瀬名→守沢→朔間(凛)



◆瀬名泉
「瀬名先輩、今年もやって参りましたバレンタイン。毎年なんやかんや文句言いながらチョコを受け取って下さってありがとうございます!」
「毎年なんやかんや言わせてるアンタにも問題あるけどねぇ。で、今年も持ってきたわけ?」
「それなんですけどね、瀬名先輩そもそもチョコ好きじゃないので、わざわざチョコあげる必要ないんじゃないかなーと思いまして」
「はぁ」
「つきましては、今年はチョコ以外のものを用意しました!」
「ふぅん。小さい脳ミソで一応考えたわけね。で、何くれるの?」
「それはもちろん、わ・た・し…………と言うのを期待したかと思いますが…」
「いやいや見て俺の右手。血管浮き出るくらいグーパンチ我慢してんだけど」
「いつも撮影やレッスンにお疲れな瀬名先輩のために癒しをと思い、三日三晩寝ずに作ったんですよ!ささ、受け取って下さい!」
「いや、寝なよ。まぁ有り難く受けと…え………何これ?」
「私と先輩の、愛の藁人形です」
「恐っ!!何!何なのこれ!」
「ふふ、可愛いでしょ〜♪」
「心霊番組以外で藁人形とか初めて見たんだけど…てか自分の藁人形が存在してるとか恐すぎる…。棄てて。今すぐ棄ててきて」
「ぐふ、照れてる瀬名先輩も可愛い〜」
「恐い恐い、藁人形より恐い」
「さて、ここに瀬名先輩の髪の毛があります。これは瀬名先輩の寝室の枕に付着していたものを拝借しました」
「待って」
「この髪の毛を藁人形の中に入れます。それそれ」
「不法侵入に怒ればいいのか、悪魔の儀式に怒ればいいのか」
「私の人形にはすでに私の髪の毛がINしてあるので大丈夫!ではここからが本番です。よくご覧あれ!」
「え、何……。うわっ!右手が!」
「ふふ、そーれっ。藁人形の右手を上げると、なんと瀬名先輩の右手もご覧のとおり〜♪」
「嘘でしょ!?あり得ないんだけど!こんな呪いみたいなことって本当に起こるわけぇ!?」
「やだ、瀬名先輩ったら。これは呪いじゃなくて先輩と私の愛が生み出したラブパワーですよ。ほら、knightsのダンスでターン♪」
「わっ!ちょ、ちょっと待って!」
「あー可愛い、私の瀬名先輩人形…。頬ずりしちゃう、スリスリ♪」
「うげぇぇぇぇ………!!」
「そして、瀬名先輩人形で私人形の頭をなでると…」
「うわっ、体が!」
「えへへー、瀬名先輩が頭をなでなでしてくれる♪いつも全然してくれないから嬉しいです」
「くっ…、なんて屈辱的なバレンタイン…」
「次は何してもらおうかな〜。んふふ、き、キス…とか…きゃーー!!」
「……………ねぇ、俺も普段できないことを、藁人形使ってアンタにやってあげたいんだけど。ちょっとだけそれ貸してくれない?」
「え?先輩も何かやりたいことあるんですか?なんですか?」
「それは秘密」
「むむ、怪しいなぁ。壊されたら嫌です、何するか教えてくれないと貸せませんよ!」
「へぇ、俺に言わせる気?あんなことや、こんなことを?」
「あ、あんなことや…こんなこと…!?」
「そう。こんな場所で口に出すのはちょっとねぇ。誰も来ない場所じゃないと俺の口からは言えないかな。あんなことや、こんなこと…」
「ひっ、み、耳元で囁かないで先輩…体がぞくぞくしちゃいますぅ…」
「ふふ…耳まで真っ赤だねぇ」
「はぁ、はぁ…私もう…せなせんぱ……、ん?いだっ!いだだだだだ!」
「アンタいつまでも調子のってんじゃないよ〜〜」
「あぁ!いつの間に藁人形が先輩の手に!ちょ、ちょっと先輩かえして…わっ、人形の頭をミシミシ掴まないで下さい、あだだだだだ!!!」
「よくもこの俺を好き勝手してくれたねぇ。罪の重さはわかってるね?」
「ご、誤解ですせんぱ…、アハハハハ!く、くすぐったい!脇はやめて!ひぃーー!!」
「土下座のポーズ」
「ぐぇっ!」
「コマネチ」
「ひぃ!だっふんだ!」
「水の呼吸」
「陸ノ型!ねじれ渦!あだだだだだだ!体ねじれる!!」
「最後にここの柱にくくりつけて…」
「ぎゃっ!う、動けない〜〜!」
「あー、面白かった。久々に笑ったんだけど。いちいちセリフ対応してるとこは評価してあげる」
「せ、瀬名先輩…実は私チョコを…」
「これでしょ。今年はなかなか楽しかったから、特別にもらってあげる」
「せ、先輩…!!大好きー!ハッピーバレンタインー!!」
「はいはい、知ってる」
「…てあれ、先輩行っちゃった!ちょっとこれ!藁人形!せんぱい!ほどいてー!!」
「不法侵入は反省してよねぇ」


