このままアカギさんと私が、一つに混ざり合ってしまえるのならそれはどれだけ幸せな事だろう。
「っぁ、アカギさ…もう…っ!」
「っ、」
「やっ、あぁっ…!」
アカギさんが小さく呻いた後、膣内にじわりと温もりが広がった。
でも、狭苦しい四畳半の部屋に敷かれた布団で度々行われるこの行為には、ちっとも温もりを感じない。
それは何度身体を重ねようと、どんなに私が欲しようと得られない物で。
「もう、行くの…?」
「あぁ」
「次は何時、会える?」
「さぁ、ね」
未だに裸で寝転がる私を他所に、アカギさんは早々と後始末を終えて着替えを済ませていた。
この後彼が何処に行くかなんて知らない。知る権利さえ無い。
だって、私はアカギさんにとってただの道具。好きな時に、好きなだけ抱かれる、都合の良い存在だから私からは決して求めてはいけない。でも、それでも。
「アカギさん」
「何?」
「…好き」
「…ククッ…冗談」
バタン、と玄関のドアが閉まる。
アカギさんは私を好きだと言った事はおろか、私の名前さえも呼んだ事が無い。まぁ、彼の事だから名前なんて最初から知らないのかも知れないが。
「冗談、か…」
ふと、部屋の隅に追いやられた避妊具の箱が目に入った。
万が一の事が起こらないように毎回必ず使用するそれ。
…穴でも空けてしまおうか。
思わずそんな考えが頭を過る。
そうすれば、万が一の事が起きてしまえば、アカギさんはずっと私の側にいてくれるだろうか。
それとも、面倒臭い女だと、お金だけを置いて二度と姿を現さなくなるだろうか。
…答えなんて、自問しなくても分かりきっている。
アカギさんはそういう人だから。
でも、いつかは私を好きだと、愛してると言ってくれるんじゃないかと淡い幻想を抱いて、不毛な関係を続けてしまうのは所詮、
無い物ねだり
彼がいなくなった布団はやけに、冷たい気がした。