「…ここ、で、いいんだよね、?」



校門前の文字も何度も見返す
青学よりも大きく、
ちらほら見える生徒も自分とは違うオーラがした。
なんとなく自分が場違いな気がして
深いため息をこぼした。








(なんで俺、ここにいるんだっけ)
(…あーあ、早く来ないかなあ、)















鮮やかに咲く











「ねえ、正門に他校の可愛いイケメンがいるみたいよ!」

「1年生かな?綺麗な子って聞いたよ!」


放課後の学園内。
ざわめく生徒たちの会話が聞こえてくる。
アーン?どこの生徒だ
生徒会の書類たちに目を通しながら
ちらりと目を正門の方は向ければ
そこには青学の文字が書かれたテニスバッグを
背負った少年がそこにいた。



「あれは……樺地、忍足を呼べ」






















(……おっそい。なんでこないの。)
(もしかして、もう帰ってるとか?)



だんだん待つのが嫌になって
もう一度ため息をこぼす。
さっきから遠目で色々言われてるのも
気のせいではないだろうし、なんでこんな目にあうの。



…ただ、合宿のとき部長の頼みとはいえ
悪役になってくれた跡部さんにやっぱりお礼は
言わなきゃだめかなって思ったから
遠路はるばるここで待ち伏せしてるだけなのに。



(そりゃ。勝手に待ってるだけだけどさ。)











「お、ほんまにおった」

「、あ」

「忍足や。…跡部に言われてな、今日はどしたん?」

「……合宿ん時の、…先輩から聞いて。」

「じゃあ用は跡部でええんやな?」



ついてきいや、そう言って歩き始める忍足さん。
この人が来たことで周りの声は一層うるさくなったけど
もう待たなくてもいいと思えば我慢できた。











「跡部、連れてきたで」

「入れ」






重そうな扉が開くとそこは
俺が知ってる生徒会室とは全く違う部屋が広がっていた。
本当にここは学校?
しばらく目をぱちぱちさせて部屋を見渡していると
跡部さんが座っていた椅子からソファに移動して
座るように促してくる。

ちら、と忍足さんを見上げれば
彼も促してくるから、疲れたし、まあいいか。
と納得することにして腰を下ろした。






「今日はどうしたんだ?」

「…先輩から、合宿ん時のこと、聞いて、」






樺地さんがお茶を入れてくれる。
忍足さんはそれをみて、そっと部屋から出て行った。
跡部さんは樺地さんに何やら合図をして、
彼も部屋から出て行った。

豪華な部屋には2人きり。
ありがとうございました。そう言えばいいだけなのに
慣れない環境と慣れない人のせいで
なにを言えばいいかわからなくなって
注がれたお茶に口をつけた。







「部長に頼まれたんだってね。」

「まあな」

「えっと、色々ありがと、」





慣れない言葉になんだか恥ずかしくなって
なんとなく顔が熱い気がした。
いつもの調子が狂う感じが気持ち悪くて、
下を向いて見つからないように隠した。




「別に、俺は頼まれたからやったんじゃねえよ」

「じゃあなんで、」

「お前に興味があったからだ」

「興味?」






そういうと跡部さんは立ち上がり俺の隣まで来た。
そのまま顎の下に手を入れて上を向かせられる。
驚きのが大きくて少し固まってると
跡部さんは悪そうな笑みを浮かべて




決勝、負けんじゃねえぞ
越前、お前に勝つのは、俺だ。




脳に、直接吹き込まれたみたいだった。
耳元で囁かれたそれは身体中を巡って
痺れを伴って染み渡った。




「っ、当たり前じゃん。てか跡部さんにも負けないし。」


「ほう?次は容赦しねえぞ」





余裕そうな跡部さんに少しイラつきつつ
なんだかんだ応援してくれてるんだろうな
と思うとやっぱりなんか複雑だったけど、悪い気もしなくて。
もう一度、きちんと感謝を伝えようと彼を呼んだ。




「ねえ、」

「あん?」

「ありがとう」





そんなつもりはなかったんだけど
笑みが自然と浮かんでいた。
跡部さんの目を見てしっかりと伝えて
テニスがしたくなったので帰ります。
そう、続けようとした、その時





「…今のはお前が悪い」

「な、にす、」

「さあな」





一瞬で目の前が暗くなって
くちに、なんか触れたと思った時には
理解が追いつくはずもなく。

送って行かせる。
言葉が出てこない俺をリムジンへと案内され乗せられた。




え、待って。
俺初めてだったんだけど?
あれ?日本って挨拶でキスするっけ?
日本人のキスって。







「ねぇ、」

「……、」

「俺のこと、好きなの?」





後ろの端の席に座って外を見てる跡部さんの顔を覗き込んで
聞いてみればどうだろうな、と曖昧な答えが返ってくるだけ

もう一度、ねえ、と声をかけて
あれ、初めてだったんだけど。
と伝えると、悪かったな。と謝罪が落ちてきた。






「よくわかんないんだけどさ、
日本人って好きな人にキスしたくなるんでしょ?
挨拶じゃ、ないんだよね?
だったら、さっきのあれはさ。
俺のこと、」

「それ以上言うな。」

「えー。」



跡部さんはたまに鬱陶しいけど
好きか嫌いかでいえばかそれは好きな部類だと思う。
驚くべきところはべつにそこまで嫌じゃなかったという事実。

そこまで男女について考えたことも興味もなかったけど
知識がほとんどないわけではない。
なにをするか、くらいはわかる。

彼が俺のことを好きなのだとしたら。
わからないけど多分、
想像もつかない未来が待ってるんだと思う。





「俺さ。あんまり悪い気してないんだけど、どうしよ?」


覗き込んだまま、そう伝えると
頬杖をついていた手を解いてそっと抱き寄せられた。
大人しくそのままでいると
あの、跡部さんの余裕そうな顔が少し歪んでて。

お前、門限は?
特に。連絡したら大丈夫

そう、伝えると
跡部さんは運転手に自宅へ帰るよう言った。






















「越前、」




ちくり、と針で刺したような痛みが
首の後ろあたりでした。
それがなんなのかはよく分からなかったけど
真剣な顔で繋がれる言葉に
嬉しいような恥ずかしいような気持ちになって
目を閉じた。
















end
(好きだ)
(多分、俺も。)
(多分かよ)
(うん、だから。幸せにして?)
(……任せろ)



人生2度目のキスは
オレンジ色の甘酸っぱい香りがした。





ちょっと違う感じの2人で書いてみました。



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