。君の香りを引き出すには、弟に気持ち良くしてもらった方がいいんだよ」
「や、やだ、やだぁ……っ」
「安心しろ。怖い事はしない」
よく躾けられるからな、と膝丸は付け足し、下着とストッキングを隔てたそこへぱくりと食い付いた。下着とストッキング、二枚隔てているはずなのに、膝丸の唇と舌の形がありありと伝わり、審神者はびくびくと震えあがった。
「ふふ、弟に食べられて気持ちいい? 可愛い声、もっと聞かせて」
「んっ、んーっ」
髭切に手を取られ、唇を奪われる。厚い舌が審神者の小さな舌に絡み、追い掛けては捩じ伏せる。
「あ、ふぅっ……」
「ああ、中が滲んできたな。君の味がする」
「あっ、あぁんっ!」
じゅ、じゅ、と膝丸が音をたてて審神者の愛液を吸い出そうとしていた。ストッキングと下着があるのだ、吸い出るわけがないと審神者は首を振り、髭切はそんな二人を見てくすりと笑った。
「お前の唾液ではなくて?」
「ふ……、兄者も味わうか?」
「あ、だめぇ……っ!」
強く、きつくそこを吸い上げられ、審神者は体の芯がふわりと飛んでいくのを感じた。何処かへと持ち上がっていく意識に審神者は連れて行かれそうになるも、すぐに噴き出る汗と共に引き戻される。
「ん……、本当だ。主の味。甘いね」
「だろう。今日はよく熟れている」
そして、目の前で口付けている兄弟の姿をぼうっと見上げる。舌を絡め、互いの唾液を交換しているように見えて、味わっているのは吸い取った審神者の蜜だ。
何の躊躇いもなしに兄弟で口付ける二振に、何かいけないものを見ている気がして審神者は目をそらした。すると、それに気付いた二振が審神者の耳を擽る。
「ごめんね、主。主も一緒じゃないとつまらないよね」
「仲間外れにしたわけではない。君の蜜が今日も美味かったから、兄者にも……」
「や、やめてぇ……っ」
何を訳の分からない恥ずかしいことを言うのだ、と審神者は耳を塞ぎたくなるも、両耳に二振の舌が入り、頭の中を音で犯される。
「あっ……、耳、やめて……っ」
「一緒に気持ち良くなろうね」
「ああ、君の香りに俺達の香りを混ぜよう」
「んぅ、んっ……あ、あぁ……っ」
唇の両端を二振に口付けられ、二振の手が審神者の秘部へと伸びる。薄いストッキングと小さな下着を潜り抜け、長い指がたっぷりと濡れた膣へと入り込んだ。ぴり、ぴり、とストッキングの繊維が切れる音がした。
「すごい、たくさん濡れてるね。弟のが気持ち良かったんだ」
「当たり前だ。主の好きなところは俺がよく知っている」
「流石、僕の弟。でも、僕もよく知っているよ?」
「あ、ああぁっ……」
膣の柔らかい壁を髭切の指がゆっくりと撫で上げる。ぞくぞくと這い上がっていく気持ち良さに審神者が唇を震わせると、それを覗き込む膝丸が溜息混じりに言う。
「ああ、なんて顔をするのだ……」
「可愛いでしょう? あとね、こうすると……」
「ひ、ぁぁんっ!」
髭切の親指が審神者の濡れた粒を撫でた。途端、びくんっと審神者は達し、入っている二本の指をぎゅうっと締め付けた。
「ほら、いった」
髭切は満足そうに呟いては審神者のそこから指を引き抜き、濡れた指先を舐め取った。愛液を蜂蜜か何かのように舐め取った髭切の姿に審神者は涙を滲ませ、視線をそらす。しかし髭切の目が追い掛けるように審神者の顎を掴んで唇を合わせた。
「ふふ、主の舐めたら興奮してきちゃった……。もう入れていい? 気持ち良くしてあげるから」
何がしてあげるから、だ。気持ち良くさせれば何をしても許されるというのか、と審神者は髭切の形のいい唇に噛み付いた。しかし弱々しいそれは髭切からすれば審神者からの口付けのようで、喜んで舌を絡め取られた。
「うん。一つになろうね」
審神者の抵抗も虚しく、幸せそうに微笑んだ髭切がストッキングと下着を器用に脱がしていく。転がっているパンプスの上にそれを落とそうとすれば、膝丸がそれを受け取り、机へと置いた。
「また履いて帰るのだ。下に置いたら可哀想だ」
