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 赤い糸(幸村)

指を動かすたびに目の端で振動にたびたび揺れる赤色に私は目を伏せた。

小指に結ばれている赤い糸が時々他の指に引っ掛かり煩わしい。

いっそのこと取ってしまおうかと糸に手を伸ばせば手を掴まれた。

「だーめ」

穏やかだけれどまるで逆らうことを許さないと言うようなその声に捕われてしまう。

優しげな声色なのに酷く甘くて甘美な声にクラクラして考えることを放棄させられそうになる。

口元に笑みを浮かべて楽しそうに笑う目の前の彼に私はただ降伏することしか出来ないのだ。

「……なん、で」

「何で?おかしなこと言うね、名前」

そんなの決まっているとでも言うようにクスクスと笑っている彼に不満があったが否定の言葉が出ることはなかった。

なんで互いの小指に赤い糸が結ばれているのかといえば私がいけなかったのだ。
運命の赤い糸なんてただのジンクスだと彼の前で漏らしてしまったから。

私の言葉に幸村は笑顔で互いの小指に赤い糸を結んで今に至る。

赤い糸は嫌でも目に入り、幸村がそっと私の指をなぞるたび身体が震える。

彼のしたいことが分からないまま私は黙ってその光景を見つめるしかない。

楽しそうに私の手を絡ませ撫でながら彼は悪戯っぽく笑って私を見上げた。

「分からないなら分からせるしかないだろう?」

「何…?」

「君は、俺のだよ」

「あ、…」

くいっと軽く糸を引かれればなすすべなく私の手は彼の元に引き寄せられる。

「いい加減自覚しなよ名前、俺からは逃げられないよ」

「ゆ、きむら…」

「この赤い糸みたいに切りたくても切れなくて、簡単に引き寄せられるんだよ俺達は」

残念なことにね、と楽しげに笑う幸村はとても綺麗で反論したくてもその言葉は声になる前に消えてしまった。

「俺が相手だと不満?」

小さく首を傾げて私の顔を覗き込む幸村に私も弱々しく首を横に振る。

不満なわけはない、だけど不安なんだ運命の赤い糸みたいな不確かなこの想いを繋ぎ止める術を私は知らない。

そう彼に伝えれば幸村はクスクス笑いながら本当に可愛いよね名前って、と呟かれ思わず顔を上げれば腕を引かれて抱きしめられた。

「馬鹿だなぁ名前…俺、名前に会ってから名前しか見えないんだけど?」

「は、え…?」

幸村に抱きしめられながら未だ繋がれる赤い糸を引かれて彼の手に掬い取られる。

そっと小指に甘い甘いキスを落として彼は優しく笑う。

「名前、好き」

その言葉を聞くだけで考えていたこと全てが馬鹿らしく思えた。

答える変わりに抱き着けばそんな私を彼は甘んじて受け入れる。

衝撃で糸は解けてしまったけど構わない。

きっと私達はこれでいい。


赤い糸
(繋がる先はきっと君)




幸村誕生日短編のつもり←
一日遅れたけど許して←←←え
かなり甘くしたつもりですがちゃんと甘いのかこれ…幸村のキャラが迷子なのはご愛嬌←←←



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