ももももももも!(1/6)

身嗜みの延長のつもりだった。
最近ではそこを綺麗する女性も少なくないと聞くし、パートナーがいるなら尚更気を使う場所だ。動画サイトの早口広告で取り上げられることも多く(内容はどうかと思うが、ストーリー仕立てで進められるとなんとなく最後まで見てしまう)(すると、やたらその類の広告ばかりが流れてくるようになってしまい、嫌でも目にしてしまうようになった)、もしや今まで何もしていなかった自分は身嗜みとしてアウトなのでは……と気付かされてしまった今。
審神者は一人、シェーバーを片手に風呂場で立ち尽くしていた。
「かたち……、形を、整えるだけ……」
なんて、美容室でよく口にする言葉を自分に言い聞かせ、審神者はシェーバーを肌に滑らせた。あてた場所は腕や脚ではなく、臍の下。白い平らな腹を下って、ひっそりと生えた小さな茂み。
今までは下着からはみ出るようなら処理していた場所を、審神者は本格的に開拓しようとしていた。
「こ、怖……」
一人の浴場に声が響く。
下着から出ると言っても、股上の浅い下着を履いた時に気になるなと思ったら整える程度だった。本格的に整えたことのない場所に刃を入れるのは、かなりの覚悟が必要だった。しかし、審神者の躊躇いなどあっさり削ぎ落すかのように、刃は僅かな力で和毛を取り払った。
「わ……」
どこにも引っ掛かることなく刃が滑り、白い肌が顔を出す。残った短い毛を整えてやれば、そこはいとも簡単につるつるとした場所になった。
場所が場所なだけに慎重に剃らなくてはと思っていたが、想像していたよりも簡単に剃れてしまった。むしろごっそりと剃れた事で勢いを得た審神者は、もう少しもう少しと、シェーバーの角度を変え、別の場所に刃を滑らせた。
「あ、あれ……」
そして形を整えるだけ、と剃り始めた場所は次第に白い肌の面積を増やし、自然な形になるよう刃を入れれば入れるほど茂みは薄くなっていく。
やがて、あれほどあったはずの和毛は跡形もなくなり……。
「こ、こんなはずでは……!」
と焦った審神者がシェーバーを持ち替えた瞬間。
「アッ、アダーーーーッ!!」
なんとも情けない声が、一人の浴場に響き渡ったのであった。

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