「ねぇ、カイジ」
「んー?」
「私の事好き?」
「ん?んー…」
日常的に繰り返される、この会話。
いつものように名前が一方的にする質問にカイジはいつものようにおざなりに答える。
大抵カイジがテレビを観たり何かしている時にその質問はされるのである意味致し方ない事なのかも知れないが。因みに今は週刊誌を読んでいる最中の事だった。
「むむむ…」
「そろそろこれも終わりそうだなー…あ、名前喉渇いた」
「…はぁい」
名前はよく冷えた麦茶を二人お揃いのグラスに注ぎ、それをテーブルにダンッと勢いよく置き、そしてカイジが読んでいた週刊誌を取り上げた。
「ちょっ…何するんだよ」
「カイジ」
「何?」
「リス」
「は?」
「だから、リス」
「何だよもう、意味分かんねぇって」
「今からこの麦茶を賭けてしりとりをして貰います。はい、リス」
「はぁ?…スイカ」
「カラス」
「スズメ」
「メス」
「寿司」
「しらす」
「す…ってあの、オレ"す"ばっかなんだけど」
「たまたまじゃない?ほら、しらす」
「…すみれ」
「レタス」
「ほらやっぱり…お酢の酢」
「巣」
「え?」
「鳥の巣の巣」
「す…すき…」
「!」
「すき焼き」
「……はぁ」
「な…何だよ」
「べっつにー。キリギリス」
「数字」
「ジュース」
「……」
「……」
突発的に名前によって始められたしりとりもそろそろ終わりに近付き…否、互いにネタが尽き、例の言葉が出て来るかと思えた時。
「…なぁ、」
「んー?もうギブアップ?」
「そこまでしてオレに言わせたい訳?」
「あ、バレてた?」
「そりゃこんだけす攻めされたらな…」
「なら早く言えば良いのに」
「お前はそれで良いの?」
「何が?」
「何がって…こんな心が込もって無い言い方で」
「だってこうでもしないとどっかの誰かさんは言ってくれないんだもん」
「はぁ…分かった分かった。後でな」
「後っていつよー」
「後は後。あ、麦茶ありがとな」
「えっ…う、うん。アイスもあるけど食べる?」
「ん、」
「じゃあ持って来る。バニラで良いよね?」
麦茶を賭けた時の気合いはどこへやら。
カイジが礼を言った時に見せた優しい眼差しに思わずドキリとして、その「後で」とやらを楽しみにしておこうと、名前はアイスをかじりながら先程カイジが読んでいた週刊誌のページをめくった。
好きと言って
「名前、好き」
「うん」
「すっげぇ好き」
「う、うん」
「愛して「ごめんやっぱりもう良いわありがとう!」
「お前が言って欲しいって言ったんだろうがっ…!」
「うう…言われ慣れないとやっぱり恥ずかしくて…」