◆守沢千秋
「ちょっと千秋!具合悪いって聞いたけど大丈夫……て何これ!?」
「あぁ…なまえ、わざわざ来てくれたのか…」
「点滴に鼻チューブに心電図まで!?重症患者のフル装備しちゃって、ど、どうしたの…?てゆーか、ここ本当に千秋の部屋だよね…?」
「来てくれたのにこんな状態ですまないな…。ヒーローとしたことがこんな無様な姿を晒して不甲斐ない…」
「何があったの?知らなかったからびっくりしたよ」
「あぁ、実は先日、空から巨大な黒い塊が落ちてきてな。一部がドクドク動いていたんだ。怪しいと思って様子を見ていると皮が破けてなんと中から巨大な怪物が!そこで俺はすかさず流星レッドに変身し、テレパシーで4人の仲間を呼んでその巨大な怪物に立ち向かった。必殺技はそう、真っ赤に燃える命の太陽、スーパーウルトラファイヤーレッドビーム!!」
「元気じゃねーか!!鼻チューブしながらベッドで跳び跳ねるやつがどこにいんだ!てかこの心電図の画面よく見たらクレヨンで書いてんじゃん!」
「心電図は本物を手配すると高額なのでやむを得ずダンボールで自作をしたが、まさかこんなに早く気付かれてしまうとはな…さすが俺の彼女、愛しのなまえだ…」
「まぁ元気ならいいけどさ。せっかくバレンタイン持ってきたんだから寝てないで起きてよ」
「………………………」
「どうしたの?」
「なまえ、すまない。隠していたのだが俺はもうこの先長くはない…」
「え!どういうこと!?」
「敵に呪いをかけられてしまって、甘いものを食べられない身体になってしまったんだ…」
「呪い?」
「大変残念だが…今年はなまえからのバレンタインを受けとることが出来ないんだ。気持ちだけ有りがたく受けとるぞ、ありがとうな…」
「そんな急に呪いとか言われても…」
「(昨年のバレンタインでは何とか一命を取り留めたものの、今年は何としてもなまえのチョコを口にすることは避けなければ…!)」
「でも大丈夫だよ!」
「ん?」
「私ね、今年は甘いものじゃなくてお弁当にしてきたの!最近千秋、朝早く起きる私に遠慮してお弁当いらないって言ってたでしょ?だから今回は特別、たーっくさん作ってきたよ!」
「ぬぉぉぉ…!時代劇でしか見たことないような金箔の五段重箱…しかもスーパーでかい…」
「和・洋・中・エスニック・デザートの五段にしてみました♪でもデザートは甘くて食べれないだろうから、残りの四段を食べてね!」
「箱のサイズがおおよそ35×35、高さが10cm、かつパンパンに詰まっている。それが四段となると、そもそもマトモに食べられる料理であったとしても一人の人間の胃袋に納まる限界値を超えており、かつなまえの手料理となってしまうと致死量98%が含まれていることになるから計算するとつまりは…」
「まーたぶつぶつ言ってる。じゃあ全部開けて並べちゃうね。それっ」
「う、催涙弾のような煙が!目がしみる…!何だか重箱の中身が動いているようだが…」
「うふ、驚いた?和食の箱には、生のタコを入れてみたの。今日採れたての新鮮だよ!」
「こ、これはタコなのか!?足が50本くらいあるぞ…ひぃ…動いている…!それよりも目玉の多さに寒気がするのだが、これはまさかタコではなく宇宙人では…」
「あとね、洋食の箱には熊肉を入れてみたの。珍しいでしょ、熊のお造りだよ!」
「ぎゃーー!!く、くまちゃんのお顔ーー!!!」
「そして本場の中華料理!ヒヨコちゃんの姿揚げだよ♪」
「オェェェ…!!!」
「エスニックは…てあれ、千秋どうしたの?ずっと起き上がってたから体調悪くなっちゃった?」
「すまないなまえ…、それ以上は36禁くらいになるから止めてくれ…。そして俺はそれを食べる為の精神力がもう0になってしまった…。なまえ、俺の命が燃え尽きても幸せに生きていってくれ…」
「もう!何縁起でもないこと言ってるの。これから先も二人で一緒に生きていくんでしょ?」
「ん…?」
「千秋は違うの?」
「そ、それはどういう…」
「何よ、もう。私のこと、お嫁さんにしてくれるんじゃないの?」
「……………!!なまえ…!も、もちろんだ!なまえが俺で良いと言ってくれるのなら!一生を懸けて君を守り抜くと誓おう…!」
「えへへ、ありがとう、千秋」
「なまえと俺が夫婦に…!式は盛大に、子供は10人は欲しいな。そして白い一軒家で犬を飼い、皆で幸せに暮らす、最高じゃないか!」
「じゃあその為には、千秋には健康でいてもらわないとね。しっかり体力と精を付けないと」
「え…、ま、まさか…いや、さすがにこれは食べれな…」
「はいどうぞ、あ・な・た?」
「あーなーたー!!??」
「あーん♪」
「いただきますっ!!!もぐもぐごっくん!オェェェェェェェ!!!」


