目が点になる、というのは正にこの事か。
カイジは未だ目の前の光景を信じきれないままでいた。
猫耳が生えている、彼女の姿を。
「…本物なのか、これ」
いつもは別々の布団で寝ているのに何故か今日は目が覚めると名前がカイジの布団に入り込んでいて、いきなりどうしたんだ可愛い奴だなと思ったのまでは良かった。
しかしカイジの隣ですやすやと眠る名前には、白い猫耳とフワフワとした尻尾が生えていた…。これが今起こっている事の全てである。
それにしても一体何のドッキリなのだろうか。
もしかしたらカチューシャか何かなのかも知れない、とそっと耳を引っ張ってみるが取れる事は無く。
髪を掻き分けるとしっかり名前自身から生えている物だと知りカイジは頭を抱えた。
「嘘だろ…漫画じゃあるまいし何でこんな…」
「ん……」
耳を引っ張ったせいか、名前は身じろぎをしてうっすらと目を開けた。ぼんやりと交差する視線。そして、
「にゃ…カイジ?おはよー…」
「!!!」
今、何て。
「名前、お前、」
「なにー…ふにゃあぁ…」
「っ…!」
可愛い。悪魔的に可愛い。
まさか欠伸やちょっとした反応までもが猫っぽく(?)なるとは予想だにしていなかったカイジ。
異常事態にもかかわらず、このまま名前をどうにかしてしまいたい衝動に駆られてしまう。
猫にそうしてやる様に名前の顎から頬にかけてを優しく撫で上げてやると、名前は気持ち良さそうに眼を細めた。
「ん…それ気持ち良い…もっとして…?」
「っ…、あ、あぁ」
「ふふ…カイジ、好きー」
「……名前っ、」
「?…にゃあっ!」
多分今のは「きゃあっ」と言っていたのだろうが、そんなのはどうでも良い。
とにかく今は名前を目茶苦茶にしてやりたい。その一心でカイジは名前を布団に組み敷いた。
「にゃ…カイ、ジ…?」
「…いつもそうやって素直だったら良いのにな」
「なに、っ…ぁ、」
「…、ゴム買い足しとくんだった…」
「―…ジ、カイジっ…」
「ん?」
「っ…………優しく、してね?」
「…………………いただきます」
かくして、窮地に立たされた時にのみ発動されるカイジのスキルが目覚めたのであった。
覚醒の刻
―そしてカイジが次に目が覚めた時、無事姿が元通りになった名前の平手打ちをくらったのは言うまでもない。