「ええ? 履かせないで帰るのも可愛いと思うのだけど」
「なんだと……?」
「何なら、そのストッキングとショーツはお前が持ち帰ったら? 足フェチ丸」
「膝丸だっ!」
くだらないやりとりを交わしつつも、髭切は審神者の前へと立ちはだかり、その顔に似合わぬ赤黒い肉棒を取り出した。ぶるんっと顔を出したそれに審神者が怯えるも、髭切は優しく頬を擦り寄せる。
「大丈夫、噛み付いたりしないよ。僕も、僕のこれも君に忠実だよ。ほら、舐めてあげる」
そう言って髭切は熱く滾った竿の先を審神者へと擦り付けた。
「ほらね、君が好きだってぺろぺろしているよ」
「あっ、んぁ……っ!」
何がぺろぺろだ、と吠えたくなるも、質量の大きいかたいもので擦られると声を上げる気力も奪われてしまう。
「僕のこれ、もう怖くないよね。入れるよ? ……駄目って言われても入れちゃうけど」
忠実ではなかったのか。そんな言葉と共に髭切のものが押し入ってきた。
捻じ込まれる圧迫感に審神者は息を詰まらせた。
「あ、お、きい……っ」
「嬉しいね。もっと感じてくれるかい?」
「あっ、あぁんっ……、んぅっ!」
髭切の肉棒が熱く擦れる。膣の中を我が物顔で行き来するそれに審神者は体も脳も支配されてしまう。しかし、それだけではないぞ、と膝丸が審神者の胸を甘噛みした。
「んぅーっ!」
審神者の声と共に、中に熱を埋めていた髭切が小さく唸った。
「……っ、中が、締まる……お前、ね……」
「目の前で寂しそうに震えていたからな。可愛がったまでだ」
「へえ、その言葉、よく覚えておくよ……」
「ひ、あ、あぁっ……!」
兄弟の会話を混ぜつつも、二振は審神者を可愛がることをやめない。むしろ互いに審神者を可愛がるよう、余すことなく蹂躙してくる。
「はあ、気持ちいい……。香りで頭がくらくらするよ」
「なら代わろうか」
「兄が終わるまで待てもできないかい?」
「主になるとな」
「ふぅん……。でも、それは僕も一緒、かな……っ」
膝丸の笑みに髭切も不敵に笑い、譲るものかと審神者の細腰を掴んでは激しく揺さぶった。
「ひげ、きり……っ、あうっ、は、ぅっ……んっ、んーっ!!」
ぎゅうっと膣が髭切をきつく締め付ける。苦しい程の締め付けに促され、果てる審神者へ覆い被さるようにして髭切は中へと熱を迸らせた。
「……はっ……、あぁ、好き。この香り……」
達した審神者から甘い匂いが一段と濃く香りだし、髭切は汗ばむ細い首元へ顔を埋める。つたう汗を、髭切がべろりと舐め上げる。
「んっ……」
「ああ、あまい……」
「兄者……、どいてくれ」
「……おや、待てのできない弟がやってきた……」
首元に顔を埋めたままの髭切が視線をずらせば、緩めた下衣から強くそそり立つ自身を握った膝丸がそこにいた。髭切は名残惜しそうに中から自身を引きずり出し、審神者の前を膝丸に譲る。
とぷ、と髭切の白濁を零す審神者の入口をじっと見詰めては膝丸は喉を上下させた。今にも襲い掛からんとする膝丸に髭切が口を開く。
「こら。主はまだ達したばかりだよ。少し休ませてあげなさい」
髭切は審神者の体を支えながら、膝丸の胸を押した。
「どれくらい」
「さあ、主が良しというまでかな」
ね、主。と髭切は審神者へと口付け、意識をふわふわとさせている審神者を自分に引き止める。まるで膝丸に向けられる意識を繋ぎ止めているようだった。
「ん……」
「君、兄者ばかり構うな」
「ありゃ? 主を急かすなんて、躾がなってないんじゃない?」
「……そうだな、では、その主に躾けてもらおうか」
「あ、こら」
「あっ、やぁあんっ……!!」
髭切が支える審神者の体を膝丸は引っ掴む。そして膝丸を誘ってやまない入口へと、楔を打ち込んだ。容赦なく、真っすぐ貫かれた中に審神者は目を見開き、そこから涙を零した。
「ああ、可哀想に。ほら、主が泣いちゃったじゃないか」