「泉くーん、千秋くんの部屋から悲鳴が聞こえたからそろそろ119番するよー」
「毎年バレンタインの日に俺たち二人がスタンバってあげてるとか、ちあくん本当幸せ者だよねぇ」



◆朔間凛月
「りーつ、今年のバレンタインは何がいい?」
「ん〜?それは俺を誘ってるの?俺が食べたいのは甘い甘いなまえだよって言わせたいの?当日は私を食べてってパターンをすでに匂わせてるの?」
「アホか!!毎々ひねくれた考察しおって…。ほら、この本見てどれが食べてみたいか教えてよ」
「なーんだ…、女体盛り期待してたのに」
「真緒は、これがいいんだって。凛月も同じのにする?」
「え〜…何それ。何で彼氏の俺より先にま〜くんに聞いてるわけ?同じのにする?って、するわけないじゃん。普通は俺のを一番に決めてから他の人に聞いていくもんじゃないの?愛が足りないよね〜愛が」
「うっ!り、凛月が珍しく正論を…!てゆーかそれってさ、や、やきもち…?」
「なーんてね、俺もま〜くんと同じのにしようかなぁ。俺とま〜くんは一心同体だからね、同じ日に同じものを食べるっていいかも〜…♪」
「えぇ、一心同体って…」
「隣にま〜くんを感じながら、せーので同じものを食べる。ふふ…心も身体もシンクロしてるみたいじゃない?悪くないよね」
「こ、心も身体も……」
「じゃあ俺もま〜くんと同じチョコケーキで。ふあぁふ……、一眠りするから後はよろしく〜…」
「待って待って!真緒と同じものはやめる!凛月には特別なものを作るから期待して待ってて…、てあれ?寝てる?」
「ぐぅ…」
「よし、前は何故か朔間先輩に手伝ってもらっちゃって凛月に怒られたから、今回は自分で作るぞ!と張り切ってみたものの料理苦手なんだよね、どうしよう…。ん?あれ?何これ?」
「コンニチワ。ボクノナマエハ、パティシエールクン。ヨロシクネ」
「えぇ!最近よく回転寿司の受付で見かけるASIMOみたいなロボットがいる!しかも何か背がでかい…」
「キミハ、オカシヲツクリタイノカナ?」
「そ、そうなの!何で分かったの?」
「ボクハ、オカシツクリガ、トテモ得意ナンダヨ。キミニオシエテアゲルヨ」
「えー!ほんとに?天の恵み…。ロボットなら間違いなく上手にお菓子作れるだろうし。お願いします、パティシエール君!」
「ジャアマズハ、チョコレートヲ細カクシテ、ユセンデトカソウカ」
「OK!細かくするのね。じゃあトンカチを…」
「マッテ!トンカチハ…、チョコ叩イタラ、バラバラニナッチャウカラ。ホウチョウツカオウ?」
「ん?あぁ、包丁か。ダンダンダン!」
「チョーーーット!細カクスルトキハ、チョコヲテデオサエヨウネ!?」
「あ、そっかそっか。よし、これで湯煎にかけて…」
「オオオイ!!ナンデ、オユノナカニイレルノ!?湯煎テ、茹デルッテコトジャナイヨ!?」
「え?なに?どういう意味?」
「コイツ大事カ…?ココハボクガヤルカラ、小麦粉ヲフルッテクレル?」
「はーい。ふーりふり、ふーりふり♪」
「バカか!!袋に入った小麦粉を振り回してどーすんだ!」
「ん?パティシエール君?」
「小麦粉ヲフルウッテ、コレヲ使ッテ、サラサラニスルンダヨ」
「ふーん、ザルみたいね。これでいいの?」
