セインガルド王国の客員剣士として働くリオンは国随一の剣の使い手と言われ、天才の名を欲しいままにしてきた。だが若干16歳にして七将軍に匹敵する剣の腕前を持つ彼を妬まないものはいないし、普段の傲慢な態度を見て苛立ちを感じないものもいないだろう。
だからこそ、そんな彼には数え切れない程の黒い噂が飛び交っている。そのほとんどが嘘で出来上がっているが全部が全部嘘なわけではない。だがたまにとんでもない嘘の噂が紛れていることもある。
それがリオンの見目が美しいことが理由なのかはたまた妬んだものがリオンを今の地位から引き摺り下ろしたいからなのか、ヒューゴと親子関係を超えた仲であるとか七将軍の誰かと寝ているとかそう言う類が多い。その事に関してリオンは否定もしなければ肯定もしない。ただ放っておくだけ。そういうのは相手にしないのが一番だと分かっているからだ。

しかしスタンは違った。スタンはリオンの噂を酷く嫌っていた。根も葉もない噂が自身の耳に入った時なんか苛立ちを露わにして噂の根源を探し出そうとするくらいだ。
そして今日も、スタンの耳にはリオンの噂が入ってくる。
それは二人の男性が、肩を並べて歩くスタンとリオンを見ながら話していたものだった。

"リオン・マグナスは旅の途中で出会った男と寝ている。"

これは紛れもない、自分とリオンのことである。
スタンは怒りよりも先に驚いた。何故ならその噂が嘘ではないから。リオンは自分と夜を共にしているし一緒にベッドで寝たことも何度かある。だがそれも一応周囲の目を気にしてばれない様にこっそりとやっていたことで自分ら以外に知ってるものなどいないはず…。


「噂とはそういうものだ。」


スタン同様に話を聞いていたリオンが、珍しく噂に対して意見を述べる。


「リオンがそう言うこというのって珍しいよな。」

「お前があからさまに奴らを睨んでいるからだ。あぁいうのは相手にしないのが一番なんだ。」

「それでもリオンが言われるのをただ黙ってる聞いてるなんて俺には出来ないよ。」

「僕は別に構わない。」


さらりと答えるリオンに対し、スタンはぶくーと頬を膨らます。どうやら納得がいかないらしい。
そんなスタンを一瞥した後、リオンはため息をついて続けた。


「僕は他の奴らにどう思われようと気にしない。ただ理解してくれる人がちゃんと理解してくれてれば、僕はそれだけで嬉しいんだ。」

「リオン、もしかしてその中に…」

「自惚れるな!貴様なんか入っていない!」


久々にリオンが素直になってくれると思ったがどうやら無理だったらしい。
落ち込むスタンだったがリオンの頬が少しだけ赤いのに気付いて、自然と笑みが零れる。なかなか素直になってくれない恋人だが、こうして表情に出してくれるだけですごく嬉しいと感じれる。結局は自分も、その中に入っているんだなと実感できたスタンは、喜びのあまりリオンに抱きついてしまう。


「な、何をする!!///」

「なんだよー。本当は嬉しいくせにー。」

「う、嬉しくない!僕はお前のそう言うところが嫌いなんだ!!///」


こういうことを公衆の面前でやるから後々噂になるんだよ。ということは敢えて言わないでおいたほうが良いだろう。





無自覚さんの暴走




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抱きつく=こいつら付き合ってんじゃね?=てことはやることもやってんのか=寝ているの噂になる。
という方程式に二人は気づいてないと思う。








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