メリーゴーランド(2/2)

記念日を過ごそうとしていたらしい。
女性の友人が最後に聞いた言葉で、二人の最後を知る。
あら、まあ、可哀想に。
仲睦まじい二人の記念日に事件が起こるなんて、何もそんな日を狙わなくても。と、ネットで見かけたニュースを流し見る。
「どうした」
すると、私の隣で書類整理をしてくれていた膝丸が顔を上げた。生真面目な性格がデスクワークに向いているらしく、何かと事務処理の手伝いをお願いしてしまうのだが、膝丸はいつも快く引き受けてくれて助かる。
「うん。こっちに来る前に住んでた場所で、行方不明者が出たんだって。男女二人。歳も私と変わらない」
「それは物騒な話だね」
膝丸の反対側で、髭切が眉を顰める。
こちらは膝丸と違い、特に手伝いもしないのだが、何故だかよく私の執務室に入り浸る。きっと弟がこちらにいるのと、執務室の日当たりがいいからついでに付いてくるのだろう。
「記念日を過ごすはずだったらしいって記事に書いてあったの。しかも失踪した日が、三人で遊園地に遊びに行った次の日なんだよ。なんだか可哀想で……」
見ず知らずの男女二人ではあるが、自分達が遊園地で遊び回った翌日に行方が知れなくなったと聞いてやけに可哀想に思えてしまった。私はふたりからお土産に買ってもらったメリーゴーランドのオルゴールを手に取り、行方不明となった二人のためにネジを廻す。
オルゴールは昔流行ったヒットソングを鳴らしながら、ぐるぐる、ぐるぐると廻り出す。記念日を過ごそうとしていた健気な二人が無事に見つかりますようにと祈りを込めて、メリーゴーランドのおもちゃを見詰める。すると寄り添うようにして、髭切と膝丸が私の肩を抱いてくれた。
「見ず知らずの二人に心を痛めるなんて、君は優しいね」
「優しい君が祈るんだ。きっと見つかるさ。……きっと」

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