「せかいはーふたりのためにーまわりつーづけてーいるよー」
「…?」
夕食の準備をしている名前がいる台所から歌声が聞こえた。
恐らく機嫌が良いのだろう、リズムに合わせた様で合っていない包丁の音もする。
「ふふふふーんふふふふふふふーん…」
「どうしたの急に」
「昨日買い物した時に行ったお店でね、有線か何かで流れててさ。何て言う曲かも誰が歌ってるのかも知らないけど良い曲だなぁって」
「…へぇ」
だから全く歌詞が歌えて無いのか、と一人納得するアカギ。
会話が終わると名前はまた同じフレーズを口にしていた。
「…ごちそうさま」
「お粗末さまでした」
夕食を終えて食器を片付けようと立ち上がった名前を、アカギはふと何かを思い出したかの様に呼び止めた。
「あ。名前、」
「ん、何?」
「一つ教えてあげるよ」
「何を?」
「あんたの名前」
「私の名前…がどうしたの?」
「さっきの曲の事」
「え、え?よく意味が…」
「クク…分からなくていいさ」
「えぇー…?」
頭の上に疑問符をたくさん浮かべる名前を見るアカギの目はとても優しかった。
美しい名前
「ねぇ、まさか「名前」っていう曲だったりする?」
「不正解」
「ですよねー…」