「ジョニーさんって、リオンと仲良いんですか?」


いそいそと楽器を手入れしていると、隣に座っていたスタンがそんな言葉を口にした。


「突然どうした?」


疑問に思ったジョニーは聞いてみる。
するとスタンは困った顔をしたまま何も答えない。言いづらい内容なのか?


「なんだよ。誰にも言わないから言ってみろって。」

「本当ですか?じゃあ、誰にも言わないでくださいよ。」


若干頬を紅く染めたまま、スタンは言葉の続きを言う。


「さっきリオンが、ジョニーさんのことを褒めていて…。リオンってあんまり人のこと褒めないし、知り合って間もないのにもう好感をもたれてるから、ジョニーさんが羨ましいなぁ…っていうか。いつの間にそんな仲良くなったんだろって…」

「……………」


文章が上手くまとまってないが、ジョニーにはスタンの言いたいことがすぐに理解できた。
本人は気づいちゃいないだろうが、スタンはジョニーに嫉妬しているのだ。シャルティエを通じて出来上がったジョニーとリオンの因果関係に。恐らく今の彼は大好きなリオンがジョニーを好きにならないか不安で仕方がないといったところだろう。
まあリオンがスタン大好きなのは誰が見ても分かるし、ジョニーも男に興味はない。二人がくっつくことなど普通に考えればありえないことなのだが、恋する乙男は周りが見えちゃいない上に冷静じゃないのでそんなことまで考えられない。


「そんな心配しなくても、お前さんが思ってるほど俺とリオンは親密じゃない。」

「……………」

「それにあのお坊ちゃんはお前のことが相当お気に入りだから、そんな不安がることはないさ。」

「…そ、そうですかね?」


ジョニーの言葉にスタンが戸惑う。
どうやら自分のことに関しては一切の無自覚らしい。嫉妬していることもリオンに好かれていることも、もしかしたらリオンに寄せる想いも分かっていないのかもしれない。
そこでジョニーは考える。無自覚な彼に与える言葉を。下手なことを言ってしまえば気持ちを自覚するかもしれない。別にそれは構わないのだがスタンのことだからもろに出てしまう可能性がある。そしてリオンに気付かれて、ぎくしゃくし始めてなんやかんやでくっついて…あぁ先が見える。
普通ならそれで良いのだろうけど、せっかく身近で起こった色恋沙汰なのに何もないのはつまらない。というより、面白くない。
だから自覚させずにもう少し、遊んであげようではないか。


「そういや、さっきリオンがルーティと話してたぜ。結構親密そうだったけど、いいのか?行ってやらなくて?」


とりあえず自分とリオンの関係は否定しておいたので、次は彼の感情を揺るがす言葉を選んでみた。この言葉は半分嘘、半分本当で出来上がっている。リオンとルーティが話していたのは本当だ。ただ、その内容は今夜の食事のことでしかも若干喧嘩気味だったので間違っても親密とは言えない。だが純粋すぎるスタンはその言葉を疑おうとしない。


「え、あ、行くって…?」

「気になるんだろ?なら、あの坊ちゃんのところに行ってやれよ。」


きっと、リオンのところにすっ飛んでいくんだろう。


「………はい!」


元気よく返事をしたスタンが踵を返してリオンの下へ向かう。
彼がリオンの下に行くまであと30秒。二人が口論するまであと45秒。そこで空気を読んだルーティが会話から外れるまであと1分。
仲直りをした二人が楽しく会話を交わすまであと……――





頑張れ、恋する乙男




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ジョニーからスタリオを見た視点。
応援はしてるけど普通にくっつくのは面白くない。みたいな感じだと思う。








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