確証はない。でも私が
この星空の下を走っているのは

“信じてる、”といつも通りに、だけど少しだけ切なさの見え隠れする笑顔で告げられた、3年前の小さな口約束。



あの日と同じこの星空の下
お前はこの星たちを
まだ見上げてくれてるのかな…、








starry sky









高3の夏、
最後の夏休みにも関わらず、相も変わらず補習漬けだった
3Zの面々。

そんなある日、銀八の『青春したい。』の一言で、
急遽、夜屋上で天体観測をすることになった。

姉御や九ちゃん達と見ていたら、
ふいに目があった沖田に手招きされて、
何故かみんなと少し離れたところで話をすることになった。

夏休みどっかいった?とか普通の会話から、星の話まで。

驚いたのは沖田があまりにも星に詳しかった事。そのまま言ったら『俺の姉ちゃんが好きなんでさ』と言われた。







ふいに会話が途切れた時、
沖田は、どこか言い出しにくそうに
卒業したらどこいくんでぃ?と聞いてきた。
私はまだ分からない、と答えると
沖田は、少しほっとしたように、そっか。と言っただけだった









「なあ、チャイナ」

「なにヨ」

「3年後の今日、覚えてた方が先に
ここに来た方が勝ちってのはどうでぃ?」

「え?」





私は理解出来なくて、聞き返すと
3年後、先にここに来た方が勝ち、負けた方は呑み代奢り!
そうやってもう一度、挑戦的な笑みと共に言われて
元から負けず嫌いな私は2つ返事で了承した







「忘れんなよ?」

「私、記憶力はいい方ネ」

「へぇ、…信じてるから。」

「え?」

「…なんでもねぇよ」








それからしばらくして観測会はお開きになったけど、

信じてる、
そう言った沖田がひどく寂しそうに見えて、そのまましばらく沖田から目が離せなかった。






…そして、月日が流れて、今日があの日から3年後の勝負の日。
ふいに思い出してまどろみのなかから飛び起きて

時計を見れば23:45
もうすぐ日付が変わりそうだった。

私は慌てて携帯だけ持って、満天の星空の下走り出した。




ちらちらと脳裏を掠めるのはあの時の寂しそうな笑顔。
思い返して苦しくなって、
私はただただ全速力で母校へ走った。







着いた学校は前と変わらず、そのままだった。いつも遅刻の時使ってたフェンスを乗り越え、鍵が壊れっぱなしの窓から忍び込み、屋上まで駆け上がって、ドアを開けると





一人、ぽつん。
星を見上げる沖田がそこにいた。
昔より綺麗に整えた髪、普段はもっと着こなしてるだろう
グレーのスーツ。
思わず声を掛けるのを躊躇うぐらい、綺麗でいて、
そしてとても悲しそうだった。







「…俺の、勝ち。」



あの日と同じ寂しそうな笑顔で振り向いた沖田に、
私はゆっくり近づいていった。




「いつから待ってたアルか」

「さっき」

「嘘。だって夏とはいえ夜は寒いネ、
沖田、ほっぺた冷たいアル。」



手を伸ばして沖田のほっぺに触ると、思いの外冷たくて、
ごめん。一言告げて俯いた。



「…神楽。」

「え…?」



名前を呼ばれて思わず顔をあげると、
次の瞬間、私は沖田に抱き締められていた。







「信じてた…、」



その言葉で肩辺りにあった顔を上に向かせれば、あの日と同じ言葉を少し、少しだけ嬉しそうに呟いた沖田がいた。




「…ごめん、」





沖田は信じて待ってくれてたのに、
私はギリギリまで忘れていて。
罪悪感が身体中を支配していた。
もう一度謝ろうとした時、

「じゃ、俺が勝ったんで言うこと聞いてくだせェ」

と沖田は言った。
私はそれに対応出来なくて、ぽかん、と沖田を見上げると、
凄く真剣な顔で私を見据えていた。





「…俺の、俺の隣にずっといてくだせぇ」

「…え?」

「そしたら、待たなくたって隣にいてくれるだろィ?」






先程までの抱きしめる力が強くなったのが、
このポカーンとしてしまった頭でもわかった。
暗くてよくわかんなかったけど、きっと私も沖田も
顔が赤かったと思う。
(…だって、暑くて仕方がない!)






「しょうがないアルな、ずーっと、隣にいてやるネ」






それを感づかれないように強気な言葉と、
頬にキスを一つしてやれば
沖田は少し驚いて、
その後直ぐにいつものニヤニヤした顔に戻った。




「こう言う時はここにするもんですぜィ?」









ゆっくりと近づいてくる沖田に
逃げられるはずなんてなくて、目を閉じれば
重なった影と影、それは確かに一瞬だったけど、
その一瞬に好きと言われた気がした。













その一瞬も3年前も2人の物語を見ていたのは
夏の夜空に輝く星達だけ。













end
(…いきなり何す、)
(待たされた仕返しでさ)
(う…、)
(あー、信じてよかった)
(…ばか。)














「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -