ノーダウト(2/3)

***


ホテルの一室。
懇親会に参加したものへ用意された部屋の中で、一人の男が一人の娘へ口付けを強いていた。
「ひざま……んっ」
男は部屋に娘を押し込むなり、娘の体を扉へと張り付け、小さな顎を取って唇を押し当てていた。
鍵を閉め、チェーンロックをかけた扉と自身の体で娘を挟むようにしている男は膝丸で、それに押し潰されている娘はその膝丸の審神者だ。
「……ん、んっ……待っ……ひざまっ……」
息をする間も与えられない口付けに審神者が辛そうにしつつも、膝丸がそこから唇を離すことはない。
(ああ……。べたべたと、忌々しい)
何故なら、会場内で向けられた男達の視線が、まるで手垢のように審神者の体へとこびりついていたからだ。
と言っても、実際触れられたわけではないので常人からは手垢など見えはしないのだが、膝丸には自分以外の目が審神者へと向けられた跡をはっきりと見ることができていた。
(如何わしい目で見られていたから尚更だ。可哀想に)
膝丸は至る所につけられた跡を拭い取るため、審神者の体を撫でまわしては、塗り潰すかのような口付けを続けていた。
「んっ、ん……っ」
(まったく、何が懇親会だ……)
押し付けられる唇を懸命に受け止める審神者を見下ろしながら、膝丸はここに来るまでの事を思い出していた。
そう、つい一月前のことだ。
『審神者懇親会』なるものの存在を、審神者の口から聞かされたのは。
(これが行くと言うからついてきてやったものの、本当にくだらない)
『審神者懇親会』とは、政府が審神者に対し、日頃の慰労を込めて開催するお食事会というものらしい。
その知らせは、ご丁寧にも刀剣男士では確認することができない審神者専用通達で案内がきていた。まるで、審神者を心配する刀剣男士を遠ざけるように届いた案内に、審神者の恋人である膝丸が眉をひそめたのは当然だろう。
(そんな事で俺が通知を見逃すとでも。それとも、政府の奴等に試されたか……?)
開催時刻は夜。『参加、不参加は自由ですが、できればご参加ください』と通達の最後を締めた一文は自由参加という名の強制参加を匂わせていて、審神者はそれを見て行くと決めたのであろう。
しかし、ただの懇親会を夜に開催する意味はあるのか。自由参加としつつ参加に協力を求めるなど矛盾しているし、参加者のためにホテルが用意されていることも胡散臭さしかない。
宿泊施設が用意されているのは、懇親会を心行くまで楽しんで欲しいとの配慮であろうが、膝丸にはどうぞお持ち帰りしてくれと言っているように見えた。というより、実際そうなのであろう。
(懇親会とは名ばかりの、審神者と審神者の婚姻による次世代の審神者産生が狙いか)
此度の会でそうならずとも、行き着くところはおそらくそれであろうと膝丸は考えていた。
純粋な審神者は、何か裏がありそうだと参加を引き留める膝丸へ気にし過ぎだと言っていたが、先程のあれはなんだ。審神者を前にして鼻の下を伸ばす男に、結局考えた通りではないかと膝丸は辟易してしまった。
「ん、……ふ、あっ」
膝丸は、良くも悪くも清らかな審神者の体をまさぐり、身体中に残された跡を払い落とす。細い腕を擦っては撫で下ろし、指先で線を引くように薄い背中から腰へと手を滑らせる。
「んっ、んんっ」
べたべたと残る手垢を丁寧に擦り落としていると、触れる膝丸の手から審神者がむず痒そうに身を捩った。膝丸の手から逃れようとする審神者に、綺麗にしている最中だ、動くな、と膝丸は滑らせた指先で審神者の尻を掴んだ。小ぶりな尻朶へ指先を埋めれば、審神者のきつく閉じられた唇から可愛らしい声が溢れる。
「……ぁっ! ん、んぅ!」
もちろん、その隙を逃すわけがない膝丸は開いた口へと舌を差し入れ、審神者の舌を絡め取った。開けろと唇の合間を舐めていた舌がするりと口内へと入り込み、審神者の舌は阻んでいた闖入者に逃げ惑う。膝丸の舌は逃げる審神者を捉えては優しく舌先を擦り合わせ、口内に鈍い痺れをもたらす。
「んんっ、んっ……」
膝丸の指が小さな尻をやわやわと揉みこみ、蠢く指と舌に審神者はパンプスの中で足の指を丸めた。じわじわと体を支配されていく感覚に閉じた目の奥がくらくらとしだし、審神者はしがみ付くように膝丸の腕を握った。
「……そう、よく握っているんだ」
ぎゅっと握れば、膝丸の唇が合わさったまま囁く。いい子だ、と撫でるように触れた膝丸の唇からぞくぞくとした何かが審神者の全身に行き渡り、重なる唇、直に伝わる甘い声の振動に目眩は一層強まる。審神者は握る手の力を強めた。
「普段も大人しくそうしていればいいものを」
膝丸は縋るような審神者の手に小さく笑みを浮かべ、おびき出した幼い舌を吸い上げるようにして唇を離した。
「あ、ふぁっ……」
快楽を誘うように唇を食みながら離すと、ゆっくり離れた唇と同時に審神者が脱力した。
「ん……く、……は……」
