瀬名→守沢→朔間(凛)


◆瀬名泉

「せんぱーい!瀬名せんぱーい!せーなーせんぱーい!!…あれ、おかしいなぁ。どこ探してもいない……きゃっ!いたた…ぶつかってすみませ…」
「ううん、俺も余所見してたからごめんねぇ。なまえ、怪我してない?痛いとこない?」
「あ、はい、大丈夫で……って瀬名先輩!?」
「怪我がなくて良かった。可愛いなまえに傷が付いたら大変だし。よしよし、ごめんね」
「ちょちょ、せ、瀬名先輩ですよね…?文字だけだと全く瀬名先輩だと気付けないくらい別人なんですけど…」
「?よく意味が分からないけど、偶然でなまえに会えるなんてラッキーだねぇ。神様からのプレゼントかな」
「うぅっ!瀬名先輩が甘い言葉を言いながら生徒会長並みの柔らかい笑顔をするなんて…!ま、眩しすぎて目が…」
「なまえ、ここは寒いから中に入ってお茶でもしよう。身体が温まるミルクティー淹れてあげるからねぇ」
「せ、瀬名先輩がお茶を!?いつもなら『とっととお茶淹れなよねぇ。俺を待たせるなんてなまえのくせにちょ〜生意気』っていびり倒してくるのに…今日はどうしてこんなに優しいの…!?」
「ん?だってなまえ、前に“優しくて甘々で笑顔いっぱいの瀬名先輩が見たいです“って神様にお願いしてたでしょ?」
「えっ!な、何故それを…!?あれは部屋で空を見ながら流れ星にお願いしたから誰も知らないはず…。ま、まさか流れ星の願い事が叶ったの!?」
「可愛いなまえ、ほらほら、頭撫でてあげるからこっちにおいで」
「ふわぁぁぁ…!せ、瀬名先輩が頭ナデナデ…!お願いしますゴロニャン!」
「ふふ、甘えちゃって可愛いねぇ。そういえばさっき、俺のこと探してなかった?」
「あ、忘れてました。はい、これバレンタインのチョコレートです。頑張って作ったんですよ、もちろん本命です!」
「ありがとね。なまえから本命貰えるなんて俺は幸せものだねぇ」
「キュン……滅多に見れない先輩の天使のような笑顔に甘い言葉!流れ星、ありがとう!」
「ねぇ、お礼にキスして良い?」
「は、はい、勿論どうぞ!ん〜…」
「タコみたいで可愛いねぇ。それじゃ、その可愛い唇をいただきま…」
「「「せなくーーーん!」」」
「な、何事!?向こうから女の子達が瀬名先輩目掛けて押し寄せて来る!?」
「瀬名くん、これバレンタインのチョコレート、受け取って!」
「私のも受け取って!」
「ずるい、私のもよ!!」
「ちょ、ちょっと何なのこの人数は…!?さすが瀬名先輩…じゃなくて、せっかくの先輩との甘い時間が…!瀬名先輩、いつもみたいに『うるさいなぁ、あっち行きなよねぇ』って受け流してくださ…」
「ありがとう、皆。俺の為にわざわざ用意してくれたんだねぇ。こんなに可愛い子達に愛されて幸せものだよ」
「え!せ、瀬名先輩!?」
「「キャー!瀬名くんキスしてー!」」
「ふふ、しょうがないねぇ。じゃあ一人ずつ並んでごらん?」
「なななっ、何言ってるんですか!先輩はそんなことする人じゃないです!」
「?だってなまえが願ったんでしょ?優しくて甘々で笑顔いっぱいの瀬名先輩って。…でも、それが“私だけに“ってお願いじゃなかったからねぇ、誰にでも優しい俺になっちゃったみたい」
「そ、そんな…」
「はい、じゃあ順番にキスしてあげるからねぇ」
「や、やめて…、他の子にキスなんてしないで…いーやーー!!!」

「うるっさい!!あんた人のこと呼び出しといて待ち合わせ場所でヨダレ垂らして寝てるとか頭おかしいんじゃないの!?」
「へっ、はっ…こ、ここはどこ…?」
「図書室。授業終わったら来てくださいってメールしてきたくせに、急いで来てあげたら机で寝てるとかちょ〜うざい…なまえのくせに生意気なんだけど」
「せ、瀬名先輩だ…いつもの先輩だ…」
「はぁ?何意味不明なこと言ってんの。あーあ、しかも寝癖ついてるし、恥ずかしいからそれ直すよ…って何泣いてるの!?」
「うっ……うぅ〜〜瀬名先輩!優しくて甘々な先輩も素敵でしたけど、やっぱり私は口が悪くて上から目線で自意識過剰な瀬名先輩が一番好きですぅぅ!」
「あんたケンカ売ってんの!?もう帰るからねぇ!」
「あ、待ってください!先輩に渡したいものが…あれ?な、ない…?」
「これでしょ。仕方ないから貰っといてあげる。普段甘いものは食べないけど、今回は特別に食べといてあげるから感謝しなよねぇ」
「つ、ツンデレ…!うぅ、やっぱりこの瀬名先輩が一番好きですーー!!先輩、好きですーー!!!」
「うるっさい!図書室で騒ぐなって言ってんの!」
「えへへ、瀬名先輩大好きです♪」
「…ったく、そんなの知ってるから。ほら、鼻水拭いて帰るよぉ」
「はい!ハッピーバレンタイン♪」


◆守沢千秋
(「愛しい彼女の作り方」番外編)
「ちーあーき♪これ、バレンタインだよ、受け取ってくれる?」
「なまえ、もちろんだ!愛する恋人からの贈り物は最高に嬉しいものだな!」
「ふふ、千秋ったら。それじゃあ…はい、どうぞ♪」
「おぉっ、ありが……………」
「?千秋、どうしたの?」
「いや!うむ、えーとだな……」
「うふふ、一生懸命作ったんだよ。ほら、開けてみて」
「え?あ、あぁそうだな!なんだか箱の隙間からどんよりした煙のようなものが流れ出てる気がするのだが、きっと目の錯覚だろう!」
「煙?そんなの出てるかなー?よく分かんないけど、千秋への愛のオーラじゃないかな。なんちゃって、えへへ」
「なまえ…(キュン!)そうだな、謎の生命体のタコ足のようなものがはみ出ているが、ラッピングのリボンの見間違いだろう!愛のオーラ(煙)で目が痛くなってきたから開けてみるか!」
「うんうん、開けてみて!」
「どれどれ……おぉ、おぉっ!?お、おぉ…?おぉぉ……!?」
「ちょっと、“おぉ“しか言ってないじゃない!ふふ、色々詰め合わせてみたの。どうかな?」
「色々…、そうだな、うん、何か色々入っているな!タコ足はリボンではなくやはり中のモノだったのか…」
「ねぇねぇ、せっかくだから一つ食べてみてよ」
「え!?」
「えっ?」
「い、いや……だ、だがせっかくなまえからのバレンタインだ。食べるのが勿体ないからしばらくはこのままにしておこうと思ってな!はっはっは!」
「えー、頑張って作ったんだから私の前で食べてほしいな。じゃあ、あーんしてあげる♪」
「あ、あーんだと…!?くっ…愛しのなまえのあーんを断れる程、俺の精神力は強くない…。だが全てを受け入れるのがヒーローだ…どんな得体の知れない物にも立ち向かっていくのがヒーローとしての義務であり原点であって俺は……」
「何ブツブツ言ってるの?じゃあねぇ、まずは定番のトリュフから!」
「む?これは石…いや、岩…!?」
「岩って何?これはトリュフだってば」
「ふむ、ウィキペディアで調べたところトリュフとは直径3cmほどの球形に丸めたガナッシュをクーベルチュール・チョコレートでコーティングし、粉砂糖やココアパウダーをまぶしたものらしい。ちなみにこれは直径18cm程あると推測が出来る故に…」
「またブツブツ言ってる〜。はい、溶けちゃうからあーんして!」
「うむ、愛するなまえからの頼みだ、ここはヒーローとして誠意を持って答えねば!それではいくぞ、あーん……ガリッ!!ぐはっ!」
「きゃっ!千秋どうしたの!?」
「い、岩…!?」
「あれれ、ちょっとコーティングが固かったかな?ごめんね、じゃあ次これにしよっか!」
「む、火事で焼け残った台所のスポンジのようなこれは何だ?」
「もー、ほんと例えのセンスが無いんだから。これはガトーショコラっていうの!」
「ガトーショコラとはチョコレートケーキの一種であり卵白と卵黄を分離してそれぞれ混ぜ表面はパリッと中はしっとりした食感の…」
「ブツブツ言わずにはい、あーん♪」
「あ、あーん………ぐぇほっ!!ごほっ、がはっ、ぐぇっ…!スポンジボブ…!」
「だ、大丈夫!?濃厚だから喉に張り付いちゃったのかな!?」
「ぐぇっほ…!の、喉の奥でセカンドインパクトが…」
「うーん、じゃあ柔らかいのが良いかな。はい、マシュマロチョコだよ♪」
「うむ、マシュマロは確かに柔らかいがスプーンで掬うほどスライム状だっただろうか…?そしてもはやマシュマロとチョコの原型すら思い出せない程に個性的となっているがそれもなまえの魅力であり愛情であるから俺はヒーローとしてのうんぬんかんぬん…」
「あーーーん♪」
「あ、あーーん…………ぐうぉえっ!!!がはっ!げぇっほ!おぇぇっ!!ぐはぁぁぁぁ…!!」
「ち、千秋、どうしたの!?」
「ちょっと!何回学習すれば済むわけ!バカなんじゃないの!?かおくん、救急車呼んで!」
「えー、最近の俺の通話履歴、もりっちのせいで119番ばっかりなんだけど〜女の子の番号がどんどん消えてくし…」
「ぐあぁぁぁ!か、体の痺れが…!喉がぁぁぁ…!!」
「千秋、喉が痛いの!?ほら、私のお手製チョコレートドリンクを飲んで!」
「かおくん、ついでに110番してこいつ無期懲役で逮捕させて!!」



