出逢ったのは偶然だった。
雑踏の中、お気に入りの銀色を見付けたと思ったらそれが彼だった。

「キルア君の髪、奇麗だよね」
「はぁ?」

猫毛で癖っ毛なキルア君の髪を撫でながらそう独り言つ。
近場からのそれは当然彼に届いて怪訝そうにキルア君の眉が寄った。

「いやだから奇麗だよね、って。
太陽の下だと光を反射してきらきらしてて、月の下だとしっとりした色合いっていうか……あ、でも枝毛発見」
「莫迦じゃねぇの?」
「酷いなぁ…。というか、折角奇麗な髪なんだから手入れしなよ」
「面倒くせぇー」

呆れ気味に返して来たキルア君に苦笑した。
勿体ないと呟けば、ランの方が奇麗じゃん、なんてマセた事言うのでゆっくりと撫でていた手をめちゃくちゃに動かしてやった。
ちょっと乱暴にぐりぐりと力任せに撫でれば、いってーよ!なんて私の手を抑えてくる。
ひ弱な一般人の私のこんな攻撃で痛い筈もないでしょうに。
少し強めに私の手首を掴んで、キルア君はブスッとした表情で私を見上げた。
子供っぽくて可愛いその表情に思わず笑ってしまう。
それをどう捉えたのか、キルア君の頬は膨れるばかりだ。

「ぜってぇーガキ扱いしてるだろ」
「だってまだ子供でしょう?」
「ガキじゃねぇし!」
「はいはい」

ムキになるところが微笑ましい。
私の深まった笑みに何を察したのか、キルア君は不機嫌そうに顔を顰めると「ふーん…」と低く呟く。
変わった声色を少し不審に思うも、触り心地のよい彼の髪に夢中の私は深く考えなかった。
だから、油断した。

ぐいっ、と掴まれていた手が引かれる。
年齢的にも見た目的にもそぐわない強い力で引き寄せられた腕につられ傾いた身体はキルア君に向かって行く。
嗚呼ぶつかる、なんて思ったのは一瞬で、気付けば唇に柔らかい感触が伝わった。
呆気にとられる私をよそに、去り際に私の口紅を拭うように一舐めしたキルア君は「これでも子供?」なんてしてやったりの顔で、自分の唇に付いたルージュを舐めとった。

















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