零崎刹識の人間刹那 | ナノ

第二章





刹識side


刹識「友、いるか。」
蜘蛛「インターフォン押せばいいじゃないですかー、なんでわざわざ叫ぶんですかー?刹識姉様?」
刹識「叫ばなきゃ、私だってわからないでしょう?」


だから叫んでいるそうしなきゃ友は他者と間違える。


友「はぁーい、今でるから待ってねぇ」


そう言って出てきたのは青い髪、青い瞳の少女。
青色サヴァン――稀代の技術者・玖渚友。
笑顔しか知らない死線の蒼。


友「うに!せっちゃんじゃないか、どうしたの?」
刹識「ちょっと、此処じゃあ話せないかな。」
友「んじゃあ、はいりなよ。勿論、蜘蛛ちゃんもだよー」
蜘蛛「はいですよ」


何かを警戒して玖渚の家、コードが張り巡ったその部屋に入った。


刹識「相変わらず、汚いね。少し片付ければ?いーちゃんに任せっきりじゃ駄目だよ。」
友「大丈夫だよ。だって、最近は僕様ちゃんだけで料理出来るようになったんだから」
蜘蛛「料理はいいですから、片付けやりましょうよ」


まさか友が蜘蛛織に片付けをしろと言われる日が来るとは思わなかった。
苦笑いしか出来ない。


友「うにっ!!それで、どうしたんだね?」
刹識「偽装を、手伝ってほしい。」




友「何かあったんだね。」
蜘蛛「黎織姉様と輝識兄様が酷い目にあったんですよ、だから復讐です。」
友「復讐ねぇ…いいよっ、そういうことだったら手伝うよ。」
刹識「ありがとう。流石、友。」
そう言って玖渚はパソコンに向かう。


友「で、誰の偽装をするの?」
刹識「まずは私、あと蜘蛛織――紫木一姫、石凪萌太、闇口崩子、零崎人識――汀目俊希」


友は頷きながらパソコンを弄る。
手を止めて一度こっちを見る。


友「蜘蛛織ちゃんは紫木一姫、零崎人識は汀目俊希でいいんだね?」
刹識「あぁ、それで。」
友「せっちゃんは?」


再びパソコンに向かい作業を再開した友は全くこっちを向かないでパソコンに集中していた。


刹識「――本条刹那でいい。元の名…だしな」


少し遠慮がちに伝えた元の名は、


――大嫌いだ



友「いいの?その名前で…」
刹識「い、嫌だけど…」
蜘蛛「姉様達から頂けばどうですか?」


唐突に蜘蛛織は言う。
振り向けば、ニコニコ笑ってた。


刹識「貰う?黎織達の名字を?」
蜘蛛「そうすれば怪しまれませんよぉ」


そうやって巧妙に仕組む必要がこっちにはありますからぁ、と言った。
復讐だから、家賊の掟だから。
家賊に手を出した奴らは皆殺し、か――


刹識「じゃあ、私の名字を黒雛にしておいて。」
友「うにっ!了解なんだねっ!!」
刹識「うん、じゃあ。」


私は立ち上がる。
蜘蛛織も合わせて立ち上がる。
玖渚の邪魔をしないようにさっさと出て行こう。


友「制服やら何やらは、せっちゃん宛てにしておくからねっ!!」
刹識「わかった。」
そう返事をして、私は玖渚の家を後にした。


















友「うーん、とうとう動き出しちゃったんだね」


ひとりでにつぶやく。
片手には電話。
笑顔で話を続けた。


友「潤ちゃんとかがいたら安心だったんだけど、いないみたいなんだよね。」


もう片方の手はパソコンのキーボードに。
画面ではハッキングの作業中。
ハッキング先は――並盛中。


友「確か、並盛中の先生だったよね?」


そばにあるのは刹識が作ったホットケーキが5枚、アップルパイ二切れ。
そして、オレンジジュース。
玖渚はオレンジジュースを手にとりストローで飲みながら電話で話す。


友「じゃあさ、そのまませっちゃんについていてくれないかな?せっちゃん、無理しちゃうから監視して。」


アップルパイを一切れ手にとり一口食べて皿におく。
ちょうどハッキングが終わると片手を食べ物からキーボードに戻す。


友「大丈夫だよね?――ぐっちゃん。君なら出来るよね?」


そう言って電話を切る。


友「一人で無理はさせないからねぇ?せっちゃん。」


その蒼い瞳は一体どこを見ているか、謎に包まれたまま…。








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