そう言って髭切は審神者の涙を舐め取り、頬に口付ける。膝丸を叱るような口調ではあったが、審神者の頬を舐める髭切の目は楽しそうに細められていた。髭切が口付けるたび、審神者の中がひくつき、膝丸はそれを叱咤するように腰を揺り動かした。
「ん、ぁあっ……」
「主、君へ無体を強いる俺を、きちんと躾けてもらおうか」
今君に触れているのはこの俺だと、まったくもって躾けてもらう態度ではない膝丸が審神者を責め立てる。奥へごつごつと切っ先を突き立て、審神者の意識を膝丸へと向けさせる。
「あっ、おく、だめぇ……っ」
「なら、浅くしようか」
「ひっ、ぅ、あっ……、ぬ、けちゃ、う……」
「君のいう事を聞いたまでだぞ」
「あっ、あぁっ……、ひ、んっ……、お、おくが、いい……奥、ちょう、だいっ」
「仕方のない主だ。まあ、それもいい。君のいう事にはきちんと従おう」
「あぁんっ……!」
深く突き入れられる強烈な快感に審神者が体をのけ反らせる。一番奥に届くようにと膝丸は審神者の腰を軽く持ち上げ、最奥を狙った。
「んっ、んぅっ……」
体を反らした審神者を髭切が抱き留め、両胸をすくいあげるように包んでは親指で乳首を擦る。するとそれに合わせて審神者の中がひくついた。
「あに、じゃ……っ」
最奥で膝丸の先が刺激され、その肉棒から熱が出そうになる。膝丸は審神者の胸を弄っては二人を煽る髭切を小さく睨む。もちろん、楽しそうな目をした髭切がそれを受け止めた。
「主の胸がぷるぷる震えて可愛かったから。もっと気持ち良くしてあげようと思って」
何処かで似たような台詞を聞いたな、と膝丸は口端を歪め、髭切も目を細める。
「……主、すまない……、君の中が、良すぎて、長くはもたん……っ」
「あぁんっ、んっ、うっ……」
「は……、香りが、濃い……っ」
「頑張って、弟。ほら、躾けてもらうんだろう」
「やっ、あぁんっ」
「うっ……、待ってくれ、君……、そんなに、締めては……、くっ」
審神者を揺さぶるたび、膝丸を狂わす香りが甘く立ちあがる。側で嗅ぐ髭切もその香りを味わうように鼻ではなく、口から吸いこんでは気持ち良さそうな息を吐き出した。
「可愛いなぁ、二人とも。僕も一緒に気持ちよくなってきた……」
そう言って髭切は審神者の乳首を指で摘まみ上げる。二人が高みへと上ろうとしているのを見計らい、髭切は親指と人差し指で摘まんだ乳首をこりこりと捏ねた。
「んっ、あ、……あぁぁ……っ!!」
「ぁ、くっ……!」
髭切の指先により、二人は同時に突き抜ける快感に襲われた。立ち込める審神者の香りに酔わされて膝丸は中で熱を吐き出し、審神者の中をたっぷりと満たしてやった。……正直、膝丸のタイミングでは無かったが。
「……兄者」
「ふふ、二人とも可愛かったよ。三人でいったみたいで気持ち良かったね」
「ん……」
くったりと身を預ける審神者へ髭切と膝丸が交互に口付け、肩口に頬を寄せる。
「ああ、君の香りだ……」
「うん、もう変な匂いはしない」
「少し、俺達の匂いも混ざったな」
「そうだね。変な虫がつかないよう、濃く混ぜ合わせたからね。……うーん。嗅いでるとまた興奮しそう。ねえ、もう一回してもいいかな。後で怒られちゃうかな?」
「……俺には、兄者こそ待てができぬように見える」
「ありゃ、そうかい? お利口にしているつもりなんだけどね」
審神者の肌に擦り寄る二振はまるで猫のようだというのに、審神者が実際に襲われたのは獰猛な犬……というよりも狼。いや、獅子と蛇だったか。審神者は押し寄せる疲労の波に浚われつつ、押し付けられる二振の重い愛に押し潰されていった。
「僕達は主だけの忠実な犬だよ。君を怖いものから守ってあげる」
「ああ、君によく躾けられた君だけの犬だ。たくさん可愛がってくれ」
後日、審神者の元に一人の審神者が失踪したとの通知が入る。
しかしその通知文は審神者の目に触れる前に何者かにより消されてしまい、審神者がそれを知るのはまだ先の話であった。

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