「なぁなぁリオン。次の街で宿に泊まったら枕投げしようぜ。」
「誰がやるか。なぜ僕がそんな子供じみた遊びをしなきゃならない。」
「いいじゃんかー!枕投げ楽しいぞ!一度は倒してみたい相手を遊びながら倒せる絶好の機会だし!」
「お前が僕をどう思ってるのかよく分かる遊びだな。」
旅の道中、楽しそうに会話を繰り広げるスタンとリオンを見てフィリアは笑みを零す。
自分が出会った頃からは想像も出来ない程心を許しあっている二人を微笑ましく思っているのだ。
カルバレイスでスタンがリオンを庇って以降、リオンはこうしてスタンと会話をするようになった。当時は会話するのにも嫌悪感を抱いていた彼がいつの間にかスタンのことを友、否それ以上の存在に見ているのは誰が見ても明白だ。
自分の前で肩を並べて歩く二人。無意識のうちだろうがリオンは他の仲間といるよりもスタンといることを好んでいる。だから歩く際は必ずスタンの隣にいると言っても過言ではない。スタンはそれを知ってか知らずか(おそらくは後者)前よりもリオンに対する態度がすごくなったというか前以上にスキンシップが激しくなったと思う。
「……………」
それがフィリアには嬉しくあり、同時に複雑な気持ちでもあった。
フィリアはスタンのことが好きだ。
その想いが仲間以上のものであることは理解してるし、彼の素直すぎるほどのまっすぐさと優しさに未だ惹かれ続けているのも事実。
けれどその想いを打ち明けようとは思わない。彼を慕うものは多くいるし、それに…今の彼の気持ちはきっとリオンに向いていると思うから。
「スタンさんもリオンさんも、楽しそうですね。」
二人に向かって話しかけると、同時にこちらに振り向きお互いが真逆の表情でそれに反応してくれた。
スタンは嬉しそうに笑顔を向けているがリオンは訝しげな顔をしている。どうやら自分がスタンに依存していることには気づいてないらしい。
「どこかだ。」
「あら、見ていればわかりますわ。」
「まあ俺とリオンは親友だからな!」
「誰が親友だ!!大体、僕はお前の友になったつもりはない!!!」
「なんだよそれー。俺達分かり合えたんだろー!」
「うるさい!寄るな!!」
肩を組もうとするスタンから逃げるリオン。
また二人のじゃれ合いが始まる。
「おいフィリア!貴様、どこを見てそう言ったかは知らんが、僕はこいつといて楽しいと思ったことはないからな!!!」
フィリアに怒声を浴びせてくるリオンだが、その顔はほんのり赤く染まっていて照れているのは一目瞭然だった。
まあ本人にそんな自覚はないんだろうが。
「何だよリオンー。冷たいなぁ。」
「黙れ!!さっさと僕から離れろ!!!!」
リオンに向かって手を伸ばすスタンと、その手を振り払うリオン。
お互いが無自覚すぎるそのじゃれ合いを、フィリアはまた微笑ましそうに見つめていた。
微笑ましい君たちの青春劇
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スタリオをフィリアから見た視点。
なんか、二人が一緒にいるのは嬉しいけどちょっと嫌だな…みたいな。
なかなか複雑な気持ち。