馬鹿だね、(2/3)
緊張でもう何も言えないのかガチガチに固まったなまえを抱えて寝室に入る。一緒に寝ることはあったがそういう行為をまったくしなかったこの場所が改めて新しい存在意味を持つ。ベッドにゆっくり降ろしてやれば緊張という別世界から返ってきたなまえがはっと息を飲んで俺の顔を見た。なんだよ、と見返せば何がしたいのか、顔を見るなり赤くなりやがって、何とも言えない気分が俺を襲う。
「ここまで来て恥ずかしがるなよ…」
「だって…!だってだって…!!」
そんな反応されたら俺も恥ずかしくなりそうだ。なんで10も離れてる小娘同様のやつにこんなに惑わされなきゃならねぇんだよ、って、ただの小娘じゃないからだ。小さな顔を覆うこれまた小さな手を掴んで離せば真っ赤な顔をしたなまえがいて、俺は吸い寄せられるようにキスをした。柔らかい。脳内で甘さを感じる唇。自分の片膝をベッドに乗せ、少しなまえに乗りかかるように唇を重ねた。何度も重ねて、角度を変えて、呼吸を交えて。小さく開いた唇の隙間に自分の舌を捩じ込んでその中に潜む小さな舌を探る。呼び出されて出てくるも控え目に現れたそれをすぐに拾い、舌先でなまえを感じる。きゅっと掴まれた胸元にあるなまえの腕を取り、自分の首後ろに回させる。すると俺とコイツの距離はぐっと縮まり、もっと深いものとなる。
「……ふ、」
一通り舐めて食したなまえの唇を最後に甘噛みすれば小さな音が唇と唇の間で鳴った。キスの最中閉じていたなまえの瞳がゆっくりと開かれ、いつもと違う濡れた瞳に腕に鳥肌が立つ。大丈夫だろうか、最後まで俺は紳士的に事を済ますことができるだろうか。努力はしようと思うが、俺の中の細い線はいつまで持つだろうか。久々も何も、アルマに心配されるくらい、こういう行為は久し振りなのだ。一人ですることはあっても、相手がいるのといないのではまったく意味が違うし、目の前の女が好いてる女なら尚更。
「………っ」
濡れた瞳をこのまま見ていたらどうにかなってしまいそうで、俺は誤魔化すようになまえの耳に噛み付いた。柔らかい耳朶を噛めばびくりとなまえが震えて、あと一歩で声が出そうになっていた。正直、そんな声にならない声だけでも熱くなりそうだ。つい出てしまった息が耳にかかって擽ったかったのかなまえは身じろいだ。
「う、耳、くすぐった…」
「………………」
擽ったいというその言葉も、いつまでもつか。というかいつまでも擽ったい思いはさせねーよ。耳から唇を移動させて、頬に顎に首筋に小さくキスを落としていく。彼女に触れたいという自分の体は本当に素直で、撫でるように肩に触れている手はゆっくりとその先の膨らみへと移動している。その手が鎖骨あたりを撫でた時だ。はあ、と妙に艶のこもった息が聞こえて生唾を飲んだ。ああ、早く、喰ってしまいたい。
「っ、」
手はそのまま順調に進路を進め、なまえの胸に触れた。自分の手にすっぽりと収まったそれは布越しでも柔らかさが伝わる。呼吸をするたびゆったりと上下するそこは一体どんな色をつけて色付いているのだろう。…思考がだいぶ変態臭い。久し振りだから、コイツだからきっとそうなんだ。そうに違いない。
「自分で脱ぐか?」
「えっ…!」
「冗談だ。」
布越しの胸を堪能してなまえの服に手をかけてそんな事を言えばなまえは泣きそうなくらい顔を歪めた。…別に脱いでもらっても構わないが、今日は俺が脱がせるつもりだからとは言えず、びっくりした顔のなまえを見詰め返せば下唇を噛んだなまえはこう言った。
「…いじわる…。」
一瞬すごく上り詰めたテンションを必死に押さえ付けた。なんだコイツ。人が懸命に自我と戦ってんのに関わらず言いたいこと言いやがって。
「俺からすればお前の方が意地が悪い。」
「そんなこと…!」
「うるせぇ。」
少し強めに言った言葉はキスでフォローした。小さく重ねればなまえは複雑そうな顔をしていて、もう一度キスをすれば納得してないがもういいとばかりに拗ねていた。そんななまえに苦笑しながら、ゆっくりとなまえの服を脱がした。目の前に晒される真っ白な肌には眩しいという表現が合っている気がする。服の下にあるものだから仕方ないにも関わらず綺麗な肌はとても白い。
「い、いややっぱり無理はずかしい!!」
「………あ?」
