鈍感な君真選組という組織は世間では悪いイメージを持たれることも多いけど、女子という括りからみるとそうでもなかったりする。
所詮はイケメンならなんでも許されるという事。イケメンならなにをしても、かっこいい!みたいな、訳のわからない風潮は本当に理解できない。
…だって、私はその当事者と一番近いところで働いているんですから。
「…隊長?」
「なんでィ?」
天気のいい昼下がり。
お昼寝をしたら気持ちいいだろうなあって思わず考えてしまう今は、残念ながら、仕事中。…そう、見廻り中。
なのにも関わらず、一緒に見廻っている上司は甘味処で団子を貪っているわけで。
「また副長へのツケですか?!
怒られますよ!!私が!!!
いや、そもそも!今は仕事中です!!」
この一番隊隊長が堂々とサボる事と、それに対して私が怒る事もいつも通り。
平和だから出来る事なんだけどさ!
でも、だからって見過ごす訳にはいかない。怒られるのは私なんだから!
「こんな日に仕事なんてやってらんねェだろ。折角、愛の分も頼んでやったんでィ。食え。」
「ヤですよ!共犯にな…ムグッ!!」
「ほーれ、共犯。」
満足そうな隊長を軽く睨みながら、口に入った団子を仕方なしに食べる。
流石、有名な甘味処。…めちゃくちゃ美味しい。
「これいつものパターンだ。こうやって隊長に流されるんだ。そして副長にバレて説教コースなんだ。
…悔しい。けど、美味しい…。」
団子に罪はない…と言い聞かせて、もう一つを串から齧る。
後々に起こるであろう事は、もうこの際考えないようにしよう…。
そう開き直って、隊長の隣へ腰掛けた。
「従順だねェ。」
「もうこうなった隊長はテコでも動きませんからね。仕方なくです。」
最後の団子を食べ終えて、串を置く。
ふと、団子を咥えたままの隊長が私の口元をなぞった。
「餡子ついてら。子供か。」
「あ、すみません。」
反射的に謝ってしまったのは、拭った団子を躊躇なく舐めてしまったからで。
…この人は、たまにこういう事をするから困る。
「だから、モテるのかも。」
「あ?」
いや、だけどそれ以上に欠点という欠点を見てきてる私には、それだけでどうこうなる事はないんですけどね。
けど、普通の女の子なら確実に胸にバズーカ打たれてるんだろう。
「いやいやいや…うーん。」
「なんでィ。情緒不安定か。生理か。」
「違います。
…ただ…、いろいろ考えた結果、隊長がモテるのは嫌だなあって。」
はぁ…と溜息をつきながら、団子に手を伸ばしたとき、額に違和感を感じる。
「なにしてるんですか。」
「い、いや、おめぇ、熱でもあるんじゃねェのか。」
「いえ、快調ですけど…。」
心なしか興奮気味の隊長を不思議に思いながら、みたらしを口に含んだ。
「だって隊長がモテたら私…
ネットで女子たちにめっちゃ叩かれるんですよ…現に今も私の名前で検索かけるの怖いです。」
あの女は誰だとか、ブサイクだとか…恋する乙女は時に恐ろしい。
今以上に隊長がモテてしまえば、自分の身が危ないような気がする。
…まあ仮にも警察職員だけど。
今日何度目かわからない溜息をついたと同時に隊長から右頬をつねられた。
「い!痛い痛い痛い!!伸びる!!ほっぺ伸びる!!」
「案の定、期待を裏切りやがって。」
「なんの期待?!」
隊長の腕を叩いていると、今度は隊長が溜息をつき、右頬が解放される。これ絶対赤くなってる…。
「嫁入り前なのに!」
「貰い手ねぇくせに。」
頬をさすってると隊長が串を咥えたまま立ち上がり、私の目の前へ。
軽く睨みつけると、今度は…
「いったあああああ!!」
思いっきりデコピンされた。
めちゃくちゃ痛い。本当痛い。軽く仰け反るくらいには。
「い、一体…何がお気に召さなかったんですか…。」
椅子に横になりうずくまる。これは暫く動けないだろう。
「おめーは、一生俺にイジメられてればいいんでィ。」
そういい残して、痛みに悶える私を放置し、憎たらしい笑みを浮かべながら、屯所へ向かって歩いていった。
鈍感な君(いつになったら気づくんだろうねェ。)
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