「とりあえずお風呂だね。」
ただいまーと言いながら返事のない家に帰ってきて、まず初めにしなくちゃいけない事は、この泥だらけの二匹をお風呂に入れる事だった。ごめんね。流石にこのままじゃ部屋入れれないし。
腕に抱える二匹を風呂場に入れて、逃げれないようにドアを一旦締める。するとすぐにカリカリと戸を引っかく音と鳴き声が聞こえたから、急いで準備に走った。
えっと、とりあえず鞄置いて、スーツ掛けて、着替え持って。
「「にゃー!!!!」」
「大丈夫大丈夫!今から入るから!」
脱衣場に戻るとさっき以上の鳴き声が聞こえて、慌てて声をかける。あ!石鹸出さないと!
石鹸を手に持ち、お風呂場に入る。何故か猫達は此方を向いて固まるがその隙に逃げれないように戸を閉めた。
「さて、シャンプーの時間だ!!」
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「…よし!フワフワになったねー!お前達!」
ドライヤーで乾かしホカホカになった身体へ顔面からダイブする。はーたまらん。
お風呂は一時は如何なるかと思ったけど、(それはもう暴れるわ暴れるわ。)なんとかなってよかった。
私から逃げようとせず、ただ呆れたように軽く鳴いてされるがままの長い方はなんとか私に慣れてくれたみたい。うーん、猫にしては順応性凄いよね。あ、特に短い方は。
部屋をウロウロしながら、今は私の雑誌に夢中になってる。まあ、捨てる予定だったし君にあげるよ。
「あ、そういえば名前いるね。」
フと気づき顔を上げる。…うーん、どうしようか。私苦手なんだよね。ネーミングセンス皆無だし。
困ったと頭を捻っていると、また二匹が鳴き出すから、雑誌の方へと視線を向ける。
「なになに、どした?」
すると二匹は前足で雑誌をテシテシと叩き、此方を見上げた。
えっと、短いのが「勘」ってとこ、長いのが「兵」ってとこをめっちゃ叩いてる…うん?
「もしかして、これがお前達の名前?」
「「にゃー!」」
「…勘。」
「にゃー!!」
「…兵?」
「にゃー。」
…ヤバイ。こいつら天才猫かもしれない。
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