そんななまえの肌に見惚れていたのに本人は俺の視線に耐えられなかったのか脱がせた服を掴んで胸元を隠しベッドにうつ伏せになった。ぼふんと揺れるベッドに俺の体は上下し倒れそうになるもうつ伏せになったなまえの脇に手をついて堪えた。そうすると、今度は目の前に白い背中が晒されるわけで。
「背中ならいいのかよ…。」
「い、幾分かは…!」
「そうか、そういう事ならそれでもいいが。」
馬鹿な奴。背中の方が、逆にそそる。白くて薄くて、指を這わせればほら、すごい滑らかだ。
「っ…!」
「動くなよ。背中ならいいんだろ。」
「なっ!…〜〜〜〜っ!」
つう、と背中の真ん中に指を滑らせればなまえの肩に力が籠もる。途中で胸を覆う下着が俺の指の邪魔をするが、指先で弾けばあっけなく外れた。うつ伏せによって隠された乳房が脇からふるっと見えて早く触りたいと思った。いや、正直なところ鷲掴んでやりたい。でもそれはなまえも驚くだろうし、ちゃんと順序よくやってやりたい。そう思って身を屈め、背中にキスをする。思った通りぴくんと動いた肩に笑みが漏れてしまう。そのまま背中のいたるところに唇を付けては音をたて、または舌先で擽っていると肩に力の入ったなまえとベッドの間に隙間ができる。俺はもうなまえに軽くのしかかった状態で、そこに手を入れた。
「……ひゃっ、」
背中に唇を寄せつつ、両手にはなまえを抱くように胸に触れていた。やっと触れられたなまえの胸は心臓がどくりと脈を打つ程柔らかく、指先に吸いついた。手の平に当たる胸先が愛らしくぴんと立っているのがわかって、ゆったりとその先端を撫でた。
「あっ、や、だぁ」
「痛かったら言えよ。」
まだ触れているだけなのだからそれはないと思うが一応と掛けた声になまえは首を振った。後ろからで表情は見えないが、なんとなく想像できて、ちゃんと見れないのが悔しい。指先で先端をくりくりと苛めながらも胸の柔らかさを楽しむ。柔らかくて手が気持ちいい。
「…っ、ん」
「なまえ、こっち向け。」
「やぁ、は、はずかし…、」
「キス、できないぞ。」
胸に触れながらも肩先にちゅ、と音をたてればなまえがゆるゆるとこちらを向いた。少し乱れた髪は艶っぽくて余裕のあるキスなんて吹っ飛ぶ。どうする、ものすごく誘惑されている。キスを求められる唇に、何も考えずにしゃぶりつきたい。年上とか、優しくとかそういうのを全部吹っ飛ばして。キスして、もっと色んな場所に触れて解して喘がせたい。善がらせたい。
「ん、んぅ、」
激しく合わさる唇と唇になまえの体が捩れ、その態勢を借りてうつ伏せからこちらを向かせる。一瞬だけなまえは小さく抵抗したが、もうそれに付き合うのも終わりだと言いたい。キスをして、真下にあるなまえの白い裸体を眺めた。
「っ…」
「………」
脱がせた服と下着を慌てて抱き抱えたなまえに、一瞬ものすごくがっついた自分が落ち着いた気がした。苦笑して、頭を撫でればなまえの腕の力は失せた。
「もういいだろ。」
「だって、すごく恥ずかしい…」
「俺しか見てない。」
「ユウだからだよ…っ」
「俺以外ならいいのか?」
「それもイヤ!」
「……何が言いたいんだよ。」
「恥ずかしいっていいたいの!」
「それは……、もう諦めろ。」
「っ、あ、ま、待って駄目!っん、ぁ」
恥ずかしい恥ずかしいを繰り返すなまえにそんな事を言ったらいつまでも次の段階、ましてや最後まで行くのにどれほどの時間がかかるのだ。俺はなまえの腕を取って、ぴんと主張した先に唇を寄せた。舌を使って舐めればなまえからは甘い声が出て、ぞくっとした。もっと、と思った自分の手はもう片方の胸に触れていて、唇も手も柔らかい感触を味わえて、なまえの香りがして、思い切りそこに吸いついた。
「んんっ、ん、」
熱い。体が。
堪らず上着を脱ぎ捨て、ついでにベッドの脇に散らばってるなまえの服も下着も床に投げた。前髪を掻き上げて、さぁ再開するぞとなまえを見下せば、そこにはじっと俺を泣きそうな目で見上げるなまえがいた。
「…なんだよ…。」
と言えばなまえは信じられないとばかりに首を振って顔を覆った。
「ずるい、ユウはずるいよ…」
いやいやと顔を真っ赤にして首を振るなまえに、ずるいのはお前の方だと言いたくなる。ばか、お前が可愛すぎて俺は余裕がない。