膝丸が崩れた体を支えるよう抱え直すと、審神者は空気を飲み込むようにして息を詰めては吐き出し、浅い呼吸を繰り返す。ぽってりと膨らんだ唇の隙間からは赤い舌が見え隠れしていた。
唇を離したものの、見下ろした審神者は未だ唇を重ねているような気分にさせられる。薄っすらと施された化粧は膝丸のためではないのが悔やまれるが、化粧で一層艶めいた表情を魅せる審神者を膝丸は見詰め、濡れた唇を親指で拭う。口端から零れそうになっているどちらのものかわからない唾液を指で押し込み、赤く色付いた唇がそれを受け入れ、喉がこくりと上下するのを見届けた。
「………………」
それを見ていると、再び審神者にしゃぶりつきたいと唇が疼き、膝丸は己の欲望のまま顔を寄せた。
「ん……、ま、待って、膝丸……」
「待たん」
休みのないそれに審神者が顔を背けた。膝丸はそれなら、と頬擦りをする。大勢の目に触れた審神者に少しでも肌を合わせていたくて、自身の匂いをつけてこれは自分のものだと示すよう、犬猫のように体を擦り寄せた。
「……きゅ、急に、なに……?」
意地でも触れ合っていたいとばかりに体を押し付けてくる膝丸に、審神者は待ってくれと肩を掴んだ。引き離された体に膝丸はむっと口を引き結び、ほんの少しだけ顔を離してやっては審神者へと不満げな顔を見せた。
「……男達の視線が君へとへばりついている。不快だ」
急に何、と言われたが、急ではない。膝丸はここに来てからずっと、いや、来る前からずっとこの会へ参加することを反対していたのだ。到着してからはやはり予想通りとなった展開に、膝丸は審神者を早々に下がらせたい一心だった。全くもって急ではない。
「視線……? へばり……?」
しかし、何の話だと不思議そうにする審神者に膝丸はますます眉間に皺を寄せ、支えた腰をぐっと自分の体へと抱き寄せる。無垢な瞳に自分を映し、よくよく言い聞かせるように頬に手を添え、顔を膝丸へと向けさせた。鏡のように煌めかせた梔子色の目に、審神者を映す。
「べたべたと不躾に見ていた。会場にいた男達が、君を、俺の居ない隙に」
「そんな……。め、珍しかっただけだよ、滅多に顔を出さないから」
「………………」
違う、あれは珍しいものを見る目ではなかった。少なくとも、勝手に審神者へと話し掛けていた男など膝丸が離れているのをいいことに酒をすすめていたではないか。
膝丸は頬に添えた手を細い首へと滑らせ、柔らかな線を描く胸を通っては審神者の腰を掴む。手を回せば簡単に指と指の先が届く細腰を両手で抱き寄せ、膝丸は膝丸にしか見えない男達からの視線に顔を顰めた。
「こんなにも視線の跡をつけてそんな事を言うのか、君は。……俺を怒らせるのが上手いな」
「……膝丸、怒ってるの……?」
静かに発した言葉に審神者の表情が曇った。不安そうにこちらを見上げる審神者の腰を掴んだまま、膝丸は審神者の耳の付け根へと唇を寄せる。皮膚の薄い場所を選んで吸い付けば、小さな体はびくりと身を縮めた。
「こんな会に連れてこられて俺が怒っていないとでも思っているのか?」
「…………っ」
声を低く落とし、耳元で囁いては小さな耳を軽く齧った。
「こんなくだらない会のせいで君が他のものの目に触れた。君に触れていいのは俺だけだといつも言っているだろう」
言い飽きたとばかりに少しだけ苛立ちを滲ませて言えば、審神者の体が僅かに強張る。怖がらせたいわけではない膝丸は耳朶から唇を滑らせ、少しだけ腰を折っては緊張をほぐすように首筋と顎裏に口付けた。押し当てた唇と共に、は、と苦しげに息を吐いた審神者を扉へと押し付ける。
「――君が何処にも行けないよう、足を奪ってやろう」
二度とこんな会に参加できぬよう、自由にどこかへ行ける足など奪ってしまえばいい。
胸の合間に顔を埋め、視線を絡ませると審神者の喉がひゅっと小さく鳴いた。
膝丸は審神者の頬に、怯えるな、と唇を押し当てては、その場で膝を折り、足元へと屈んだ。丸まった審神者の足先からパンプスをそっと脱がせ、膝をついた自身の腿の上にそれを乗せる。
「この白い足に、どれだけの跡がついたと思う」
ほっそりとした白い足を膝丸の手が足首から脹脛まで優しく撫で上げる。白い足を撫でる膝丸の手は黒い手袋に覆われ、それが審神者の足へと触れると白を黒く塗り潰しているようで見ていてたまらなかった。僅かな肉しかついていない足へと頬を寄せ、審神者を見上げる。
「皆が目で追っていたぞ。この白い足を」
「……っ」
頬を寄せた場所から唇をあて、軽く吸った肌はすぐに紅い花を咲かせた。膝丸はその花を眺めては、その隣に一つ、もう一つと吸い付き、紅い花を散らしていった。
「ひ、膝丸、やめて……」
足に口付けられるだけではなく、膝丸の足の上に自分の足を乗せるという申し訳なさと恥ずかしさに審神者は足を引っ込めようとしていたが、引いた足は膝丸がしっかりと掴んでいる。
膝丸は審神者の抵抗など構いなしに膝裏を取り、脹脛から太腿、太腿の内側へと唇を滑らせた。
