「よぉ銀二」

「…またお前か」


読んでいた経済新聞から目を離すと、そこには怪しげな笑みを浮かべた赤木が立っていて銀二は無意識の内に溜息をついていた。
こうやって連絡も無しに赤木が訪ねて来るのは大抵ろくでもない事を考えている時だ。
今回もまたそうに違いない、と銀二はそれ以上話す事無く新聞に目を戻した。
まぁ尤も、赤木の行動の対象は決まって銀二と行動を共にする唯一の女性なのだが。

数ヶ月前、銀二が彼女を紹介した時からそれは始まった。
最初はご挨拶と言わんばかりに悪戯の定番、ブーブークッションを椅子に仕込み彼女を盛大に驚かせ、それからというもの事あるごとに彼女をからかって…否、可愛がっていた。
本人曰く「顔を真っ赤にして怒る姿が可愛いからやめられない」そうで、確かに毎回半泣きになって銀二に泣き付く姿は誰もが可愛いと思ってしまい、誰も赤木を止める事はしなかった。


「今日は名前は?」

「森田と出てる。あと30分もしたら戻るはずだが。…で、一体何をするつもりなんだ」

「フフ…最近凄い事に気付いちまってな」

「凄い事?」

「あぁ。…おい、いつまでもそんな所で突っ立ってねぇで入って来いよ」


赤木が玄関に向かって誰かを呼ぶと、銀二の良く知る、でも何かが微妙に違う人物がオドオドしながら入って来た。


「森田…じゃねぇな。カイジ、お前何て格好してるんだ」

「オレが知りたい…」

「な?良く似てるだろ?」


見るとそこには、緑のストライプスーツを身に纏い髪を後ろに括った、ぱっと見では森田本人に見間違えてしまう程の偽森田、即ちカイジがいた。
瞬時に赤木のやりたい事を理解した銀二は再度深く溜息をつく。


「生き別れの双子の兄弟、ってところか」

「設定は何でも良いさ。何も言わなくてもひっくり返るだろうよ、あいつは。森田と一緒となると、こりゃWドッキリだな」

「あ、あの、オレはどうしたら」

「お前はただそこに立ってたら良いんだよ」


クツクツとさぞ愉しそうに笑う赤木を横目に、銀二は毎回お決まりの傍観側に回る事を決め込んで名前の帰りを待つ事十数分。


「銀さん、戻りましたー」

「あぁ、お帰り」

「聞いて下さいよ銀さん、森田君ったらさっき―…」

「……」

「……」

「…どうしたんですか、名前さ…」

「っ、来ないで森田君!」

「え、え、ちょっ、」


一瞬の出来事だった。
ドアを開けた名前は銀二と偽森田を交互に見るなり、血相を変えて後から入って来ようとした森田を追い返した。
ドアの向こうから「森田君!お願いだから1時間位どっかで時間潰してて!」などと聞こえた後、再び名前だけが部屋に入って来た。
因みに未だ赤木の存在には気付いていない。
そして何時にも増して真剣な顔をした名前が偽森田と向き合い。


「…ドッペルゲンガーさんが、何の用ですか」

「……」

「…は、」

「森田君の本体を乗っ取りに来たんでしょう…!?私、知ってるんだから!ドッペルゲンガーに会った人間はドッペルゲンガーに乗っ取られて死んじゃうんだって!」

「ぶふっ」


名前が出した結論。
それは偽森田が森田のドッペルゲンガーだという事だった。
名前は普段は頭の切れる銀二達の頼もしい仲間であったが、所々変な知識を持っていて周囲を驚かせる事もあり、今回は正にそれであった。
因みに吹き出したのは赤木だがそれでも名前はまだ赤木に気付いていない。


「ここには森田君はいません…だからお引き取り下さい…!そしてもう二度とここには来ないで…!」

「……っ、」

「…やれやれ」


早くも涙目になりながら訴えかける名前と、目を泳がせて助けを求めようとするカイジ。
赤木はここからが面白くなるぞと言わんばかりに目を爛々としながら見ていたが、流石に二人が可哀相に思えて来た銀二は率先してネタばらしをする事にした。


「名前、お前、そいつの顔をもっとよく見てみろ」

「え?…森田…君のドッペルゲンガー…ですけど…?」

「もっと、顔の下半分辺りをだ」

「下半分………顎、が……………――っ、赤木さん!!!!!」

「ククッ、もう少し遊べると思ったんだがなぁ。じゃあそろそろ俺は帰」

「帰しません!ちょっとそこに座って下さい!!」


多くを語らずともすぐに状況を把握した名前は首謀者である赤木を捕まえてくどくどと説教を始めた。

そして森田が帰って来る頃にはいつもの構図が出来上がっていて。





騙し愛




「もう、赤木さんも銀さんも森田君も嫌い!!!」
「なんでオレまで!?」
「赤木…お前のせいで俺まで嫌われたじゃねぇか…」
「銀二待て!懐に手を忍ばせるな!」
「オレもう着替えても良いっすかね」
「適当に帰っとけ!」














まず始めに。
草門様大変お待たせ致しましたぁぁっーー!!!!!orz(エクストリーム土下座)
その上何だかリクエスト内容から反れてしまった感が…重ね重ねすみません紐無しバンジーして来ます三┌( ^o^)┘
色んな人を出すのは凄く楽しかったのですが誰が誰だか分かんないよっていうのがありましたら教えて下さいね…!
返品、書き直しも受け付けますので!

では、リクエストありがとうございました(´`)!








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