女って生き物は本当に訳がわからなくて困る。
散々ボヤいていたので、予定を詰めに詰めて行きたい場所に連れて行けば、ふとした拍子に不機嫌になったり。
『なぁ、名前、なにが不満なんだよ?』
海に行きたいだの星が見たいだの、はたまたどこそこのケーキが食べたいだのと喚くから全部叶えてやればこれだ。
『…帰るぞ』
ホテルのプライベートビーチから一向に動こうとしない名前にそろそろ疲れてくる。
『あのな、何も言わなきゃ流石の俺だって』
「銀さんが悪いんだもん」
『あ?』
パンパンと裾の砂をほろいながらこちらへと歩み寄ってくる。
日頃我が儘なんか一つも言わない上に、今日だってほぼ初めてに等しい頼み事を叶えてやっているのに本当に訳が分からない。
「疲れてるでしょ?無理に付き合ってくれなくても良かったのに。」
『…どういうことだ?』
「銀さんと一緒ならどこでも良かったの。でも、銀さんはどこ行きたい?何食べたい?って聞くし。私は銀さんと一緒なら何を見ても楽しいし、何を食べても美味しいもん」
パタパタと駆け寄り抱きついてくる名前に凄く困惑した。
「しかも終始眉間にシワ寄ってるし、なんか凄い怖い顔してたし、銀さん疲れてると眉間にシワ寄るの気付いてなかったの?」
『…あぁ』
「もう!森田くんも気付いてたよ!だから…」
キッと上を向いた名前の頬をガッチリホールドし、凄く自分本位なキスをした。
「むぅっ」
バタバタともがく名前を捕まえて深く深くキスを落とす。
「っぷ、銀さん!」
『要するに、心配してくれてたんだよな?』
ニヤリと見下ろしながら次の行動を考える。モゴモゴなにかを言っていたがもう聞く耳は捨ててもいいみたいだった。
(ちょっと銀さんここは流石に…)
(要するに俺の好きにしても良かったんだよな?)
(や、まぁ、間違っちゃないけど…ぁっ)
(あんまり大人をからかうなよ)
君のためが、たまに裏目