口先で肌を食むように吸いつつ、先へ先へと這い上がっていけば、徐々に審神者のスカートの裾が捲れ上がっていく。このままでは下着が見えてしまうと審神者は裾を抑えようとしたが、膝丸の舌が太腿の裏側を舐め上げ、その手を宙に浮かせた。
「やっ、ん……!」
裾を抑えようとした手は、突然ねっとりと舐めてきた舌により着地点をドアノブへと変えた。同時に、かくんっと審神者の膝が折れかける。
「しっかり立っていろ」
ドアノブを掴んだおかげで審神者はなんとか姿勢を保つことができた。しかし、しっかり立っていろと短く告げた膝丸へ、そんなところを舐めなければしっかり立っていられる、もっと言えば人の片足を掴んでいてよくそんなことを言えるな! と審神者が睨めば、膝丸はそれがどうしたとばかりに腿の裏側へと頬擦りした。
「言っただろう。俺は、怒っている、と」
怒っていると口にしつつ、膝丸は審神者の足の付け根へと優しく口付けた。
それから舌をじっとりと這わせては、皮膚を引っ張るようきつく吸い上げた。
「痛っ……」
軽く歯を立てたせいで審神者の顔が苦痛に歪んだが、大きな花が紅く色付くまで唇は離れなかった。長く、熱く、時折舌でちろちろと舐めれば、痛々しいくらいに大きく、紅く色付いた花が白い腿でひらいた。
「これは、俺の元から離れた仕置きだ」
「……し、おき……?」
紅い花の痕を膝丸の指がつうと撫でる。
覚えのない仕置きに審神者は怪訝そうに顎を引いた。
「そうだ。そして、これは俺の居ない間に他の男と言葉を交わした罰」
膝丸はそう言いながら掴んだ足を高く持ち上げ、審神者のふっくらとした丘へ顔を埋めた。
「ん……っ!」
スカートの中に隠されていたなだらかな丘を膝丸が下着越しに口付ける。
「あっ、ぅ……っ」
足の付け根まで触れて触れないわけがない柔らかな秘所を膝丸の口がぱくりと食む。布越しではあるものの、突然押し当てられた唇と舌に審神者の体へぬるい刺激が走る。ぞわりと駆け巡ったそれに、なんとか堪えていたはず蜜が奥から零れ出たのを審神者は感じた。
「ひ、ざまる……っ」
とろ……、と溢れた蜜を気取られたくなくて腰を浮かせるも、膝丸の舌がそれを追い掛けては審神者の花芯を探り出す。
膝丸の舌のせいか、それとも自分か、下着がじわじわと濡れていく感覚に審神者はスカートを抑えては弱々しく首を振った。膝丸はそれを見上げ、見せ付けるように舌先を尖らせては下着の染みを広げる。
「ん、んん……っ」
温かくて、熱くて、そこから蕩けそうな感覚に審神者はひくひくと体を震わせる。
「……濡れてきた」
膝丸の舌は、既に審神者の甘い蜜を捉えていた。今ここで吸い取ってもいいのだが、ここまでくれば布を隔てるのではなく、直接柔らかい審神者の花弁に唇を寄せたい。
膝丸はそこから唇を離しては、下着の色が変わった場所に指を置き、なお色を広げるように指を動かす。唇から指へと、審神者へ触れるものを変えれば、ぬるぬると下着が動くのが伝わった。
「……っ!」
「中が潤んでる」
「あっ……、ひ、膝丸が、舐める、から…………っ」
からかうような目を向ければ、審神者は咎められたように視線を反らしては頬を染めた。懇親会用に纏められた髪から覗く耳が赤く染まり、膝丸の嗜虐心を煽る。
「俺が? 俺が舐めたから下着が濡れたのか? それとも、俺が舐めたから君が濡れたのか?」
どちらだ? と問い質すように指を動かせば、中の花弁が蜜をまとってゆっくりと開いていく。花弁に隠された芽を探しあてていると、薄布の奥から可愛らしい音が聞こえ始める。
「あっ、いやぁ…………」
「いやらしい音だ」
「…………っ」
わざと辱めるような言葉を選べば、審神者は丸い目が見開いては唇を噛み締め、じわりと涙を滲ませた。薄い涙の膜に膝丸はいとおしそうに目を細め、腰をあげて審神者の首筋へと顔を埋めた。涙を浮かべた審神者を慰めるよう、穏やかな口付けを細い首に施しつつ、審神者の肌に紅い花を一輪、また一輪と咲かせていく。
「俺のせいにすればいいだろう」
俺のせいだと言え、とばかりに押し付けてくる唇に、審神者は潤んだ目を向けた。
涙できらきらと輝く目に膝丸は眩しそうにし、審神者の言葉を待った。首元、胸元に散りばめられた紅い花は膝丸の独占欲を露わにするよう濃い色を発しており、こんな状態ではもう会場へと戻れないだろうと膝丸は密かにほくそ笑む。……戻すつもりも無かったが。
しかしそんな膝丸の胸の内を知らない審神者は、細い睫毛を震わせ、躊躇いがちに膝丸を見上げた。
「ど……、どっち、も……」
「………………」
疑うことも、誰かのせいにすることも知らない純情可憐な審神者が膝丸の加虐心を擽る。審神者の口からいやらしく自分を責める言葉を待った自分がひどく滑稽だ。膝丸は手袋の先を噛んでは乱雑に脱ぎ捨てた。そして審神者の下着を腿までずり下ろし、無防備となった柔らかな場所へと指先を向けた。
「……あっ、あぁ…………っ」
淡い茂みを掻き分け、指の腹でひたひたと敏感な部分を叩くと、審神者が膝丸にしがみ付いては頬を胸に押し当てた。軽く触れただけだというのに、審神者は小さな唇からはあはあと短い息を吐き出しては体を震わせていた。
