桃ぱふぇ(2/2)



***


「――主、出掛けるのか?」
「うん。髭切と桃パフェを食べに行くの」
出掛けの格好で廊下を歩くと、それを見掛けた膝丸に声を掛けられた。楽しみしていた目的を告げると、膝丸は「それはいいな」と頷いてくれた。
「この間兄者が絶賛していたところだな。桃は邪気払いや夏バテにもいいから、兄者に言ってたくさん食べさせてもらうといい」
「一個でお腹いっぱいになるよ……」
気持ちは嬉しいが、たくさん食べるものでもないだろうと苦笑を浮かべる。
日除けを忘れずにな、と日傘を渡されて見送られたあとに、玄関で髭切を待ちながら審神者は膝丸の言葉になるほどと思った。
桃が邪気払いや夏バテにきくという話に、昔の人は目に見えない厄災や病を鬼と例えていたから、桃が邪気を払うものとして伝わったのかもしれない。栄養価も高く、食物繊維もビタミンもまとめて取れる桃を邪気払いとして頂くのは、なるほど理にかなっている。
「やあ、待たせたね。行こうか」
鬼退治の話と結び付くわけだと一人納得していると、少し遅れて髭切がやってきた。白練の軽装を身に纏い、カンカン帽を携えて現れた髭切は実に涼しげだった。
「膝丸がね、桃は夏バテにいいって言ってたよ」
先程膝丸から聞いたことを話せば、下駄を履きながら髭切が「へえ」と顔を上げた。
「……ああ、だから僕は毎年夏バテ知らずだったのかな?」
「……?」
隣に立った髭切がじっとこちらを見詰める。その眼差しに審神者が首を傾げてみせると、空いた手を取られ、軽く引き寄せられた。よろけるようにして目の前の胸にぶつかれば、腰を抱かれ、耳元でそっと髭切が囁いた。
「――いつも美味しい桃を頂いているからね」
「!」
その後、桃パフェを食べに出掛けたふたりはひぐらしが鳴く夕刻に戻るのだが、つやつやとした表情の髭切に手を引かれた審神者が、何やらぐったりとした様子で引きずられるさまを膝丸はなんとなく申し訳ない気持ちで出迎えた。

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