何者?
私と光は交代制で虚退治に行っていて、今日は光の番だった。
ちなみに幹部だからか自室も設けられ、書類も済まし、やっと布団に入るところだった。
あまりしゃべったことはないが、千鶴という女が夜に廊下をうろつく気配を感じ取った。
案の定、何かに巻き込まれ、叫び声が聞こえたのでその場に瞬歩で向かうと、千鶴と山南さんがいた。
千鶴はニセ虚のように、髪を白くし、目は真っ赤だった。
部屋の隅をみると、ガラスの小瓶らしきものが割れていて、おそらくそれを飲むと化け物になるという仕組みだろう。

私は千鶴を廊下に追いやり、山南さんの前に立った。
そして刀を抜こうとすると、「待て!」と土方さんの声が聞こえた。

「山南さんの事は総司に任せる。なまえは俺と来い。」と言った。
部屋に着くと「島崎も呼んで来い」と言われた。
虚退治に行って今は居ない、光の本体。
しょうがなく、義骸で代わりを連れてきた。
チャッピーはうるさいので、しつこく黙っているように言ったので大丈夫であろう。

「お前らも立派な隊士となった今だ。話しておく。だが...誰かに口外でもすると命はねぇ。」

そして“羅刹”という存在について聞かされた。
途中、耳を塞ぎたくなるような話もあったが黙って聞いていた。


その日の夜、私は屋根の上で寝転びながら考えていた。
すると、光も帰ってきた。

「どうしたのですか?お顏がすぐれませんが...。風邪ひきますよ。こんな所に居ては。」

『うん、分かってる。...聞いた?』

「ああ、アレの事ですか。はい。チャッピーの記憶を頂きました。人間というものはひどい事をしますね。...その命の大切さがよく分かっていない。」

『私も思った...。あー、平和な尸魂界に帰りたい!』

「そうですね...。」




次の日、縁側にいる沖田総司を見つけた。
顏は痩せ、目にうっすらと隈も見える。

『沖田総司、斉藤に頼まれてお粥を持ってきたんだけど...。外に居ては風邪が悪化するよ。』

「...知ってるんでしょ?」

『....まぁ。』

「ふ、こんな体じゃなーんにも出来なくて退屈だよ、ほんと。近藤さんを護ることのできない体なんていらないのに。」

『そうかもね。』

「....。」総司はじっとなまえの顔をみる。

「....あれ?君って、よく見るとずいぶん女っぽ『沖田総司、あんまりいらない、とか死にたいとか思わない方がいいよ。』....。」

『ね、死んだ未来は明るいと思う?』

「うーん、僕はいっぱい人を殺してきたからね。地獄行きだと思うんだ。」

ああ、確かにそうかも。と思ったなまえだった。

『でもさ、意味のない殺しはしてないでしょ?それなら....死んだ先の未来は明るいはずだよ。もしかしたら剣も握れるかも。』

「どういうこと?つまり死んでも先はあるって言いたいの?」

『さぁ?自分次第じゃない?』

「何それ。なまえくんって変なこと言うよね。」

『よく言われ「ギャアアア!!!」...!』
これは虚の声だ。
私は目を閉じ、霊圧を探る。

「....ん?何か叫び声でもした?」

『え?』

「や、なんか聞こえたような...。気のせいかな?」

おそらく沖田総司にうっすら虚の姿が見えるという事を仮定すると、死神の私たちも見るという事だ。
ここで義骸から抜けるわけにいかない。
すると屋根で光の霊圧が感じ取れ、おそらく行ってくれたのだろう。
ほっとし、私は総司と話を続けていた。



その日の夜、「隊長。最近虚の数が増えています。」

『うん、薄々感じていた。今日からは二人とも行くしかないねー。』

と義骸を脱ぎ、二人で外に出た。



二人が虚退治をしている中、屯所では義骸の姿の一人が土方さんと話していた。

「おう、こんな所で何している?羅刹にでも襲われでもしたら...ま、お前なら襲われても大丈夫だと思っているがな。」
義骸のチャッピーはなまえを送り出した後で、縁側でなまえ達を目で追い続けていた。

「どうした?何かあったのか?」とチャッピーが見る方向に目をやる。

『なまえ様が...』

「あ?何か言ったか?つーかいつものお前らしくねーぞ。」

『虚が一体、違う方向にいるピョン。』

「はあ?ピョン?」

するとそこに沖田総司もやってきた。

「どうしたんですか?そんな所に二人して突っ立って。」

「いや、なんかこいつの素振りがおかしくてな...。」

確かに一人でうわごとのように何かを言い続けている。
単語も何を言っているかよく分からない。

「変な物でも食べたの?...とりあえず僕が部屋にでも運んでおきますね。」

「ああ、そうしろ。」
そして総司がなまえの方を抱き、少し異変を感じた。
敷かれている布団になまえを寝かせ、少しはだけている胸元に白い何かが見え、思わず広げると胸元にサラシが巻いてあり、総司は唖然とした。

「総司、どうした。」
廊下にいる土方に尋ねられた。

「い、いや、何か案外あっさり布団に入ってくれたんで...。」

「ああ、俺はもう自室に戻る。総司、お前も風邪悪化するから戻れよ。」

「はい、今行きます。」
と土方が去るのを確認し、もう一度見る。
そして顔もよく見れば、女に見えてきた。
先ほどジタバタしてたなまえは大人しく寝ている。

部屋の周りを見渡すと、特に変わったようなものは見えない。
するとそこに声がしたので総司は慌てて、部屋を出て物陰に隠れた。

「疲れましたね。」

『ね。ここまで虚が分散してたらねー、移動も大変だわ。』

総司は目を見張った。
さっき部屋に寝かしたはずなのに、寝ている姿と違う黒の着物と白い羽織を着て、光くんと部屋に入った。
総司には意味が分からなかった。


なまえ“ちゃん”、君は何者?


fin


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