「んっ、く……」
膝丸は与えられる快感に耐えようとする審神者を見下ろし、花芯を撫でては濡れた花弁の合間へと指を滑らせる。唇を引き結んだ審神者にいつまで持つかな、と笑みを浮かべつつ、蜜を溢す入口へと指先をあてる。
「……は……んっ」
腕の中で審神者が息を詰めた。縋られる腕でそれを感じつつも、膝丸は入口に指を添えるだけで、その先の隘路へと進みはしなかった。
「……っ」
とろとろと蜜を溢す蜜壺の蓋をするように指をあて、ぴくりとも動かない膝丸を審神者が見上げる。すぐそこにある快感を前に突然動きを止めた膝丸に、審神者は置いて行かれた子供のような心細い表情をみせた。たっぷりと微笑む膝丸に審神者の顔がくしゃりと歪む。
「ひ……――」
不安そうな顔がこの上なく可愛いと見下ろす膝丸へ、審神者が焦れた声を上げかけた時だ。
『――……はー、何で懇親会なんてきたんだろ、俺……』
扉の向こうから、にわかに人の声が聞こえてきた。
『何でって、自分で行くって決めたんだろう?』
この先を通ろうと近付いてくる声に審神者が膝丸の腕の中で身を固くさせた。
聞こえてくる声は何処かで聞いたような声で、すぐにそれが会場内で声を掛けてきた男審神者のものだと気付くのに時間はかからなかった。
部屋の扉を隔てているものの、行っている行為が行為ゆえに審神者の体に緊張が走る。扉を閉めているのだ、懇親会を抜けてこんなことをしているなどと見付かるわけがないのだが、審神者の体はどんどん強張っていく。
(…………いいところに……)
せっかくのところに水をさされた膝丸は小さく舌打ちをし、腕の中で外の気配に怯える審神者をつまらなさそうに見下ろした。そして、膝丸を前に意識を余所に向ける審神者を引き戻すよう、小さな顎を取って口付けた。
「……っん……」
君の相手をしているのはこの俺だ、とばかりに俯いた顎を掬い上げ、唇を重ねる。きつく閉じられた唇を無理矢理開けさせ、歯列をなぞって舌を捻じ込ませた。
「ふっ、んぅ……っ」
すぐに唇を離そうとする顎を掴み、逃げる審神者を舌で追いかけ回す。顔の向きを変え、舌を深く差し入れ上顎をゆっくりと撫で上げれば、膝丸の腕の中で審神者がびくびくと震えた。
「う、あっ……」
ぎゅうと目を閉じた審神者を見詰めつつ、小さな口内をたっぷりと舐め尽くす。吐息を交わし、舌を舐めては唇を食む。唇の先を小さく吸い上げるように食んでやれば、甘く吸うたびに審神者の強張りがどんどん解れていく。膝丸の口付けに、いや、膝丸自体に意識を戻す……というより思考を奪われた審神者へ、膝丸は先程触れ損ねた中へと指を埋めた。
「――っ!」
小さな入口は指先が入るなり、身を竦ませるように口を窄めた。まだ入口だ、と唇を合わせたまま笑えば、ふっと唇にかかった息でさえ、審神者はびくりと反応した。
『あの膝丸まじで怖かったな……膝丸ってあんな刀だった? 俺のとこの膝丸めちゃくちゃいいやつなんだけど? なにあれ、個体差やば……』
『いやー、あの膝丸は格別だろ。纏ってる神気が他とは違う。別物だったじゃん』
『わかるかよっ。俺、お前みたいに本部に期待されるような有望審神者じゃねーもん! 懇親会始まる前だって、お前、なんか偉い人達と挨拶してたし?』
『挨拶だけだって。声掛けられただけ』
二人の男審神者の声が近付いてくる。真っすぐと向かってくる足音に再び審神者が息を飲み込むも、膝丸はすぐに引き戻すかのように埋めた指の先を中へと沈めた。
「んっ……ぁっ……」
くちゅ、と音をたて指が入り込んでいく。奥から零れ出た蜜の滑らかさを借りて指がくるりと動いては、引いて、また押し入ってきた。
「ぁ、ぅ……っ」
審神者は膝丸の腕を掴む手に自分の唇を押し当て、声を抑える。必死に声を殺す審神者に、このままでは辛いだろうと膝丸は埋めた指で薄い腹の裏側を撫でた。
「ひっ、ぁっ……っ!」
早く気をやらせてやろう、と膝丸の指が審神者の中を撫でる。柔らかい壁を撫でるたび、審神者の太腿がぶるぶると震え、体が崩れかけた。
「ひざ、まるっ……」
濡れた瞳で見上げる審神者のなんといじらしいことか。
膝丸はか細い声で助けを求める審神者へ唇を寄せ、唇が触れたまま「しー」と、幼子を静かにさせるよう囁いた。
「君の声が聞こえてしまう。静かに」
助けではなく、制止だっただろうか。見詰める眼差しがやめてくれと訴えていたが、中を弄る指の本数を増やし、その目を快楽に蕩けさせる。
「んっ……はぁ、はっ、ぁ」
蜜口を擦りながらも口付ける膝丸の唇に審神者の吐息がかかる。声を我慢している分、荒くなる審神者の息は膝丸の唇を湿らせ、膝丸は思わず自身の唇をぺろりと舐めた。審神者の息がかかった唇はどことなく甘く感じられ、吐息さえ甘いのか、と膝丸は湿った唇を舐め取った。
『……どうした?』
膝丸の指は今もなお審神者の中に潜り込んでいる。
そんな中、まさにこの扉の後ろで男審神者の声が聞こえた。すると、埋めた指先が奥できつく締め付けられ、審神者が膝丸の体へと抱き付いた。ぎゅうと体を押し付けてきた審神者に珍しいと目を見張るも、なんとかこの場をやり過ごそうと身を固くしている審神者に、まだ外の男達が気になるか、と膝丸は眉間に皺を寄せる。
膝丸はせっかく抱き付いてきた審神者の体を離し、扉へと押し付ける。引き離された体に審神者が悲しそうな顔をしたが、抱き付いてきてくれたのは嬉しかったが、その背景が気に食わん、と膝丸は足元へと屈んだ。
『おい、急に立ち止まってどうしたんだって……』
『いや……、随分と厄介な刀剣男士だと…………』
『……は?』
再び屈んだ膝丸は中に指を入れたまま、空いている反対の手でスカートの裾を捲り上げた。腹までたくし上げられたスカートに審神者はハッと瞬き、即座に抑えようとしたが、膝丸の頭を押さえればいいのか、スカートの裾を押さえればいいのか、一瞬迷った隙をつかれてしまう。
「ひ……、あっ……ん、んぅ……っ!」
膝丸の目が煌めいた。
同時に、審神者の一番敏感なところに膝丸の舌が触れた。
熱い舌が秘所へと埋まり、溶けるような熱さで審神者の花芯を舐る。
「あっ……く……っ」
花芯を口内に含んで転がせば、審神者の足が内側を向いてはぶるぶると震えだした。膝丸は太腿にかかったままの下着をするりと脱がせ、閉じようとする審神者の足を取ってはそこにしゃぶりついた。
「ひぁ……っ!」
強く吸い上げると、腰を浮かせた審神者が扉へと背を当てた。捩った反動で体を預けていた扉が音をたてる。すると、扉の向こうからその音を聞いた男審神者が声を上げた。
『うわっ、びっくりした……! え、なに、壁ドンならぬドアドン……? あ、俺らの話し声がうるさかったかな……』
審神者は片手で自分の口を抑え、もう片方の手で膝丸の頭を掴んだ。引き離そうとする審神者の手に膝丸は抵抗するなと舌先で突くように花芯を舐めた。
「ふっ、うぅ……っ」
見上げた審神者は目尻にたっぷりと涙を湛えては艶めき、頭から食べたらさぞ美味いだろうと膝丸は目を細める。もちろん、舐め取っている蜜も甘美であるので、埋めた指でまた新たな蜜を零すように奥を擽った。
「……君のこれは、すぐに溶けてしまう」
触れるとすぐに蕩ける蜜を惜しむよう、膝丸は審神者を執拗に舐め続けた。「もっと寄越せ」と我儘に強請る膝丸の舌使いに、審神者の手は力を失っていく。短くも柔らかな髪に審神者の指が絡み、優しく撫でられているような感覚に「もっと、もっと撫でろ、触ってくれ」と顔を埋めた。もちろん、撫でているわけではない審神者は強すぎる快感に飲まれ、急激に迫り来る絶頂へと導かれた。
「あ……っ、だ、だめっ……い、いっ……く……ん……――っ!!」
膝丸が取った足が痙攣し、中から甘い蜜が零れ落ちてくる。そうだ、これが欲しかったとばかりに吸い付けば、審神者はあっという間に高みへと押し上げられてしまう。
『……ていうか、なあ、ここ女性宿泊フロアじゃね?』
『え…………あっ、やべ! まじだ!』
『おい、しっかりしろよーフラれマン。男性フロアはこの二個上』
『エレベーターのボタン押したのお前な……! あとフラれてないし! 告ってもないからな! だからノーカンです……っ!』
階を間違えたと男達の声が足早に遠のいていく。
「……っ……」
声と足音が完全に聞こえなくなったのを待たずに、審神者の体が崩れ落ちる。ずるりと傾ぐ体を膝丸は優しく抱き留め、震える膝を見下ろしてはゆっくりと下ろしてやった。
汗が滲みだした額を撫でるように、指先で乱れた前髪を整えてやっては白い額に口付ける。ちゅ、と唇を押し当てれば、審神者は小さく唸っては払いのけるようにして膝丸の肩を押した。
「やぁ……っ、何、するの……、もう……」
信じられない、とすぐそこに人がいたというのに行為を続けた膝丸を審神者が睨む。涙を滲ませて睨む審神者も可愛い。膝丸は吸い込まれるように尖った唇へと唇を寄せようとしたが、寸前のところで両肩を押し返される。涙が落ちそうな目尻をつり上げて審神者が膝丸を見上げた。
「き、聞いてる……!?」
「聞いている。後にしろ」
「後にっ……、んんー!」
聞いてると答えても後にしろと言われてしまえば聞いていないのと同じだ。審神者がその返答にまた可愛く怒り出すのを膝丸は口付けで宥める。最初こそちゃんと話を聞きなさいと胸を叩かれるも、その手を取り、腰を抱けば、一度達した体はすぐに膝丸に屈服されてしまう。
「んぅ、ぁ……」
何度か触れるだけの口付けを与えれば、審神者の体はすぐに蕩けてしまう。与えられるままを受け入れる審神者をうっとりと眺め、取った手を自分へと引き寄せてはゆっくりと唇を離した。そのまま審神者を部屋の奥のベッドへと連れて行こうとすれば、細い手が膝丸の腕を引き留める。
「ま、まって……!」
思いの外、強い力で引き留められた手に何だと見下ろせば、俯いた審神者がひどく申し訳なさそうに頬を染めた。
握る手が強い。いや、重い。
「……た……立てないの……」
「………………」
「こ、腰に……力が、入らない…………」
膝丸の腕を取ったまま、審神者がかあ、と顔を赤くさせた。
「……………………ふっ」
「……っ!」
思わず笑ってしまえば、審神者はますます恥ずかしそうに顔を俯かせる。小さな体を更に小さくさせる審神者の顎を掬い上げ、審神者の目を覗き込む。それでも背けようとする顔に、膝丸は頬へと唇を押し当てた。
「問題ない。俺が君を抱えればいい話だ」
「……ひゃっ」
立てないという審神者を軽々と抱え、膝丸はベッドへと向かった。柔らかなベッドへ審神者をそっと下ろし、その上に覆い被さるようにして足を乗せた。膝丸が乗った分、重みでベッドが沈み、審神者の体がそちらへと転がりそうになる。しかし見下ろす梔子色の目が審神者を縫い留めた。
「それに、言っただろう」
乱れたスカートから覗く足を撫で、片方だけ残っているパンプスを脱ぎ落とす。
そして、まだ白いままだった片足を手に取り、新たな花を咲かせた。
「――君の足を奪う、と」
「……っ!」
ちゅ、と膝丸が口付けた。
膝丸の唇は審神者の脛へと寄せられ、足首、足の甲へと吸い付き、指先へと口付けた。
「あっ……いやぁ……っ」
力が入らないと言っていた審神者の足は、唇が触れた場所からひくひくと震えだした。いい反応だ、と膝丸は審神者の足を掲げ、頬擦りするように吸い付けば足先が可愛らしく丸まっていく。
足先さえ淡く色付いていく審神者の体は、膝丸によって塗り替えられていくようで興奮を誘った。あんなにも付いていた男達の視線の跡が、膝丸の愛撫によって消えては、違う色に染まっていくのだ。熱が高まる。
「……君がどこも行けぬよう、今度こそ奪ってしまおうか」
「……膝丸……?」
羞恥に肌を染める審神者につられたように膝丸の体も熱くなり、息苦しそうにジャケットを脱ぎ捨てた。そして首元の釦を何個か外しては大きく息を吐き出し、ベルトの金具を外して前を寛げた。呟いた膝丸の言葉を拾おうとして首を傾げた審神者の前に、大きく屹立した剛直を取り出す。審神者への愛撫と、それを受けて可愛らしい反応を見せてくれたおかげで膝丸の熱は怒張したように滾っていた。そそり立つ肉棒からは審神者を求めて涎が零れ出ており、膝丸はずきずきと痛みさえ感じるそれに手を添えた。
「あ……」
スカートを捲り上げ、突き付けた熱に審神者が怯える。硬くなった先で花弁を掻き分け、中から零れる新たな蜜を擦り取れば入口が小さくひくつく。それがまるでちゅ、ちゅ、と口付けられているように思えて膝丸を煽った。
「入れるぞ……」
恐れつつも、その先の快感に期待する審神者の目に膝丸の体がどんどん熱くなる。愉悦を教え込んだ体は膝丸の雄に怯えつつも、それがないと終われないと知って待ち望んでいるのだ。薄緑の髪から見れば、射止めた審神者が追い詰められたかのように息を詰め、濡れた瞳で膝丸を待っていた。
「うん…………あっ……ぁ……」
審神者が小さく頷いたのか先か、それとも膝丸の熱が入ってきたのが先か。硬い肉棒を隘路へと埋めると、審神者の目尻から溜まった涙が零れた。膝丸は涙が落ちる前にそこへと身を屈め、舌先で舐め取る。覆い被さるようすれば膝丸のものが審神者の奥へと押し入り、また新たな涙を誘った。
「あ、あぁ……っ」
苦しそうにも、気持ち良さそうにも息を吐き出す審神者の顔を覗き込めば、とろりと蕩けた目が膝丸を見詰める。は、は、と短く息をする審神者の唇に口付け、膝丸はゆっくりと腰を揺り動かした。
「んっ、あっ……あぁ……っ」
重ねた唇に審神者の嬌声が触れる。唇を震わせる微かな振動でさえ、突き抜ける程に気持ちが良い。膝丸は審神者へと口付けたまま、小刻みに奥を突いた。
「ふっ……ぁ、……ん、んんっ」
そのまま広げた審神者の足を取り、自身の肩へと掛けさせる。大きく開かせた足に剛直の先が更に奥へと沈んでいく。
「……っ! あ……っ!」
こつんと触れた最奥に、審神者の手がシーツを引き掴み、熱をきつく締め付けた。
「く……っ、……は、ここが、いいか……?」
悲鳴を上げたように締め付けられた膝丸は短く息を詰め、口端を上げる。顕著な反応を示されたら期待に応えるしかあるまい。膝丸は審神者の中に熱を押し込めたまま、残るシャツの釦を取ってはそれを脱ぎだす。汗で張り付いてきたシャツを鬱陶しそうに脱ぎ捨て、再度審神者の足を抱え直しては奥を貫いた。
「ひっ……あっ……やっ、だめぇ……っ」
ずん、と嬉しい反応を見せてくれた弱いところを突けば、審神者がシーツを握りながら体をくねらせる。膝丸は強すぎる快感に身を捩る審神者から服を脱がせ、肌と肌をぴったりとくっ付けるように口付けては手早く下着を剥ぎ取った。姿を現した審神者の胸はつんと先を尖らせ、誘われるようにその柔らかな膨らみへと指を埋めた。
「は……、あぁ……っ」
