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 はて、私はゴリラに育てられたのだろうか(真田)

私のお父さんは凄い人だ。

昔はテニスで皇帝と呼ばれ強豪である立海テニス部で副部長をしていたらしい。

あの素敵で無敵な幸村さんと柳さんと並び三強とも言われとても強かったとも聞いた。

アルバムをめくりながらお母さんから聞いたお父さんの武勇伝に私はずっとお父さんを誇りに思っていた。

まあ、時々キェェエエエ!!って奇声上げるし、修業とか言って滝打たれに行くし、時代遅れでイマイチ機械類に弱いけどそれでも私はお父さんを誇りに思っていたのだ。


だが、もう限界である。


「名前、修業に行くぞ!!」

「行くかァァアアアっ!!」


ガシャーンとテーブルをひっくり返せばおじいちゃんが何すんじゃ!!って叫んでたがそんなもん関係ない、お母さんは慣れた様子でアラアラと頬に手を添えているが怒るおじいちゃんを宥めることも忘れないところは流石である。

しまった、今はそんなことを言っている場合ではない。

流石に今日という今日はガツンと言わなければ気が済まないのである。


「何で年頃の娘が親父と滝打たれに行かなきゃいけないんだよーっ!!」

「口が悪いぞ名前っ!!」

「誰のせいだバッキャローっ!!」


うがーっ!!と叫べば赤也のところにでも影響されたのか!!とよくわからないことを返すお父さんを睨む。

ちなみにそれは当たってたりするが絶対言わん、とばっちりは切原パパに行くだろうし彼があまりにも不憫である。


「いつも一緒に行ってるではないかっ!!」

「無理矢理連れて行くの間違いだろうがーっ!!」


なんだそのおめでたい悩内変換は、私は了承した覚えは微塵もないぞ。


「それに今日はゆっきーとやなちんと切原と遊ぶんだから!!」

「ゆっきーやらやなちんとは誰だ!!そんな奴ら聞いたことないぞっ!?」

「あんたのよく知る素敵で無敵な幸村さんと柳さんの子供なんですけどぉっ!?」


むしろ何で気付かないのっ!?と鈍いお父さんに叫ぶ。
今日という今日は言ってやる、と仁王立ちしてお父さんを睨み上げる。
スゥっと息を吸い込み私は目の前の鈍感なお父さんに物申す為私は口を開いた。


「大体別に私お坊さんになりたいわけじゃないし何故滝修業っ!?毎朝4時に起こされるし竹刀の素振りさせられるしランニング付き合わされるしっ…私は普通に女の子らしく過ごしたいのーっ!!」


ゼイゼイと荒い息を吐きながら言ってやったぜ!!と満足げにお父さんをみれば文句言いたげな顔をする。

いや、文句言いたいのはどう考えても私じゃないかな、うん。


「昔は楽しそうではなかったか!!」

「いや、あれが楽しそうに見えてたなら眼科行けよ、死に物狂いだったぞ私…っていうか小学生に何させてんだって話だよね、マジで」

「それに俺はお前の為を思って…」

「あんたのせいで無駄に強くなったんですけど、この間林檎片手で潰しちゃったんですけど」


あの時の皆の顔は忘れないからね。

女の子として大切な何かをなくしたからね。

あ、ゆっきーは爆笑してたよ、腹抱えてめっちゃ笑ってたけどね。


「強いのはいいことではないか!!」

「女が男より強いのは問題ではなかろうか」


今じゃそこら辺の男より強いから女子にはモテるし、モテない男子には嫉妬されるし生まれてこの方女の子扱いなんてされたこともない。

これは死活問題である。

それもこれも全部お父さんのせいだ。

お父さんを純粋に信じて誇りに思っていたあの頃の私を返せ。


「だーかーらー行かないからっ!!」

「何故だっ!!」

「ちゃんと人の話聞いてたか、クソ親父っ!!」


会話になんねー!!と頭を抱える。
もうやだこんなお父さん。

泣きたくなりながらも面倒臭くなってお父さんに背中を向けて出かけようとすればガシッとお父さんに腕を掴まれた。


「……何」

「わかった、滝修業は止めよう」

「本当?」

「ああ、お前がそこまで言うのであれば仕方がない…滝修業は止めよう」

「お父さん…」


申し訳なさそうな表情をするお父さんに私の顔が輝く。
もしかして私の言いたいことわかってくれたのか!!と少しお父さんを見直した私はお父さんが次に言った言葉に衝撃を受けることとなった。


「代わりに真剣斬りを教えようではないか、そこまで言うなら真剣斬りをしてみるといい」

「……は?」

「本当はもう少ししてからと思っていたが…そんなに真剣を使ってみたかったとは知らなかったな、すまん名前…名前?」


俯いてわなわなと身体を震わせていた私に気付いたお父さんはコテンと首を傾げたが私はそれどころではない。


「……ち、」

「ち?」

「チェストォォオオオっ!!」

「グハッ…!!」


お父さんを近くの真剣で殴り飛ばすと、私はバッキャローっ!!と叫びながら家の前で待っているであろう三人の元へ走るのだった。


後日、真剣で殴り飛ばしたお父さんが全治一週間の怪我を負ったことを知った幸村親子に爆笑されたのは言うまでもない



はて、私はゴリラに育てられたのだろうか
(いやもう、そうとしか考えられない)




企画サイト「テニプリ密着24時V」提出作品

次世代のヒロインとか完全に俺得!!←
凄く楽しかったです!!

次世代連載…絶対楽しい←←←オイ



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