「これをクラスごとに分けて欲しい。」
目の前には100枚は余裕であるプリントの山。
先生のお手伝い出来るとか思ってルンルンで来たものの、やはり雑用。
まぁ一緒にいれるだけでいいんだけどね..。
『分かりました。』
なまえはテキパキとクラスごとに分けていく。
一つの学年に10クラスほどあるマンモス校だからか、少々骨が折れるが仕方がない。
土方先生を盗み見するものの、眉間に皺を寄せてプリントとにらめっこしているのを見るとなんだか可哀相で。
2人は黙々と作業をこなし、とても甘い雰囲気など生まれるはずがなかった。
10分ほどたち、なまえは作業を終えるものの、土方は相変わらず険しい顔をしている。
『土方先生。』
声をかけても聞こえていないのか、返事は返ってこない。
なまえは土方の机にある空のコップを見て、台所に向かう。
えーっと....コーヒーはいつもこれ飲んでるのかな?
封の空いたインスタントコーヒーを見つけると、コップを洗いお湯を沸かす。
原田先生のところにはポットがあったのになぁ、やかんしかないのか....。
なまえは台所を見回すと散らかっているのが分かる。
洗っていないお茶碗が積み上げられていたり、そこらへんにゴミも落ちている。
何だか意外かも...
まあ忙しいんだろうなぁ、となまえは台所を綺麗にしていく。
ちょうど掃除が終わったくらいにやかんの湯が沸き、コーヒーに注ぎ、土方の机の上に置く。
『ブラックで大丈夫でしたか?』
「...ああ。すまねえな。」
土方先生はコーヒーを手に取り、口につけると大きく伸びをする。
『土方先生、しっかり寝ているんですか?目にクマ、出来てますよ?せっかくの美男子が台無しです。』
なまえは自分の目元を指で押さえる。
『それより藤堂君が来ないんですけど...。』
時計を見るともう昼休み終了10分前だ。
「まぁ逃げただろうな。」
まるでいつも、かのように土方は答える。
「それより今日は助かった。で、国語係の仕事内容なんだが...」
なまえはメモを取りだし、書いていく。
「.....ぐらいだな。」
『..ぐらいって多すぎますよ!それに今日みたいに藤堂君が逃げるパターン考えたらあたしがほとんど...』
「藤堂に言っておけ。次逃げやがったら殴る、ってな。あと部活のトレーニングも人の倍させることもだ。」
土方先生、それはさすがに鬼畜すぎます。
なまえは心の中で小さくつぶやいた。
『それはそうと土方先生、この部屋。国語準備室というより土方先生の部屋じゃ...』
「ああ。原田みたいに俺もやること多いからこの部屋使わせてもらってる。たまにここで朝迎える時もあるしな。」
『土方先生が?!』
「なんだその顏。」
『....い、いえ。』
てっきりあたしの想像からして、土方先生は綺麗な家に住んでいるお金持ちなイメージがあったからいい意味で裏切られたかも!
そんな事を考えていると五時間目の予鈴が鳴る。
「悪かったな、長い間付き合わせて。」
いえいえ!土方先生とだったらどんな雑務もこなします!
『はい。あたしなんかで良ければ、また手伝いますのでいつでも呼んでください。』
なまえは部屋を出てドアを閉めようとすると、可愛いマスコットがついている鍵が鍵穴にささったままだった。
『土方先生、鍵ついたままでしたよ?』
なまえはもう一度部屋に入り、鍵を土方に渡す。
「あぁ、悪いな。外すの忘れてた。」
『...土方先生って意外と可愛いのがお好きなんですね。』
「馬鹿、これは俺のじゃねぇよ。ほら、とっとと戻れ。」
ってことはつまり....女の人の物なんだ。
まぁ土方先生いたいなあんなに美形の人が彼女いないわけないもん。
何だか先生っていう存在に割り切っていたはずなのにちょっとショックかも。
『藤堂君〜。』
なまえは教室に戻ると、悪びれない顏で座っている藤堂の首ねっこを掴む。
「お、なまえ。お疲れ様。」
『...お疲れ様、じゃないよもう〜。二人きりで緊張でどうにかなるかと思ったよ!これからそんなのいらないからね!』
「まぁ楽しかったみてーじゃねえか。」
『全然楽しくなかったもん!』
「顔と発言があってねーぞー。」
「なになに、どうしたの。アンタ達。」
「俺が気をきかして土方先生と二人っきりにしてやったんだよ。」
「でかした、藤堂。」
『麻美まで〜っ。それより藤堂君、土方先生が次サボったら部活のトレーニング二倍、殴るのオプション付きみたい。』
「うげー。国語係とか一番避けたかった係なのに何でこうなったんだよ...。」
fin