汗ばんだ膨らみは膝丸が動かした通りに形を変え、手の平を優しく満たしては肌に吸い付いた。触って欲しいと可愛らしく尖った先を引っ掻くと、審神者がそれに合わせて中を締め付けてくる。
「んっ……やっ、ぁ!」
「可愛いな……、こんなに、して。ずっと放って置いて、すまなかった」
もっとはやくに触ってやれば良かったな、と先を捏ねると中がざわざわと絡み付いてくる。奥を貫かれるのと、ずっと触ってもらえなかった胸を愛撫された刺激に審神者が耐え切れないとばかりに細い喉を晒した。
「んっ、ひぁ……っ、あ、あぁぁ……っ」
高い声が上がったのと同時にくりくりと先を弄ると、審神者が絶頂へと達した。
紅い花を散らした喉に膝丸はまた紅い花を重ね、簡単には消えないだろう痛々しい色の花を咲かせた。
首筋に吸い付く膝丸に絶頂の余韻を長引かされる審神者は、息も絶え絶えに膝丸の首へ腕を回した。回された細い腕に膝丸が顔を上げれば、審神者から甘えるような口付けをされる。舌を交わさない、羽が触れるような審神者の口付けは拙いものではあるが、何度も押し付けられる幼い唇に膝丸は頭が逆上せそうになった。
「ん……んっ……」
これ以上に心惑わす口付けがあるのだろうか。このまま口付けられ、死ねと囁かれたら喜んで死んでしまいそうだ。
膝丸は触れるだけの口付けに暴れそうになるのを何とか堪え、このまま繋がっていれば果ててしまいそうだと一度肉棒を引き摺り出す。
「あぅっ……」
ずるっと熱を抜けば、審神者から寂しそうな声が零れた。肌が離れるのが切ないと訴える審神者の頬を膝丸はいとおしげに撫でては、すぐに戻ると微笑んで口付ける。そして腰に残ったままの審神者のスカートを脱がせ、自身も脱ぎ掛けの袴を脱いでベッドの下へと落とす。互いに一糸まとわぬ姿となり、膝丸は審神者の体を抱き締めるようにして圧し掛かった。少しだけ重みを与えては審神者へと口付け、次は惑わされぬよう、自分から舌を絡める。
「は……、ん、く……ひざ、まる……ん」
しかし、僅かな時でも肌を離すのが寂しかったとばかりに、審神者から柔らかな舌で舐められ膝丸は息を上げてしまう。強い絶頂を迎えた審神者は与えられる快楽に素直になり、とろんとした目で物欲しそうに膝丸を見詰めてくるのだ。訴える眼差しに膝丸の頭の裏側がくらくらとしだす。目の奥をぎゅっと瞑り、欲しいのは俺の方だ、俺の方が数倍君が欲しい、と膝丸は審神者の背中に腕を回し、倒れるように横になった。
「腰を、上げられるか……? 少しでいい」
審神者の体を上にし、膝丸が審神者を抱きかかえるようにして仰向けとなった。膝丸へと覆い被さるようになった審神者はその体勢に少し戸惑った様子を見せたが、「はやく」と耳元で囁けばきゅっと肩を縮ませてはそろそろと腰を持ち上げた。
「ん、ん…………」
まだ熱を出していない、滾るばかりの肉棒を審神者がゆっくりと飲み込んだ。
「すまない……、良すぎて、我慢がきかん……っ」
しかし、静かに挿入される途中で耐えきれなくなった膝丸が下から突き上げた。
「ひあっ、あぁ……! い、いきなり……、だめぇ……っ」
ずくん、と審神者の体を押し上げれば強い衝撃に視界がぶれる。奥へと突き刺すような体位に審神者は膝丸へとしがみ付き、膝丸は審神者の細腰を掴み、下から最奥を抉った。ベッドのスプリングを借りて審神者を揺さぶれば、しがみ付く甘い声が膝丸の耳を擽った。審神者の嬌声と膝丸の息遣い、そこにベッドが軋む音が混じって淫猥な空気が満ちる。
「あっ、んっ、んんっ……」
膝丸の胸の上で審神者が僅かに背を反らす。下からの突き上げに審神者は為す術もなく、膝丸は喘ぐ審神者をきつく抱き締め、いずこへ行く気も奪うようにひたすら中を突いた。
「は…………、気持ち、いいな…………」
君もそうだろう、と揺さぶれば、既に膝丸によって思考も羞恥も奪われた審神者がこくこくと頷く。胸へと顔を埋める審神者へ、顔を見せなさいと奥を小突けば小さな悲鳴と共に乱れる顔を見た。
「やっ、あぁん……っ」
「ああ……可愛いな。どこにもやりたくない……」
せっかく綺麗に纏めた髪を乱し、膝丸が突き上げる快感に飲まれていく審神者は愛しさしかない。
膝丸だけがこれを許されているのだと思うともう、審神者の他の、どんな表情も誰にも見せたくなくて、独り占めというよりも誰にもその存在を知られないようひっそりと独占したくなる。
腰を掴んでいた手を審神者の尻へと移動させ、柔らかな尻を鷲掴む。小ぶりではあるが触り心地の良い柔らかい尻に指を埋め、肌をぶつけるように肉棒を出し入れさせた。
「あっ、あ、あぁ……っ!」
容赦なく中を抉れば審神者が声を上げ、肌を染める。審神者の肌が色付けば色付くほどその体を、心を手にしているようで膝丸の腰は止まらなかった。やがて審神者の中が膝丸へと絡み付き、限界が近いのを伝えてくる。見れば迫り来る絶頂に身を任せるように目を閉じる審神者がいて、膝丸は揺さぶって声を掛ける。
「き、み……」