「めっちゃ溢れてんじゃねーかヘタクソだな…。ゴホン、ツギハ卵ヲワッテネ」
「割るのね!うりゃーーー!」
「テメェーー!!膝で卵割るやつがどこにいんだバカやろーが!!この怪物女が!食材に謝れ!!」
「え、あれ、晃牙!?何でそんな変装を!?」
「くそっ…俺様としたことが、こいつのバカさ加減に我慢できず正体現しちまった…。吸血鬼ヤローに頼まれたんだよ。テメーがリッチーにあげるバレンタイン手伝ってやってくれってな(弟が腹壊したら心配だからって)」
「朔間先輩が?」
「壊滅的に料理ができねーって聞いてたけど、ここまでとはな。俺様は吸血鬼ヤローのように気は長くねーんだよ。今回のお菓子作りは諦めて、店でチョコでも買って渡せよな」
「そ、そんな!凛月に約束したんだもん、お願い晃牙、手伝って!お願い!(うるるん上目遣い)」
「……っ!…たく、仕方ねぇな。後から吸血鬼ヤローに責められんのも面倒くせーし、ほら、ぼけっとしてねーでとっととやんぞ!」
「ありがとう、よーし、凛月のためにがんばるぞ!」
************
「ふぁ〜〜…、あー…床で寝たから首が痛くなった…。非公式で買ったま〜くん抱き枕を持ってくればよかったなぁ。…あれ?なまえ?どこにいるの?」
「りつー!ハッピーバレンタイン!」
「あれ、もしかしてまた寝てる間に作ってくれてたの?………兄者の気配は…ないか…」
「真緒とは違うやつだよ。凛月だけの為に作ったオリジナルケーキだから、いっぱい食べてね!」
「へ〜、可愛くラッピングまでしてくれたんだ。一人でよく頑張ったねぇ、いいこいいこ〜…♪」
「でへへ…。さ、開けてみて!」
「パカッ。……これって…」
「チョコレートケーキの上に、紫のチョコを塗りまくって生クリームでドクロを作りました!デビルやコウモリはウエハースにアイシングで絵を描いたの!」
「これ本当になまえが一人で作ったの?」
「も、もちろん!」
「……ふぅん、俺のお菓子程じゃないけど、このグロテスクさはなかなか良いセンスしてるよ〜。さすがコーギーだねぇ」
「ぐぇっ!な、なんで…!?」
「いやいや、ケーキの上にDEATH or ALIVEなんて書くの学園で一人しかいないでしょ」
「うわぁぁぁ…盲点……!!」
「前回の兄者といい、コーギーといい…なまえは俺以外の男と随分仲良くしてるんだねぇ〜?」
「ご、誤解だよ凛月!これは晃牙じゃなくてロボのASIMOが…」
「それじゃあ今年も美味しくいただこうかな、なまえの血と肉を…♪ハッピーバレンタイン〜」
「こ、こんなとこで!?きゃーー!!ごめんなさい許してせめてベッドにしてー!!」

「ワンコや、愛しの凛月に可愛いケーキは作ってきてあげたかの?もちろんバレてないじゃろうな?」
「バレる訳ねーだろ、すげー可愛く女子っぽくデコレーションしてきてやったんだからよ。俺様の手にかかればこんなん余裕だったぜ!」
「朔間さーん、弟くんからまた荷物きてるよ。穴の空いた日傘に大量のニンニクぶら下がってるの、臭いから早く持って帰ってよー」
「りちゅーーー!バレとるーー!!!」



End.

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