◆朔間凛月(の為の朔間兄)

「凛月にバレンタインを手作りしたいんだけど…やっぱり凛月より美味しいもの作れる自信がないんだよね。だから今年は買おうかなって」
「え〜…何それ。作る努力もせずに既製品に頼るわけ?好きな人へのバレンタインなのに手間かけないなんてどんだけ面倒くさがりなの〜」
「それをお前が言うか!てゆーか、面倒なわけじゃなくて、上手に作れる自信がないの…昨年も失敗ばかりだったし…」
「うーん…そういうことかぁ、それじゃあ俺がお菓子作りを教えてあげよっか〜そしたら確実に美味しいものが出来上がるんじゃない?」
「まぁそうだけど…凛月にあげるのに、当人に教わるってのもねぇ」
「あ〜…珍しく提案してあげたのに却下されてもうエネルギー切れた……ふあぁふ…おやすみ〜…」
「えっ、あ…マジ寝しちゃった。これ当分起きないなぁ、どうしよ〜」
「………嬢ちゃんや…」
「ん?今何か変な声が…」
「ここ、ここじゃよ〜。可愛い凛月のお兄ちゃんじゃよ〜♪」
「あれ、零さん?って、何で天井に張り付いてるんですか気持ち悪っ!!」
「ふふ、可愛い凛月の寝顔を見たくてのぉ…一昨日から気付かれぬようスタンバイしておったのじゃよ」
「もはや犯罪者ですね」
「ところで、凛月にバレンタインを作りたいそうじゃのう。我輩、皆には伏せておるが凛月に負けず劣らず料理が得意だったりするのじゃよ…♪愛しの凛月に美味しいお菓子を食べさせてあげたい気持ちは我輩も同様…、嬢ちゃんを手伝ってあげるぞ」
「え、本当ですか!?是非お願いします!」
「そう言うだろうと思って、材料・ガスコンロ・調理器具はすでにここに用意しておるぞ♪」
「恐っ!!いや、宜しくお願いします師匠!」
「よしよし♪ではまずチョコレートを刻んでみてくれるかのう」
「はい!えぃっ…う、か、固い…。渾身の力を込めて、とりゃっ!!」
「待てぃっ!…嬢ちゃんや、頭のてっぺんから斧のように包丁を振りかざしても刻むのは難しいぞ」
「そ、そうなんですか…刻むってよく分からないんですよね…」
「ふむ…では刻むのは我輩がやるとして、卵白を泡立ててくれるかの?」
「了解です!えーと、泡立て器でぐーるぐるー♪ぐーるぐるー♪」
「待て待てぃっ!そんなゆっくり混ぜてたら泡立つのに三時間はかかってしまうぞ…もっと素早く!風のように!」
「は、はい!とりゃーー!!…はぁ、はぁこんなもんでどうでしょう?」
「まだまだ緩いのう、もっと早く!空気を含むように!我が輩の指示通り!」
「な、何か零さんイライラしてきてません…?」
「腕を休めるでないぞ!口よりも手を!肉よりチョコを!!」
「よ、よく分からないけど分かりました!ひー、零さんが怖い…」
「もっと早く混ぜる!」
「ひーー!シャカシャカシャカシャカシャカシャカ!!」
「遅い!早くの意味分かってんのか!そんな叩くように混ぜてたら空気入んねーぞ!!」
「は、はいー!うぅーー、渾身の力を込めてうりゃりゃりゃりゃ!!」
「よし、お前がちんたら混ぜてる間に俺が準備しておいたこの粉類とチョコレートを合わせておいたものをメレンゲに加えて切るように混ぜろ。素早くさっくりとだぞ!」
「え?あの、メレンゲって何ですか?」
「お前はバカか!!今まで何作ってたんだ!!」
「ひーーー!ごめんなさいごめんなさいメレンゲに加えて混ぜますー!まぜませまぜませ!!」
「練るな!!さっくりとって言ってんだろ!!お前の耳は飾りもんか!?」
「せ、生徒会時代の零さんが降臨している…うぅ…瀬名先輩より恐い…」
「バターを塗った型に入れて余熱しておいたオーブンへ。あとは焼き上がりを待て!」
「い、いつの間に余熱まで…!?零さ……ってあれ、いない!?」
「うぅ〜ん……ガチャガチャ騒がしいなぁ、安眠妨害なんだけど〜…。あれ、なまえエプロンなんか付けてどうしたの?それに何か良い匂いがする…」
「あ、えっと、じ、実はね…」
「もしかして、俺が寝てる間に一人で作ってくれたの?ふ〜ん…頑張ったんだねぇ、偉い偉い♪」
「あ、あのね、これは一人じゃなくて零さ……わっ!な、何かが顔をかすめた…これはカード?」
『嬢ちゃん、よく頑張ったのう。一人で作ったことにして、我輩の愛しの凛月へ食べさせておくれ。焼いたらハッピーバレンタインのメッセージが浮かび上がるようにこっそりアレンジしておいたぞぃ(^з^)-☆』
「うぅ、師匠天才…!怪盗キッド様かよ…惚れてまうやろ…!!」
「なまえ、焼き上がったみたいだよ〜」
「あ、はいはい!えへへ、頑張って作ったから沢山食べてね。あちち、よいしょっと…。焼き上がりも良い感じ…って、え!?」
「ふ〜ん、なかなか良い匂い…♪じゃあいただきま……ん?」
「こ、これは…!!」
『愛しの凛月、一番大好き!ハッピーバレンタインじゃよ〜♪』
「師匠ー!無意識に語尾までアレンジされちゃてますーー!!」
「あ〜に〜じゃ〜〜〜…殺す……」

「(ふふふ…凛月は食べてくれたかのう…♪我輩の汗と努力が染み込んだケーキを凛月が食べてくれるとはまるで夢のようじゃ…凛月〜♪)」
「朔間さーん、弟くんからバレンタインで釘の刺さった藁人形とにんにくチョコレートの詰め合わせ届いてるよー!臭いから早く食べちゃってよ〜」
「ふわぁぁぁりちゅーーー!!」



END.

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