まだ少し肌寒さが残る4月。
桜の季節。
勿論この月の一番のイベントと言えば、お花見。
「わ、思ったよりも人いるね。場所空いてるかなぁ…」
決して有名な観光スポットでは無いけれど、私達は近くの公園にお花見に来た。
いつもより少し早く起きてお弁当なんか作ってみたりして、おまけに公園に行く途中にあるコンビニでお酒を買ったりなんかしてすっかり浮かれ気分。…少なくとも私は。
「ね、ここにしようよ」
「あー…良いよどこでも」
「だからここにするんだって。早くシート敷いて!」
一緒に来た…もとい私に無理矢理連れて来られたカイジは少し不機嫌だ。
昼前に叩き起こしたからかな。それでも遅く起こしたつもりだったんだけれど。
「もー、いつまで眠たそうな顔してるのよ」
「だってまだ起きてから1時間も経ってな…ふぁぁ」
「……」
なんだかなぁ。
思わず溜め息が漏れた。
ふと周りを見ると、家族連れや会社の新年会であろう団体、仲良く寄り添って桜を見る恋人達など、グループは様々だがだれもかれも花見を存分に楽しんでいるようで。
…こんな事なら友達誘って行けば良かった。
そんな事を思っても、目の前には早くも横になり寝入りそうなカイジと、気合いを入れて作ったお弁当と多めに買い込んだお酒が虚しく転がっているのには変わりは無く。
「もう、いいもん…!」
こうなりゃヤケだ、と言わんばかりに私は酒を煽り始めた。
「…んー……げっ。」
目を覚ましたカイジは、またやってしまったと一人後悔した。
寝起きの悪さは自分でも重々分かってはいるが、どうにもその時話し掛けられたりしたら反応がおざなりになってしまう。
名前、怒ってるだろうなー…、と起き上がるやいなや目の前に広がった光景に一気に目を覚ました。
あちこちに転がる、色んな種類の空き缶。
そして少し目線を上げると、虚ろな目をして顔を真っ赤にさせた名前が唐揚げを頬張っていた。
「…名前…?」
「…なによ」
「お前、何ビールなんか飲んで…っ、酒臭っ!」
「わらしはろんじゃらめってゆーのー!?(私は飲んじゃダメっていうのー!?)」
「いや、そういう訳じゃ…!ていうか一先ず落ち着けって…!」
「うるはいなぁ、ろーせかいじはわらしといてもたのしくらいんれしょー(うるさいなぁ、どうせカイジは私といても楽しくないんでしょー)」
「もう何言ってるか分かんねぇよ!」
「うっさい、ばかかいじ…うっ」
「っ…!ごめん、オレが悪かったから、泣くなよ…な?」
「……………………
…きもち、わるい」
「!?」
「…すみません」
「いや…少しはマシになったか?」
「うん、ありがと…ごめんね?」
「良いよ…っていうか、オレこそごめん」
「?」
「名前の事ほったらかして…せっかく二人で来たのに…だからあんなやけ酒「あ、もうその話は良いですごめんなさい忘れて下さい」
「まぁとにかくあれだ…仕切り直そうぜ、花見」
「っ、うん!」
「でももう酒は禁「わーわーわー!!」
気付けば二人も周りで花見を楽しむ人達と何ら変わり無く。
そんな麗らかな春のある1日。
花より団子?
「名前ー」
「きゃっ…!ちょ、どこ触っ…!」
「名前、好きー」
「え、あ、うん(しまった、酒癖の悪さはこっちの方が上だった…!)」