呼んで律動を止めれば、熱に逆上せた審神者がのろのろと顔をあげる。力の入っていない表情が可愛いな、と思いつつ少し唇を突き出せば、蕩けた唇が迎えに行くようにぷちゅ、と重なり、膝丸はその柔らかな唇に酔いしれた。甘い唇を味わいつつ、ゆっくりとした動きで突き上げてやると、触れる唇から可愛らしい声が漏れる。
「んっ……ん」
「いきそうか……?」
「あ……っ、う、うん……っ」
「このまま……? それとも、もっと……?」
もっと、激しくして欲しいか? と唇を合わせたまま笑みを浮かべれば、審神者が首を振った。
「ん……、このまま、で、いき、そ……」
だからこのままで、と緩やかな快感を拾い集め、達しようとする審神者の尻を膝丸は揉みこむ。
「つれないことを、いうな……。共に、果てよう」
「……っ、あ、だ、だめ……っ」
「君と果てたい。頼む……」
頼むから何だというのだろうか。その後の言葉も思い浮かばず、膝丸は乞うように審神者へと擦り寄り、中を穿つ。再び激しさを増したそれに審神者が膝丸の肩に顔を埋め、揺さぶられる体が振り落とされないようしっかりと抱き付いてきた。
「あっ……い、いっちゃ…………ん、あ、ああっ……」
触れ合う肌と肌が熱い。しかしその熱さが気持ちいい。まるで体が溶けて混ざり合うようで、ただただ、審神者と一つになることしか考えられなくなった。
「ん、く、くる……、ひ、ああぁ……っ!」
「……っ」
膝丸の上で審神者の体がびくびくっと震え、その痙攣に誘われ膝丸は奥に熱を迸らせた。腹の奥に溜め込んでいたどろどろとした熱を審神者の隘路にたっぷりと注ぎ込み、中を自分で満たしていく余韻に浸った。
「は、ん……っ」
共に達した審神者の顔を寄せ、何度目かわからない口付けをする。浅く息をする審神者を待ちながら優しく唇を重ね、未だ痙攣の治まらない華奢な体を撫でる。するとその手を審神者が弱々しく引き掴んだ。
「あっ、な、なで、ない、で……」
「……ん?」
「び、びくびく、するの、と、とまらない、から……あっ」
最早震える刺激でさえ感じてしまっているのか。くったりと倒れ込む審神者へ膝丸は微笑み、乱れた髪を撫でてやっては中から自身を抜き取った。
「んっ、んん……」
ずるりと抜き去る感覚に審神者はぶるりと震える。全身の力が入らないのか、沈むように体を預ける審神者を膝丸はそっとベッドへと寝かせた。しかし審神者は小さく痙攣を繰り返しては蹲るように手足を縮め、燻り続ける快感に身悶えていた。
「俺のせい、かな……」
ゆっくりして欲しいと望んだ審神者を無視して激しく突き上げたせいか。それともここまで至るまで散々意地悪をしてやったせいか。膝丸は笑みを浮かべたまま、謝罪を込めて審神者の真っ白な背中へと唇を乗せる。
「うっ、あ……っ」
まだ印を残していなかった背中と肩に吸い付けば「ひ、ざまる……っ」と制止の声が飛んできたが、構わず薄い背中に痕を残した。
「あっ……」
背中に口付けているだけだというのに、小さく声を上げる審神者の声は艶を含んでいた。柔らかな肌に痕を残しつつそれを聞いていると、熱を吐き出したはずのものが再び硬く反り立ってくる。疼くように屹立していくそれを認めつつ、膝丸はそれを尻へと擦り付けた。
「ひっ……、え、え……っ?」
膝丸の方へと振り返ろうとした審神者を後ろから覆い被さって動きを封じ、膝丸の精と審神者の蜜が零れる蜜口へと剛直を埋めた。
「あっ、だ、だめぇ……っ」
弱々しい声が響く。その声がまた膝丸の肉棒を熱く膨らませた。審神者はまた訪れようとする快楽の波に攫われてしまうと手に触れた枕を引き寄せ、そこに顔を埋めた。
「ふっ、うぅ……っ」
「今度は、ゆっくりしてやろう……。先は、俺に付き合わせてしまったからな」
「い、いい……、お、終わって……っ」
「ゆっくりがいいんだろう? 君の、望むままに……」
「あっ、くっ……」
膝丸の形をわからせるほどゆっくりと入れては、奥を先で擽り、なるべく時間をかけて腰を引く。そうすれば、傍から見ても審神者の体がぞくぞくと震え、膝丸は愉悦に目を細める。
「あっ……あぁっ……」
「……この後、君はしばらく立てそうもないな」
身を屈め、擽るように耳元へ囁けば、枕へ顔を埋めた審神者が膝丸を睨んだ。
「だ、だれの、せい……っ」
審神者の目は膝丸を責めるようきつくつり上がっていたが、濡れた涙目では迫力も何もない。それでも膝丸はその目に嬉しそうにし、最奥へと体を沈めた。
「う、あぁ……っ」
体重をかけ、審神者の四肢を奪い、閉じ込めるように。
「そうだな、俺のせいだ」
膝丸は力の入らない審神者の体を枕ごと抱き締めた。そしてもどかしくて嫌になるほどゆっくりと抽挿を繰り返しては、審神者が気を失うまでその体を可愛がったのであった。
「あぁ、ひ、ぁんっ……! だめっ……、ひ、ぅっ」
「こら、まだいくな……。ゆっくりしてやっている最中だろう」

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